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【加藤直人×藤井太洋 メタバース徹底対談】起業したい人がフィクションを書くべき理由

アバターとアイデンティティ

藤井 『メタバース さよならアトムの時代』でも紹介されていますが、メタバースで重要なのがアバターですよね。

加藤 僕もメタバースにおいてアバターは重要な役割を担うと考えています。アバターは、メタバースがこれまでインターネットになかった身体性をもたらしたことの象徴だと思うんです。

藤井 アバターはメタバースの中で活動するユーザーの「分身」。プラットフォーム間を移動可能にしようという考え方が広がってきているので、ユーザーにとっての重要度が増していくでしょうね。とはいえ、Web2.0の頃から、SNSで一つのアカウントを複数のサービスで使えるようにしようという試みは何度も何度も行われてきたんですけど、いまだに一般化はしていないので、アバターの移動も難しいのかな。

加藤 そうですね。でも、メタバースの世界では、たとえばclusterとVRChatで同じアバターを使いたいというニーズは確実に高まっています。アカウントよりもアバターのほうがユーザーのアイデンティティに近いんですよね。利便性だけでなく。

提供/クラスター株式会社
提供/クラスター株式会社

藤井 たしかにバーチャル空間のアバターと、SNSのプロフィールのアイコンとは大分違いますね。

加藤 実際にアバターを自分の好みで改変したいというニーズがあって、それに応えることでお金を稼いでいる人たちがすでに出てきています。既成のアバターに猫耳をつけたいとか、そういう改変です。アバターに手を加えることで愛着もわくし、アイデンティティとの親和性も高くなる。将来的に自分のアバターを持ち込めないプラットフォームは使いたくないという人たちが出てくるのは自然な流れだと思います。
 実は、最近までclusterも動作を軽くするためにアバターの制限をかけていたんです。でも、最近、技術的な問題が解決されて制限を外しました。それまでは制限内にアバターを収めないといけないがゆえに猫耳がつけられない、という不満がユーザーから聞こえてきたりしていたんです。そういう声が上がるくらい、アバター自体にアイデンティティが宿っていると感じている人が多いんです。

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新刊紹介

藤井太洋

ふじい・たいよう
1971年奄美大島生まれ。2012年『Gene Mapper ‐core‐』を電子書籍で個人出版し、大きな話題となる。2014年『オービタル・クラウド』で日本SF大賞を、2019年『ハロー・ワールド』で吉川英治文学新人賞を受賞。著書に『ビッグデータ・コネクト』『東京の子』『ワン・モア・ヌーク』などがある。

Twitter@t_trace

加藤直人

かとう・なおと
1988年大阪府生まれ。京都大学理学部にて宇宙論と量子物性論を研究。京都大学大学院理学研究科修士課程中退後、スマホゲームを開発しながら約3年間のひきこもり生活を過ごす。2015年にスタートアップ「クラスター」を起業。2017年、数千人規模のイベントを開催することのできるVRプラットフォーム「cluster」を公開。『ForbesJAPAN』の「世界を変える30歳未満30人の日本人」に選出。

Twitter@c_c_kato

(写真:長谷川健太郎)

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