2021.7.13
息子に見えている母の顔
「ママの顔、お尻みたい」
三歳になった息子が、突然そんなことを言い出した。
ちょっと待て。私の顔、そんなにプックリふくれてるか?
正直、ショックですよ。お酒は飲まないし、それなりに甘いものも控えてるし。まあ軽口をたたけるようになったのは成長でもあるから、それはそれで喜ばしい……のかな。
「お尻、お尻、変だよ、お尻みたい」
息子の指摘は日に日にエスカレートしていく。まったくもう、変なアニメの影響だろうか。一日一回は、文句じみた口調でこちらの顔をけなしてくる。
「そういうこと、人に言っちゃダメでしょ」
さすがにこの辺りで釘を刺しておかねば。保育園で友だちや保育士さんにまで、こんなセリフを吐かれたらたまったものではない。
「なんなの、お尻って。ママのどこがどうお尻なの?」
真面目な顔で問いただすと、息子も一瞬は黙りこんだ。しかし、こちらの顔をじいっと見つめた後、とんでもないことを言い出したのだ。
「……お尻の穴」
は?
「だってお尻の穴みたいだもん」
いくらなんでもまあ……。ぷくぷくほっぺがお肉みたい、というならまだ可愛げがあるよ。だけど、よりによって穴の方かよ。勝手に勘違いしてた私がバカみたいだよ。
「あ、そう。そんなにクシャクシャなんですか」
「たまにね」
息子はぷいっと隣室に走っていった。