2025.11.15
思い立ったらひとり旅! 歩きながら“私”と考え、語らうことの面白さ【山脇りこさん×明さん『歩いて旅する、ひとり京都』刊行記念対談 前編】
構成/国分美由紀

「私とふたりきり」。それこそがひとり旅の醍醐味
明 私は博物館が好きでいろいろな場所を訪れていますが、お腹が弱いので旅先であまり食事にフォーカスすることがなくて。だから『歩いて旅する、ひとり京都』を読んだとき、「旅先でこういう楽しみ方ができるんだ!」っていうのがすごく新鮮で楽しかったし、羨ましくもありました。
山脇 実は私も博物館や美術館が好きで、明さんの連載は書籍になる前から読んでいました。歴史的なお話や文化人類学的な視点もすごく勉強になるし、自分が行ったことのある場所でも全然視点が違うから、“もう1回行ってみよう”と思ったり。
明 ありがとうございます。それから、「私とふたりきり」という言葉もすごく響きました。これまで旅をする中でなんとなく感じていた、自分の中に俯瞰的な視点が生まれる理由がすとんと腹に落ちたんです。目的を持たずにひたすら歩くことで街と自分の姿が見えてくるって、まさにひとり旅の醍醐味だし、私もそれが好きなんだよなって。
山脇 ありがとうございます。そんなふうに言っていただけてすごく嬉しいです。博物館も食事も、ひとりで味わうと「私がどう思ったか」をビビッドに感じられますよね。もちろん誰かと一緒に行くのも素敵なことだけれど、そういうときって気づかないうちに感想が上書きされがちで。自分が感じたことなのか、一緒にいた人の感想なのか、わからなくなることが多い気がします。
明 相手がいると「そろそろ次の展示に行ったほうがいいかな……」とか考えちゃいますよね。私が博物館に通うようになったのも、自分の心を見つめる時間をつくるためでした。看護師として働いていた頃は日々いろんな患者さんと接しているので、例えば看取りが続いて心がすり減っていても、なかなか自分のための時間を持つことができなくて。そういうときに、博物館というちょっと特殊な空間で地球や宇宙、長い歴史などを感じられる壮大な世界にポツンとひとりでいると、やっと人間という存在や命のことを考えられるというか。新たに歩き出すためにも、大きな世界にひとりで浸る時間はすごく大事だし必要だなと感じます。
山脇 そう、博物館や美術館ってへこんでいるときに行くと効果ありますよね。ひとりになることで心が凪いでいくというか、向き合う時間をつくることができる。今回、本の中で歩くことについて書きましたが、歩くことって体にいいだけではなくて、すごく心にも効くと私は思っていて。旅先で歩いていると色々な発見があるし、自分とふたりで考えることで頭がクリアになったり、そのとき考えていることが実は自分にとってすごく大事なことだと気づけたり。もっとささやかなことでいえば、「夫に怒っていたけど、たいしたことじゃなかったな」とか(笑)。旅を重ねるほどに、歩くことの充実感みたいなものは実感としてありますね。
明 今までは博物館からホテルまでの道のりを散歩するぐらいの短い距離しか歩いていなかったので、私もやってみようと思いました。
寝台列車やフェリーでのんびり移動する贅沢
山脇 ぜひぜひ。明さんは移動手段としてサンライズ出雲に乗られていましたよね。
私もサンライズ大好きなんです。乗り鉄なので、東京から出雲とか、岡山から東京、とか予約が始まる1か月前の10時にスタンバイしてチケット取っています。
なのに、“出発の1週間前に偶然取れちゃうってどういうこと!?”と思いながら読んでいました。だって明さんが乗った二段個室の上段は、景色がよくて争奪戦になるプラチナチケットですから。ものすごいラッキーですよね。



明 実は私、意外と運がいいんです(笑)。沖縄出身なので、陸路を電車や新幹線で移動できること自体が感動もので。船も沖縄本島から離島へ行く短距離船しか乗ったことがなかったので、東京から徳島と北九州の門司に行く大型フェリーにも初挑戦しました。


山脇 私は船も大好きです。大浴場は最高ですよね。
明 最高でしたね。フェリーや寝台列車は移動自体に特別感があるから楽しくて。今では移動手段として普通に活用しています。この間も2日かけてフェリーで門司まで行ってきました。
山脇 移動は楽しいですよね。電車や船でのんびり旅をするって、じつはすごく贅沢なことだと思います。博多から夜に乗って、翌朝には五島列島に着くフェリーもおすすめですよ。
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