2026.3.30
「結婚どころか、明日が見えなかった」又吉直樹と50歳独身漫画家が語る、氷河期世代の孤独
又吉さんは小説『生きとるわ』(文藝春秋)、中川さんは漫画『独りで死ぬのはイヤだ 年収200万円、48歳独身漫画家の婚活記』(集英社)と新刊が話題の二人が孤独と結婚観をめぐって語り合う。(全3回の1回目)
※「集英社オンライン」3月28 日配信分より転載。
(取材・構成/斎藤岬 撮影/井上たろう)
全3回の1回目 #1 #2 #3
恋愛に踏み出せない理由
――まずは中川さんの新刊『独りで死ぬのはイヤだ』について、又吉さんの感想をお聞かせください。
又吉
すごくわかるところがいっぱいありましたね。特にそう感じたのは、女性と二人で出かけた帰り、相手のことをいいなと思ってるけど、「もう今日は早く帰りたい」ってなる場面で(笑)。
僕もわりと毎回そうなってしまうんですよ。緊張感を持ってごはんとか食べて、大きなミスをせずに終われたらもうやり遂げた感があって「早く一人になりたいな」って。同じ人と2回目に会うときに異常にパワーがいるっていう話もわかるし、思い当たる節がたくさんありました。これは僕と中川さんの世代が近いからなのか、それともそういう傾向にある人が一人でいる確率が高いのか、ちょっとまだわからないですけど。
中川
すごく嬉しいです。好きな人相手でも「そろそろ帰りたいな」ってなるとか二度見知りするとか、僕が言いたかったことを又吉さんに共感していただいて。
又吉
好きでもそうなるんが、ややこしいところですよね。
中川
そうなんですよね。好きだからこそというか。
又吉
好きな人に嫌われたくないですもんね。就職氷河期って言葉も出てきますよね?
中川
出てきます。

又吉
1980年生まれなんで僕もそうなんですけど、多少そういうのは影響してるんじゃないかなと思うんですよ。僕らが子どもの頃に観てたドラマとかで繰り広げられる恋愛って、それなりに良い店でごはん食べてバー行って、おしゃれな部屋で一人暮らしして、家族といえば一軒家に住んでペット飼って車があって……って感じやったじゃないですか。
そういうものを観て育ってきてるから、自分が20歳ぐらいになったとき、そこで描かれていた“大人”とは程遠く感じるんですよね。そんな状態で自分に自信を持つのは結構難しい。恋愛に関してもそこで何かひとつ壁があったんじゃないかな、っていうふうに作品を読みながら思いました。
中川
わかります。テレビを観てると豊かな情報が流れてきて、子どものうちは「だんだん自分もこうなっていくのかな」と思うんですけど、大人になるのが近づくにつれて「なれなさそうだ」って予感がしてくるんですよね。で、いざ大人になってみるとやっぱり「あ、なれないんだ」って結果が待っていて。
又吉
「親戚の子どもにどうやってお年玉あげんねん」とか、思いますよね。
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