2020.8.19
【もんでんあきこ×桜木紫乃】「我々昭和の女どもには、やっぱり男はとことんカッコつけてカッコ悪く死んでほしいという美学がある」
小説において重視するのは共感ではなく、物語としての面白さ
――小説と漫画という、異なる表現方法でそれぞれの世界観を作り出しているお二人。創作法や考え方にはどのような違いが、そして共通点があったりもするのでしょうか。
もんでん 小説では謎めかせて書いていないことも、漫画ではある程度描かないと伝わらないこともあるから。小説を漫画化する場合は、元々のストーリーに加えて、私のイメージで順番や見せ方を変えていくということはありますね。
桜木 これがまたうまく描くんだよなあ〜、毎回LINEで送る感想は「やられた!」ばっかり(笑)。
もんでん 伏線がすごかったとか言ってもらうこともあるけど、実は伏線だとわかっていなかったり、何かの伏線かなと思いつつ、はっきりとはわからないまま描いていることが多くて。『エロスの種子』の伏線も偶然だし、『アイスエイジ』のドッグタグも最初はそんな重要なアイテムになるとは思わないで描いていたんですよ。
桜木 小説もそう。書いてみないとわからないことってありますよ。書いてるときは気づかない。後からわかってくる。
「神は細部に宿る」って言うけど、本当にそうだと思う。だから、1行をおろそかにしてはいけない。
もんでん 小説の場合は、その細部が1行1行なんだ。
桜木 そこに何が見えているか、ということ。必要のないことは書きたくないんです。何を書くかより、何を書かないかということの方が大事で。
例えば『家族じまい』で言えば、この本は事件でも謎解きでもなんでもないし、家族ってみんな何かしら身に覚えのあることだから、書き手の好みとして、必要のないことは書かなかった。
書けば書くほどわかりやすくはなるけど、私は共感を求めたことはないんだよね。自分が人に共感しないから。理解はしたいけど。共感は満足で、理解は尊敬なんです。
だから「共感」を多発する編集者は、まず疑ってかかるようにしてる(笑)。
もんでん 共感といえば、『ブルース』が「グランドジャンプ」のような青年誌ではなくて「YOU」のような女性誌での掲載だったら、また違う描き方になっただろうって話は前もしたことあったよね。女性読者は共感を求める傾向があるから。でも『ブルース』って共感を求める話じゃないじゃない?
桜木 うん、違う。
もんでん だから青年誌での掲載でよかったと思って。『ブルース』は普通の人たちがヒロトに出会って非日常に巻き込まれていく話。やっぱり紫乃さんの物語としての面白さですよ。小説ってそういうものだと思う。共感ではなくて、え? こんなことになるの?っていうのを楽しむもの。でも共感を求める女性読者の中には、そこを受け入れない人もいますから。
桜木 だから私の小説は女性読者の数字が伸びないのか(笑)!
「33年間、絵以外で稼いだことがない」
――共に北海道在住で親しい友人同士でもある、もんでんさんと桜木さん。桜木さんには今でも忘れられない初対面のエピソードがあるのだとか。
桜木 私たち、2、3駅しか離れていないところに住んでいて、一緒に雪まつり行ったりしてるけど、初めて会ったとき、もんちゃん言ったよね、「33年間、絵以外で稼いだことない」「原稿料が大事だから一生懸命働くの」って。これを聞いて私、なんてカッコいい女なんだ! って思ったよ。
その後も定期的に会ったりして、そんな身近にいる人が『エロスの種子』のヒットでドッカンドッカン跳ねて。こんな気持ちいいことがあるかと。
それで「おめでとうー! やったね!」って言ったときに、もんちゃん、まず何て言ったと思う?
「これで親の介護を援助できる」だよ。
もんでん ちょうど父親の介護とかでお金がいるときでね。これで心配しなくていいと胸をなで下ろしたわけですよ。
桜木 私、あれを聞いて泣いたもの。こんないい話ないよ。私の中で最高の一言でした。
もんでん うわー、その話されると今でも本当に恥ずかしいわ(笑)。
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