2022.11.19
大反響!3刷!!【村井理子ロングインタビュー後編】「子育てってひたすら傷つけられるんです」。“親離れ”への戸惑いと、自分を守るための方法
自分を守るための”バスケット”
――それにしても、子育てで悩むときも、愛犬であるハリーくんが支えになってるんですね。
ハリーはもうね……神様からの贈りものとしか言いようがないです。びっくりするぐらいかわいい。私の心臓の病気がわかる直前に飼い始めたんです。だから、ハリーが死ぬまではがんばって生きなくちゃと思うんですよ。多分愛犬家にはそういう考えの人、多いと思います。この犬は自分が看取ってやらなくちゃいけないって。ほんとかわいくてたまらんですよ。散歩してもぴたっと隣に付いてくるし、私が息子と言い合っていると、真ん中にぐわって入ってくるんです。
――ケンカを止める。
そう。言い争いにもすぐ気づいて、ものすごい早足で来て心配してくれる。タッタッタってめっちゃ急いできます(笑)。
――いろいろ大変な日々をサバイブしていると思うのですが、村井さんのSNSを拝見していると、常におもしろいことを探して、日々を楽しむ努力をされているなと感じます。
たしかにそうですね。常におもしろいことを探してます。小さい頃に心臓の病気で入院することが多かったので、いつもと違う場所に行くことの不安感というのが昔からあるんですよ。病院でもホテルでも、部屋の隅っこに溜まっている埃や、いつもと違うシーツ、使い古された枕の薄い感じ、そういうのがいちいち恐怖で眠れないんです。子どもの頃、そういう環境に耐えるためにやっていたのが、自分の周りを好きなもので囲うことでした。病院のベッドの周りを、全部サンリオのグッズで囲っていました。多分、毎日おもしろいことを探して吸収していくのって、そのときの癖が抜けてないからだと思います。
――自分を守るための方法だった。
うん。変なものいっぱい買って家を飾るのも、自分のスペースを囲って安心したいからなんだろうなって思います。子どもの頃、母がキキララのバスケットを買ってくれたんです。おもちゃを出しっぱなしにしてると、病院の迷惑になるから、「このバスケットの中に、あなたの好きなものを詰めなさい」って。言われた通り、きちっと詰めて持ち歩いていました。あのバスケットが今ではマイホームになってしまったんです(笑)。好きなもののひとつがハリーであり、ドラえもんグッズであり、文具であり……という感じなんです。人間は怖いじゃないですか。信用してる人はもちろんいますけど、基本、信用ならない。だから、ものとか動物が好きなんだと思います。私の好きなものたちは、私を裏切らないですから。
(了)
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実兄の突然死をめぐる『兄の終い』、認知症の義母を描く『全員悪人』、壊れてしまった実家の家族について触れた『家族』。大反響のエッセイを連発する、人気翻訳家の村井理子さん。認知症が進行する義母の介護、双子の息子たちの高校受験、積み重なりゆく仕事、長引くコロナ禍……ハプニング続きの日々のなかで、愛犬のラブラドール、ハリーを横に開くのは。読書家としても知られる著者の読書案内を兼ねた濃厚エピソード満載のエッセイ集。
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