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「美人だね」褒めているのに何が悪い? セクハラの穴に落ちる男たち

褒めているつもりが逆効果というセクハラ

 そこには性というものが持っている圧倒的なジェンダー非対称性があります。働く場である職場でわざわざ「美人」だと言われるとき、それは普通に仕事をしている当たり前の人間、社会人、社員、労働者としてではなく、「女」という扱いをされているということ。ミスコンに出ているわけでもないのに、男性中心目線でまず容姿から評価されてしまう……。男性社員に対し「せっかくのイケメンが台無しだ」と、会議中にちゃちゃを入れて発言を遮るようなことをするでしょうか。そう考えてみるだけで男女が対等に扱われていないということがよくわかります。

 多くの働く女性は容姿や女らしさではなく、仕事内容や能力で評価されたいと思っています。評価されるのが容姿「だけ」というのは不本意であり、「美人」だと評価されることは職業人として軽視されていると感じているのです。
 男性社員に対しては仕事の能力できっちりと評価する一方で、女性社員には顔を合わせれば「○○ちゃん、今日の髪型イケてるね」「美人は何やっても映えるね」と、容姿のことばかり口にする課長や部長たち。この人はいつも私の何を見ているの? 社員のどこを見て評価しているのだろう? と、イライラするのは至極当たり前の感情だと思います。
「職業人」にとって、「美人」は決して褒め言葉にならないです。

 褒めているつもりが逆効果というセクハラは「女性は女らしく家庭的であるべき」という固定的な性別分業観を持っている人がハマりがちなコンサバな穴です。
 とはいえ女らしさを期待されたり、強要されたりするのは不快であり性差別、セクハラだと考える女性がいる一方、「誰からであれ可愛いと褒められればモチベーションが上がる」と思っている女性もいるでしょう。「女性は女性らしく、男性は男性らしくあるべき」と考えている保守的な女性たちは、女性として扱われないことを失礼だと思うかもしれません。「褒めてもダメ、褒めなくても失礼ってどうすりゃいいの」と男性が困惑するのも無理はありません。

 しかし、女性を十把ひとからげに括ることなく、ひとりの「職業人」として、またひとりの「人」として、敬意を持って対応することで個人の志向も見えてくるというもの。少なくとも職場や教育の場では固定的な女性らしさを強要したり期待したりすることは問題になる可能性があることを知っておくべきでしょう。

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牟田和恵

むた・かずえ●1956年福岡県生まれ。87年京都大学大学院博士課程退学。佐賀大学教養部講師、助教授を経て、91年甲南女子大学文学部助教授。その後、ハーバード大学、コロンビア大学他で研究員、招聘教授を務める。04年より大阪大学大学院人間科学研究科助教授。
著書に『ジェンダー家族を超えて―近現代の生/性の政治とフェミニズム』(新曜社)、『部長、その恋愛はセクハラです!』(集英社新書)、編著に『架橋するフェミニズム―歴史・性・暴力』(無料電子書籍)などがある。

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