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【もんでんあきこ×桜木紫乃】「我々昭和の女どもには、やっぱり男はとことんカッコつけてカッコ悪く死んでほしいという美学がある」

小説において重視するのは共感ではなく、物語としての面白さ

――小説と漫画という、異なる表現方法でそれぞれの世界観を作り出しているお二人。創作法や考え方にはどのような違いが、そして共通点があったりもするのでしょうか。

もんでん 小説では謎めかせて書いていないことも、漫画ではある程度描かないと伝わらないこともあるから。小説を漫画化する場合は、元々のストーリーに加えて、私のイメージで順番や見せ方を変えていくということはありますね。

桜木 これがまたうまく描くんだよなあ〜、毎回LINEで送る感想は「やられた!」ばっかり(笑)。

もんでん 伏線がすごかったとか言ってもらうこともあるけど、実は伏線だとわかっていなかったり、何かの伏線かなと思いつつ、はっきりとはわからないまま描いていることが多くて。『エロスの種子』の伏線も偶然だし、『アイスエイジ』のドッグタグも最初はそんな重要なアイテムになるとは思わないで描いていたんですよ。

桜木 小説もそう。書いてみないとわからないことってありますよ。書いてるときは気づかない。後からわかってくる。 
「神は細部に宿る」って言うけど、本当にそうだと思う。だから、1行をおろそかにしてはいけない。

もんでん 小説の場合は、その細部が1行1行なんだ。

桜木 そこに何が見えているか、ということ。必要のないことは書きたくないんです。何を書くかより、何を書かないかということの方が大事で。
例えば『家族じまい』で言えば、この本は事件でも謎解きでもなんでもないし、家族ってみんな何かしら身に覚えのあることだから、書き手の好みとして、必要のないことは書かなかった。
書けば書くほどわかりやすくはなるけど、私は共感を求めたことはないんだよね。自分が人に共感しないから。理解はしたいけど。共感は満足で、理解は尊敬なんです。
だから「共感」を多発する編集者は、まず疑ってかかるようにしてる(笑)。

もんでん 共感といえば、『ブルース』が「グランドジャンプ」のような青年誌ではなくて「YOU」のような女性誌での掲載だったら、また違う描き方になっただろうって話は前もしたことあったよね。女性読者は共感を求める傾向があるから。でも『ブルース』って共感を求める話じゃないじゃない?

桜木 うん、違う。

もんでん だから青年誌での掲載でよかったと思って。『ブルース』は普通の人たちがヒロトに出会って非日常に巻き込まれていく話。やっぱり紫乃さんの物語としての面白さですよ。小説ってそういうものだと思う。共感ではなくて、え? こんなことになるの?っていうのを楽しむもの。でも共感を求める女性読者の中には、そこを受け入れない人もいますから。

桜木 だから私の小説は女性読者の数字が伸びないのか(笑)!

6月に刊行され即重版となった桜木さんの最新作『家族じまい』。老いていく両親、戸惑う姉妹とその夫など、家族それぞれの終活への向き合い方を淡々と綴った慈愛溢れる長編

「33年間、絵以外で稼いだことがない」

――共に北海道在住で親しい友人同士でもある、もんでんさんと桜木さん。桜木さんには今でも忘れられない初対面のエピソードがあるのだとか。

桜木 私たち、2、3駅しか離れていないところに住んでいて、一緒に雪まつり行ったりしてるけど、初めて会ったとき、もんちゃん言ったよね、「33年間、絵以外で稼いだことない」「原稿料が大事だから一生懸命働くの」って。これを聞いて私、なんてカッコいい女なんだ! って思ったよ。
その後も定期的に会ったりして、そんな身近にいる人が『エロスの種子』のヒットでドッカンドッカン跳ねて。こんな気持ちいいことがあるかと。
それで「おめでとうー! やったね!」って言ったときに、もんちゃん、まず何て言ったと思う? 
「これで親の介護を援助できる」だよ。

もんでん ちょうど父親の介護とかでお金がいるときでね。これで心配しなくていいと胸をなで下ろしたわけですよ。

桜木 私、あれを聞いて泣いたもの。こんないい話ないよ。私の中で最高の一言でした。

もんでん うわー、その話されると今でも本当に恥ずかしいわ(笑)。

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「泡姫」のストーリー動画と併せて、優しさ溢れるナンバーをお楽しみください!

©️もんでんあきこ/集英社
©️もんでんあきこ/集英社
単行本累計120万部突破のベストセラーとなった『エロスの種子』(2020年8月現在1〜4巻発売中)。圧倒的画力と巧みなストーリーで描かれる、優しくて強くてときに脆い男女のオムニバスは、雑誌「グランドジャンプ」にて大好評連載中。#21「泡姫」は最新号No.18(8/19発売)に掲載
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新刊紹介

もんでんあきこ

もんでんあきこ
漫画家。札幌市在住。週刊マーガレットでデビュー後、少女漫画だけでなく、レディースコミック、TLやBL、男性誌など幅広いジャンルで活躍してきた、稀代の絵師にてストーリーテラー。『竜の結晶』『アイスエイジ』など傑作は数あれど、現在グランドジャンプで連載中の『エロスの種子』では男女問わず圧倒的支持を得ている。直木賞作家・桜木紫乃原作のコミカライズ『ブルース』も大きな話題に。
Twitter● mondenakiko

桜木紫乃

桜木紫乃(さくらぎ・しの)
1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で「オール讀物」新人賞を受賞。07年に同作を収録した単行本『氷平線』を刊行。13年『ラブレス』で島清恋愛文学賞を受賞。同年、『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞し、ベストセラーとなる。他の著書に『起終点駅 ターミナル』『無垢の領域』『蛇行する月』『裸の華』『緋の河』など。20年『家族じまい』で中央公論文芸賞を受賞。21年3月刊行の、著者初の絵本『いつかあなたをわすれても』も好評を博している。

撮影/露木聡子

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