2020.12.16
もし『妻が口をきいてくれません』夫妻が離婚を望んだら? 弁護士・南和行さんがアドバイス
すれ違う夫婦の姿をリアルに描き、SNSなどでも賛否両論渦巻く大反響を呼びました(第1話はこちら)。
書き下ろしを加えて11月26日に発売された単行本は、たちまち大増刷が決定!
そんな超話題の夫婦コミックを、弁護士の南和行さんに読んでいただきました。
南さんは離婚や男女問題を多く扱う弁護士として、大阪を中心に活動中。
その経験をもとにした著作も多く、「よみタイ」では、離婚に至るまでの迷いや葛藤を物語形式で綴った連載「離婚さんいらっしゃい」(2018年10月~2020年4月)が人気を集めました。
さて、『妻が口をきいてくれません』の夫婦は、会話がなくなって5年。
妻・中村美咲は専業主婦で、夫・誠は会社員。
ごく平和な家庭のように見えて一つ違うのは、最低限の言葉以外、妻からまったく話しかけてこないこと。
家事や育児は普通にこなしているし、大喧嘩したわけでもない――。
そんな中村夫婦が離婚を望んだら、どうなるのでしょうか。南弁護士の見解は?
(構成/「よみタイ」編集部)
裁判所は離婚を命じる判決はしない
主人公の中村夫婦の場合、もしこの「口をきかない」状態のまま、
誠さんから美咲さんに離婚届による協議離婚を求めるも、美咲さんがそれを拒否したとしたら、
誠さんは第三者に美咲さんを説得してもらうべく、離婚調停を家庭裁判所に起こすことになります。
しかし、調停でも美咲さんが、理由はどうあれ離婚を拒否してしまうと、
誠さんは、判決での離婚を命じてくださいと、さらに離婚訴訟を提起しなければなりません。
が、今回の場合だと、裁判所は離婚を命じる判決はしないと思います。
裁判所は、誠さんと美咲さんが全く別居もしておらず、
外から見たら社会的にも経済的にも一体である、その事実を重視して、
「婚姻関係は修復不可能な程度にまで破綻しているとはいえない」
という判決を書くでしょう。
5年も会話もないのに!?
どっからどう見たって家庭内別居じゃん!?
いろいろ思うところですが、
そもそも裁判官は、他人様の夫婦に対して、
判決という命令で、強制的に離婚させることにとても慎重です。
不貞行為や、とても長期間の別居、あるいはひどい暴力など、
裁判所は客観的に目に見える事実をとにかく重視します。
「家に入ってみないとわからない体感や雰囲気」を手がかりに白黒つけるのは、
裁判官だってなかなか躊躇してしまうのです。
ちなみに裁判所は、
「修復不可能な程度にまで破綻しているとは認められない」
というフレーズを、離婚を認めない判決でよく使います。
誠さん美咲さんの夫婦は、
まだ少しこれから「修復できるかもしれない」期待があるかもしれませんが……。