2021.7.9
誰も来ないはずの男子トイレで目にしたもの
恥ずかしい話ですが、中学生の時は、いつもトイレに入り浸ってました。
校舎のいちばん端っこにあるトイレです。
なぜかって、誰とも話さなくてすむから。
別にイジめられてた訳じゃありません。ただ休み時間に同じクラスの奴らと話すのが面倒くさかっただけです。とにかく、授業の合間は無理でも、昼休みになると必ず行ってましたねえ。
うちの学校って変な改築をしていたので、端っこの方は美術室以外ほとんど利用されなかったんです。つまり、昼休みは誰も来ない場所。
昼休みのたび、そこのトイレの大きい方に入って、便座の上で弁当を食べて、そのまま本を読んだりして、五限目までを過ごしてました。あの頃はいつも、毎日。
でもその日だけ、やけに眠かったんですよ。
登校時からなんか頭がボンヤリしていて、授業も頭に入らず。いつもの個室に入って弁当を食べかけたところで、すっかり眠っちゃったんですね。
キャハハハハハハ
思わず飛び起きました。いきなりドアの向こうで甲高い笑い声が響いたんです。
何だ……? と固まっていると、個室の外で、ボソボソしたおしゃべりが聞こえてきます。内容はほぼ聞きとれませんでしたが、全身に冷や汗がドバッと噴き出しました。
それ、女子の声だったんです。しかも二人。
うわうわ、ぼうっとしすぎて女子便所に入っちゃったのかよ。これがバレたら、とんでもないことになる。しかし運が悪すぎるぞ。うっかり女子便所に入ったとしても、こんなところ、いつもなら誰も来ないはずなのに、なんで今日に限って……。
早く出て行ってくれ──そう願いつつ、息をひそめました。
でも女子たちの声はやむことなく続いて、いっこうに話が終わる気配がありません。