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クラスメイトの机に置かれた手紙
めくるたび、どんどん怖くなる。 『一行怪談』で知られる吉田悠軌さんの書き下ろし怪談集『日めくり怪談』から選りすぐりのお話をご紹介します。 1日5分の恐怖体験をお楽しみください。

クラスメイトの机に置かれた手紙

 僕がその手紙を拾ったのは、中間テスト終了後の教室だった。
 いや、「拾った」という言い方はよくないだろう。
 それはタクヤの椅子の上に置かれた、タクヤ宛ての封筒だったからだ。

 試験が終わった解放感から、クラスメイトたちは皆さっさと帰っている。初夏の昼下がりの教室には、忘れ物を取りにきた僕をのぞいて、誰も残っていない。
 僕にとってタクヤは、クラスで一番仲の良い友人だ。その彼への宛て名が、明らかに女の子っぽい文字で書かれているではないか。
 そっと封筒を手に取り、裏返してみる。差出人の名前は、やはり女のものだった。
 封は、すでに開けられている。
 いけないとは思いつつ、好奇心に負け、中身を抜き出してしまった。
 入っていたのは便箋が一枚だけ。書かれていたのも、短く単純な文章だった。

 ──ずっと好きでした。こんなに人を好きになったことなんてなかった。ありがとう。
 
 おいおい、これは面白くなってきたぞ。
 差出人は、クラスの女子ではない。住所が書いてないから手渡しのはずで、つまりこの高校の誰かだろう。この名前は聞いたことないけど、別の学年なら僕もよく知らないし。いや待て、近くの女子高の生徒から渡された可能性もあるな。それにしても、今時メールじゃなくてラブレターというのが純粋というか……。
 
 僕はそのラブレターを鞄にしまい、持ち帰ることにした。
 顔はニヤついていたけど、けっしてイタズラ心からではない。
 このままにしておいて、教師やほかの生徒たちに見つかったらまずいと思ったからだ。次の登校時、そっとタクヤの机に入れるか、読んでないフリをして「落とし物だぞ」と彼に渡すつもりだった。

 しかし翌朝、タクヤは学校に来なかった。
 

(イメージ画像/写真AC)
(イメージ画像/写真AC)
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新刊紹介

吉田悠軌

よしだ・ゆうき
1980年東京都出身。怪談、オカルト研究家。怪談サークル「とうもろこしの会」会長。オカルトスポット探訪マガジン『怪処』編集長。実話怪談の取材および収集調査をライフワークとし、執筆活動やメディア出演を行う。
『怪談現場 東京23区』『怪談現場 東海道中』『一行怪談』『禁足地巡礼』『日めくり怪談』『一生忘れない怖い話の語り方 すぐ話せる「実話怪談」入門』『現代怪談考』『新宿怪談』『中央線怪談』など著書多数。

Xアカウント @yoshidakaityou

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