2025.9.1
メガバンクで壮絶なパワハラを受けた銀行員の悲しすぎる末路【5分後に、虚しい人生。試し読み】
今回、豊洲銀行 網走支店さんが執筆した「知ってるやり方でしか仕事ができない」を無料公開します。
現役の銀行員によるリアリティ溢れるパワハラ被害のショートストーリーです。

「知ってるやり方でしか仕事ができない」
「甘やかすこともできるんだよ? 偉いでちゅね〜、よくできまちたね〜って。それでおまえは成長できると思うか? なあ? 恥ずかしくないんでちゅか〜?」。応接室には二人しかいなかった。誰も彼を止められない。きっと私の自尊心が溶けてなくなるまで強酸性の言葉を浴びせ続けるのだろう─。
入社一年目の夏だった。窓口業務を少し経験した後、基本を知らぬまま融資業務についた。マニュアルを読んでも言葉と知識がつながらない。私の教育係は、一人でほとんどの主要取引先を担当していて外出が多く、次長が実質の教育担当だった。「おまえの仕事は砂上の楼閣だな。このままだといつか人間としての信用も足元から崩れるよ?」
本店審査部から来た次長。行列をなすアリを一匹ずつ指で丁寧に潰すように、私のミスを一つひとつ指摘した。そして心を抉るための言葉を吟味し、時間をかけてこき下ろすのが彼のスタイルだった。業務時間だけでは終わらない。仕事が終われば居酒屋で私の審査会が開かれた。
「おまえさあ、当然のことを正面から言うだけじゃつまらないんだよ。お笑い芸人を見て勉強しろ、なあ? プライドが高いんだよ。もっとバカになってみんなを楽しませてみろよ?」。うんうんと頷く者、笑いながら聞く者。周囲も同調した。男子校の部活みたいなノリが欲しかったのだろう。
そのうち頭痛がするような気がしたり、熱っぽい気がしたり、風邪をひいたような気がして毎朝体温を測るようになった。いつも平熱だった。眠る時は翌朝に発作が起きてベッドから起き上がれなくなることを祈った。休む口実を探しているのは自覚していた。それでも毎日、始業の一時間前には出社した。
半年ほどは耐えたが前頭葉が疲弊して抑えが利かなくなっていたのかもしれない。ついに次長の小言に逆上してしまった。「ミスが多くて申し訳ありません! でも私の人間性を揶揄するのはやめてください!」「一丁前に口答えか? いいよ、聞いてやるよ。ちょっと来い」。私は応接室に連れて行かれた。
「オレも長年部下を見てきてるからさ、いくらでも演技してやるよ。優しい次長さんになってやろうか?」「そういうことじゃないんです! 私の人間性にケチをつけるのをやめてほしいと言ってるんです!」「まあ遠慮するなって」。全く意に介さない次長に私は苛立ちを隠せなくなっていた。
意地の悪い笑いがそのままシワになって刻まれたクシャクシャの顔。不気味で不愉快だった。どうすれば彼に一矢報いることができるのかわからなかった。目に涙が溜まり視界が歪む。早々に涙声になり心が折れかけている私を楽しそうに追い詰める次長。口撃を緩めることはなかった。