2025.5.9
創刊からの10年間でもっとも嬉しかった『SPY×FAMILY』のコミックス初版100万部達成! 【戸部田誠『王者の挑戦 「少年ジャンプ+」の10年戦記』序章 試し読み】

創刊からの10年間でもっとも嬉しかった紙のコミックス初版100万部
「ジャンプ+」は2024年9月22日で創刊から10年が経つ。その10年間でもっとも嬉しかった瞬間に、やはり細野はこのときをあげている。
「初期から『ジャンプ』を超えるって言っていて、『ジャンプ』を超えるってなんだ?って考えると、やっぱりまずは紙のコミックスで100万部のマンガをつくることだと言っていたんです。だから『SPY×FAMILY』が100万部、出た後ぐらいに、コミック販売部の人に、『細野くん、ずっと100万部、出すって言ってたもんね、出せて良かったね』って言われたときに、確かに言ってたと思ったし、出せたっていうのは本当に嬉しかったですね。そもそもデジタルの媒体なのに紙にこだわるのかみたいなところもあるんですけど、やっぱり一番わかりやすい指標はそこだったりするので」
信念を貫き、オリジナル作品にこだわり、「ジャンプ+」発の国民的マンガを生み出すことができた。しかも、特筆すべきは、初版100万部達成が、アニメ化の前だったということだ。つまり純粋に「ジャンプ+」の作品として認知され、人気となり、売れたということだ。それは「ジャンプ+」のひとつの〝勝利〟に他ならない。いまや「ジャンプ+」アプリのダウンロード数(2025年3月現在)は3000万を超え、ウィークリーのアクティブユーザーはアプリだけで480万人。ブラウザも含めると660万人にのぼる。新作を発表するマンガアプリとしてトップランナーとなり、マンガ誌アプリではもちろん、エンタメ系アプリの中でも抜きん出たものとなった。
「ジャンプ+」は「ジャンプ」の名を冠している通り、端から見ると〝王者〟に違いない。しかし、その立ち上げを主導した細野や籾山は決して編集者として〝王者〟とは言えなかった。細野や籾山は、大ヒット作を立ち上げた実績は十分ではなく、華々しい〝王道〟を歩んできたとは言いがたかった。
一方、社外から見れば、「ジャンプ」は少年マンガ界、いやマンガ界全体で絶対的王者。
リスクを負って先駆的なことをやらなくても構わない立場にいる。他の出版社がチャレンジし、成功の道筋ができた段階で威風堂々、満を持してデジタル化を進めても良かっただろう。しかし、デジタル化に積極的だった出版社はまだ少なかった時期にいち早く、「ジャンプ+」を立ち上げたのだ。それは、まさに〝王者の挑戦〟だった。
果たしてなぜ彼らはそんなリスクある挑戦を選び、いかに戦ったのか―――。
これは、そんな十余年の戦記である。
以下、「第1章 胎動」より本編に続きます。ぜひ書籍でご一読ください
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2014年9月22日創刊。昨年、2024年9月で10周年を迎えたマンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」。
その10年の間に、『SPY×FAMILY』『怪獣8号』『ルックバック』『タコピーの原罪』『ダンダダン』など、ヒットマンガや新人作家も続々誕生。多くの読者を獲得し、人気マンガ誌アプリとなった。そんな「少年ジャンプ+」は、どのようにして生まれ、どのようにして進化し、そして今後どこを目指していくのか?
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