2020.2.27
“ハマのGT-R”は、仁義を重んじる男! 横浜F・マリノス仲川輝人 「今季は23点、獲ります!」
小さくて硬い体を 大きな武器に変えた
仁義の人は超ポジティブ思考の持ち主でもある。
選手の大型化が進むJリーグにあって、仲川は161㎝の小柄な体をストロングポイントに転換してアジリティ(敏捷性)を磨いてきた。
「自分より背の高い選手と戦うことになるので細かいステップで相手を翻弄するというのは自分だからこそできる動き。中学の頃に身長が伸びないなとわかったんで、自分のクイック性を生かすための練習を反復してやるようになりましたね」
身長がこれ以上伸びないと感じたとき、漠然と「サッカーをやめようかな」と思ったことがあったという。しかし、ネガティブ思考に陥ることなく「これもチャレンジ」という思考にスイッチできるのが仲川だ。
「両親も大きくないし、兄が170㎝、姉が163㎝なので上のふたりに持っていかれちゃったんですよね(笑)。でも、ヨーロッパでも(リオネル・)メッシとか小柄な選手が活躍していたし、ドリブルのスピードがある選手のプレーはすごく見ていました。中学の頃は体も細かったんですけど、筋トレを一生懸命やって、当たり負けしなくなってからは自信もついていきました」
相手を置き去りにする細かいステップによるギアチェンジと圧倒的なスピード。”ハマのGT-R”最大の売りはなんといってもギアをローからすぐにトップまで持っていける能力だろう。
「チームメイトの(松原)健が『ゼロから100までのスピードアップがすごい』と言ってくれます。積み重ねてきて、自然とできるようになっていましたね。だから、ボールがスペースに出たら『よしっ!』という感じになります」
体が硬いこともアスリートにとってネガティブな要素になりかねない。だが、これもポジティブに受け止めてきた。
「昔から柔軟性をもっと高めなさいってよく言われましたけど、なかなか軟らかくならなくて。でも、いつからか、この硬さが(速さを生み出す)バネになっているんじゃないかって思うようになりました。今もケガをしないためにある程度ストレッチはやりますけど、あまり軟らかくしないほうがいいと思っています。バネを使ってパワーを出していくには、硬いままのほうが自分には合っているという感覚があるんです」
大学4年で大ケガを負いプロに入ってからもなかなか活躍できず、J2のクラブに2度もレンタル移籍した。それでもポジティブに、真摯にサッカーに取り組んでいった先にブレイクが待っていた。
20年シーズンも主役を奪う覚悟はできている。元オーストラリア代表監督であるアンジェ・ポステコグルー監督の下「超攻撃型」に変貌を遂げたチームはリーグ2連覇のみならず、アジアチャンピオンズリーグ、天皇杯、ルヴァン杯と4冠達成を目指す。
仲川も自信を口にする。
「監督が来た1年目(18年)は残留争いもあったし、優勝した去年だって夏場に3連敗して首位との勝ち点差が9まで開きました。それでも自分たちのサッカーをやり続けて、着実に力をつけてきたと思うんです。苦しんだ分だけ力になっているし、結果が出て自信にもなりました。みんなこのサッカーを楽しんでいるし、全部のタイトルを狙っていきたいと思っています」
そのためにも”ハマのGT-R”の爆走は不可欠。個人的な目標はやはり”ニッサン”である。
「去年はアシストを合わせての23でしたけど、今年は得点だけで23はいきたい。とはいえ、アシストも増やして2桁はマークしたいですね。去年、(J1の)令和初ゴールのゴールパフォーマンスをやったりしましたけど、新しいのもちょっと考えてみようかなと思っています(笑)」
昨年12月には日本代表にも初選出され、注目度もますます上がっている。”サムライブルーのGT-R”と呼ばれる日もきっとそう遠くない。
(プロフィール)
なかがわ・てるひと/1992年生まれ、神奈川県出身。2015年、専修大学卒業後、横浜F・マリノス入団。FC町田ゼルビア、アビスパ福岡への期限付き移籍を経て、18年にレギュラーに定着。19年は15得点9アシストの大活躍で優勝に貢献。得点王とベストイレブン、MVPの個人3冠に輝く。日本代表出場2試合。身長161㎝、57 ㎏