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“ハマのGT-R”は、仁義を重んじる男! 横浜F・マリノス仲川輝人 「今季は23点、獲ります!」

ずっと朝練を見てくれた恩人のために

恩返し――

プロ5年目にして大ブレイクした快足アタッカーは、クールな見かけによらず情に厚い男である。
専修大学時代に頭角を現し、多くのクラブから注目を集めた仲川が進路にF・マリノスを選んだのは、ある恩人の存在があった。

「僕をずっと見てくれていたのがチームのスカウトの方でした。大学の朝練が7時から始まるんですけど、週に3、4回はグラウンドに来てくれていました。僕は練習後すぐに学校に行かなきゃいけないから、ほんの少ししか話せない。それでもずっと通ってくれましたね。ほかのクラブの方もいましたけど、F・マリノスの方は常にいた印象です。やっぱりうれしかったし、自分も情に厚くありたいなと思えるようになったのもその方のおかげなんです」

そのスカウトとはベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)などで活躍した公文裕明氏。今はクラブを離れてしまったが、仲川はMVPを獲得したこともきちんと報告している。

大学4年時には右膝に大ケガを負ったが、その1週間後にF・マリノス行きを決めた。ケガがあっても「キミが欲しい」と言ってくれたことも胸にズシンと響いた。

「ケガを負ってからも、本当にいろいろサポートしていただいたし、気にかけてくれた。感謝の言葉しかないですね」

当時のスカウトに対してはもちろん、ケガを負った自分を獲得してくれたクラブへの感謝。だからこそ「23」を伝統の番号にしたいという思いに駆り立てられた。

そんな仁義の男は、ルーティンを大切にすることでも知られる。オレンジジュースを飲む、右足からソックスやスパイクを履く、両手首にテーピングを巻く、EDM系のアゲアゲの曲を聴く、試合前日に体毛をそる……両手に収まらないくらいのルーティンをこなしてから試合に入る。これはよけいな思考を排除して、試合にだけ集中していく彼なりの儀式だ。そんな仲川式ルーティンは何から始まっていったのか――

仲川は時計の針を川崎フロンターレU-18時代に戻して、こう振り返る。

「最初は母が作る豚モヤシ炒めだったと思います。高校の頃、豚肉は疲労回復にもいいからと試合前夜に作ってくれるようになって、とてもおいしくて。大学の試合も自宅から通っていたので7、8年は続いたと思います」

塩、コショウの利いた豚モヤシ炒めをエネルギーに変えて、大学ナンバーワンアタッカーと呼ばれるようになる。ルーティンの原点はここにあった。

彼にとってルーティンは意識してやるものではなく、自然な流れでこなしていくもの。不自然と感じたら変更することもよくあるとか。

「体毛をそるというのも試合当日にやっていた時期があったんです。でも、当日だとどうしても時間を気にしたり、焦ってしまったら(ルーティンの)意味がないなと思って前日にしました。音楽もそうですね。テンションを上げてくれる曲を見つけて『これ、いいな』と思ったら採用します。でも、自分の中でもはやりがあるので、どういうタイミングで替えようかと。シーズン前のキャンプ中に練習試合があるので、そういうときに新しい曲を試したりというのもあります」

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二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、スポーツ報知にて「週刊文蹴」(毎週金曜日)、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

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