よみタイ

もし『妻が口をきいてくれません』夫妻が離婚を望んだら? 弁護士・南和行さんがアドバイス

財産分与について、離婚するメリットが乏しい

とはいえ、涙を拭って、弁護士的なお話も……。

今回のケースでは、美咲さんも、いちばん気になるのは、離婚したあと、
経済的なこと、お金は大丈夫かということかなと思います。

単行本『妻が口をきいてくれません』より。
単行本『妻が口をきいてくれません』より。

美咲さんと誠さんのような、専業主婦あるいはパートタイムの主婦と、いわゆる普通のサラリーマンで長期の住宅ローン返済中の夫、という夫婦が離婚するとなる場合、財産分与について、離婚するメリットが乏しいと思います。

財産分与とは、
名義のいかんにかかわらず、婚姻中に形成された夫婦の財産を全部テーブルに並べて、
それを2分の1ずつで分けましょうという制度
で、
法律でも定められています。

今、誠さんはローンを返している途中で、
一軒家は中古の価格が根下がるので、ローンの残高のほうが家の価値より大きい、
つまり不動産の価値はマイナスとなりそうです。

誠さんも美咲さんも若いので、それ以外の貯金もあまりなさそうです。

慌てて離婚して、キッチリ財産分与をしようとすると、
美咲さんも子どもたちも家を出て、
家を売ったお金を誠さんのローンに充てても借金は残り、
むしろ、美咲さんがパートで貯めたいくらかの貯金を、誠さんと分けなきゃいけない……

そんなことにすらなりそうです。

離婚しても美咲さんと子供たちは誠さん名義の家にそのまま住んで、
誠さんには、養育費の支払いとは別に、ローンも支払ってもらう、

というのも期待してしまいますが、
誠さんがどこかで「もう払えない」「払わない」となれば、たちまち生活が全て破綻してしまいます

そういう意味でも、美咲さんは、今はまだ、
その時期ではないのかもしれませんね。

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新刊紹介

南和行

みなみ・かずゆき●1976年大阪府生まれ。京都大学農学部卒業、同大学院修士課程修了後、大阪市立大学法科大学院にて法律を学ぶ。2009年弁護士登録(大阪弁護士会、現在まで)。2011年に同性パートナーの弁護士・吉田昌史と結婚式を挙げ、13年に二人で弁護士事務所「なんもり法律事務所」を大阪・南森町に立ち上げる。一般の民事事件のほか、離婚・男女問題や無戸籍問題など家事事件を多く取り扱う。著書に『同性婚―私たち弁護士夫夫です』(祥伝社新書)、『僕たちのカラフルな毎日―弁護士夫夫の波瀾万丈奮闘記』(産業編集センター)がある。
大阪の下町で法律事務所を営む弁護士の男性カップルを追った、本人とパートナー出演のドキュメンタリー映画『愛と法』(監督:戸田ひかる)は、2017年の第30回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門で作品賞を受賞し、2018年全国上映で好評を博す。タレント弁護士として、テレビ番組へのコメンテーター出演やドラマ・映画の監修なども手掛ける。
・なんもり法律事務所
http://www.nanmori-law.jp/
・南和行のTwitter
https://twitter.com/minami_kazuyuki
・南和行のInstagram
https://www.instagram.com/minami_kazuyuki/

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