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「美人だね」褒めているのに何が悪い? セクハラの穴に落ちる男たち

4月は新しい環境で仕事を始める人も多い時期。
コミュニケーションを図ろうと良かれと思って取った行動が「セクハラ」と捉えられてしまうと、相手も自分も傷つくことになります。
性別関係なく、職場のセクハラは案外身近な問題。
「自分はそんなことしない」、「私には関係ない」と思わずに、正しいセクハラの知識を身につけることが、自分を守ることにつながるのです。

ジェンダー論を専門とする社会学者で、ロングセラー『部長、その恋愛はセクハラです!』(集英社新書)などで知られる牟田和恵さんが、セクハラの明確な線引きを指南します。
今回は「褒め言葉」がセクハラとなるケースについてです。

※牟田和恵さんの著書『ここからセクハラ! アウトがわからない男、もう我慢しない女』から一部抜粋、修正してお届けします。

「セクハラされるのは魅力的だから」という思い上がり

「セクハラされているうちが花」「痴漢の一人にも遭わない女は魅力がない」「セクハラはいい女の証拠」一度や二度は耳にしたことのあるセリフです。かび臭いセクハラ専用の慣用句と言いましょうか、それとも男性だけに伝わる謎の呪文なのでしょうか。

 多くの人が職場で起きたセクハラに違和を感じ「おかしい」と言えるようになったことに大きな進歩を感じる一方で、いまだにこんなことを本気で思い、褒め言葉といわんばかりに口にする男性が職場に一人や二人はいるものです。口にせずともそう思っている男性も多いのかもしれません。
 そこには、男たちからのセクシャルな目線は賞賛であって、男の性の対象にされる女は名誉に違いないというはなはだしい勘違いと思い上がりがあります。女性は男性から性的な存在として見られたい、性的に評価されることは嬉しかろうという大雑把な観念と完全な誤解があり、この誤解が解けなければ、今後もセクハラがなくなることはないでしょう。

 確かに女性は男性の性的評価を心地よく感じることもありますが、それは相手と状況によります。女性がいつも性的に見られたがっているというのは偏見というよりもはや無知。特に中高年層には、女とはこういうもの……という固定観念に縛られている男性も多く、女性に対して抱く意識は保守的で、現代社会の女性の意識に気づきません。

「上司から〝明日は大事な取引先との打ち合わせがあるから、ミニスカート穿いてこいよ〟と、ちょくちょく言われる。一度〝キャバ嬢じゃないんですけど〟と、ひきつった笑顔で返してみたら、〝お前の役目はキャバ嬢みたいなもんよ〟とバッサリ言われたことがある。キャバ嬢にも私にも失礼」(建設会社・三十代)

 上司は意識していないのかもしれませんが、そこにあるのは「人」ではなく「女」というモノであり、商品を見る目です。好きでもない男性(たいていおっさん)に「いいお尻をしてる」と、性的な視線を投げかけられて嬉しいはずがありません
 実は痴漢行為も往々にしてそうなのです。女性は触られて嫌だと思いつつも、大騒ぎにしたくなくて「次の駅で降りるまでの我慢だ」と耐えているのに、痴漢は「ああ嫌がっていない。結構いい気持ちになっているのかも」と、空恐ろしいぐらいに都合よく勘違いをする。
 なかには女性が嫌がっていることを知りながら、あえてセクハラに及ぶたちの悪い確信犯もいて腹立たしい限りですが、多くのハラッサーは「悪気はなく」あるいは無礼と知りつつ「これくらいは許してもらえるだろう」という甘えでセクハラを行っているのです。
 女性を年齢や容姿で価値付けることはマナー違反というより人権問題。公的な場、特にビジネスの場においては許されないことです。こうしたことも近年はセクハラとして社会的にも厳しい目が向けられていることに、もっと危機感を持つべきでしょう。

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牟田和恵

むた・かずえ●1956年福岡県生まれ。87年京都大学大学院博士課程退学。佐賀大学教養部講師、助教授を経て、91年甲南女子大学文学部助教授。その後、ハーバード大学、コロンビア大学他で研究員、招聘教授を務める。04年より大阪大学大学院人間科学研究科助教授。
著書に『ジェンダー家族を超えて―近現代の生/性の政治とフェミニズム』(新曜社)、『部長、その恋愛はセクハラです!』(集英社新書)、編著に『架橋するフェミニズム―歴史・性・暴力』(無料電子書籍)などがある。

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