よみタイ

ベストセラー『妻のトリセツ』の著者・黒川伊保子さんが『妻が口をきいてくれません』を脳科学的見地から解説

話題のコミック「妻が口をきいてくれません」の単行本が11月26日に発売されました!
夫に対して口をきかなくなる妻と、妻が口をきかないことに戸惑い苛立つ夫、すれ違う夫婦の姿がリアルに描かれた本作。
「よみタイ」連載時(2020年1〜8月)には、「うちも同じ」「わかる!」と、大きな共感と反響を呼びました。

なぜ妻は突然口をきかなくなるのか。そして、なぜ夫にはその理由がわからず戸惑う事しかできないのか――
今回は、本作で描かれたような会話のない夫婦関係について、『妻のトリセツ』や『夫のトリセツ』で知られる感性アナリストで随筆家の黒川伊保子さんに、脳科学的見地から語っていただきました。

(構成/「よみタイ」編集部)

妻はなぜ突然口をきかなくなるのか?

配偶者への不満や不機嫌をためた結果、突然口をきかなくなる女性は少なくありません。
なぜこうしたことが起きるのでしょうか。

ポイントは、二つあります。

【ポイント1:子育て期の女性脳が原因】

小さな子供を育てているときの女性脳は、夫に超イラつく仕様になっています。
何を言っても、何をやってもムカつく何年かがある。女性は「夫が、わかってくれないから」
「夫が、無神経だから」だと思い込んでいますが、そもそも脳が、新婚時代とは変わっているのです。

赤ちゃんを育てている女性は、脳の認知のメッシュ(目安)が、赤ちゃん仕様になっています
赤ちゃんの小さなすべすべの顔を眺めながら、息の音ひとつに耳を澄ましている女性にとって、会社から帰ってきた夫は「顔、おっきい! 脂ぎってる! 足音大きい、冷蔵庫開ける音、うるさすぎ!」に感じられるわけ。
思春期に父親を嫌ったように、夫を「脳の生理的な領域」が嫌うわけですね。

さらに、生殖は、出産ごとに相手を変えたほうがよりバリエーションの豊かな子孫が残せるので、動物のメスは、生殖ごとに相手を変えようとする本能があります。
子育て期ということは、夫との生殖が完遂したわけですから、脳は、「もっと別の相手」を探し始めます
当然、目の前の夫のあら捜しを無意識にしているのです。
あらゆることが、恋人時代にはカワイイと思えたことまで、ムカつきます。

単行本『妻が口をきいてくれません』より。
単行本『妻が口をきいてくれません』より。

【ポイント2:夫の対話下手が、妻のムカつきを助長している】

女性脳にとって対話とは、「思いを語って、共感で返す」
男性脳にとって対話とは、「スペックを確認して、問題点の指摘で返す」
この違いが、対話のすれ違いを生みます。

妻「パート先の店長に、こんなこと言われて」
夫「あ~、それは悲しいね。きみの気持がわかってもらえなかったんだ」
妻「言い返せない自分が情けなくて」
夫「きみはきみのままでいいんだよ」

これが妻の理想の会話ですが、たいていは以下のようになります。

妻「パート先の店長に、こんなこと言われて」
夫「あ~、相手の言うことにも一理あるよな。きみもここが悪いよ」
妻「……」
夫「いやなら、辞めればいいじゃないか」

一方的に夫が悪いように感じるかもしれませんが、男性は、愛している相手の「問題」を、一秒でも早く解決するために、この会話を展開しています
実際、命が危ない現場では、この方法でしか命を救えません。
男性脳は、何万年もかけて、この仕様に進化してきたのです。これがあるから、狩りができ、ビルを建て、自動車が作れるわけ。

単行本『妻が口をきいてくれません』より。
単行本『妻が口をきいてくれません』より。

そして、さらに、子育て期の女性脳は、危険察知能力が半端なく高まっています。
「周囲の、自分に対する働きかけ」を、瞬時に「これは、攻撃か!?」とジャッジする機能が働きます。
子どもを守るためですね。
男性の「指摘」型の対話は、すべて攻撃に聞こえます。

ちなみに、この「攻撃か!?」の癖は、子育て可能期の思春期に入ると発動して、思春期と子育て期に一層高まりますが、他の期間にも継続します。発情した相手にだけ、一定期間(長くて3年ほど)だけ、この「攻撃か!?」が弱まります。

上記のポイント二つを合わせると、子育て中の妻にとっては「生理的にゆるせない相手が、口を開けば攻撃してくる」毎日になっちゃうわけですね。

この時期の夫は、かなり口の利き方に注意しなければ。
というわけで、2年前、『妻のトリセツ』を書かせていただいたわけです。

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黒川伊保子

くろかわ・いほこ●人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家
1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピューターメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピューターを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。近著に『妻のトリセツ』(講談社+α新書)、『女の機嫌の直し方』(集英社インターナショナル)、『息子のトリセツ』 (扶桑社BOOKS新書)など多数。

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