2021.12.9
「ウッドショックは希望の光」紀州の林業王が語る、国産木材への思いと林業の未来
輸入木材が入ってこなくなる中、国産木材の需要が高まり、今、日本の林業に、かつてないほど注目が集まっています。
そんな中、和歌山県田辺市に本社を置く林業の老舗企業が、農林水産関係者にとって大きな名誉とされる、農林水産祭の天皇杯を受賞しました。
コロナ禍のウッドショックは、身の回りの木材を何気なく消費してきた私たちに、何を問い直しているのでしょうか。
重要な転機を迎えている日本の林業・木材製造業界において、業界内外からもっとも評価を集め、熱い視線が注がれる企業のトップに、話を聞きました。
(構成・文/よみタイ編集部)
「ウッドショック」で揺れた2021年の林業界
2021年、世界は「ウッドショック」に見舞われ、住宅業界や林業界が大きな影響を受けました。
ウッドショックとは、2021年3月頃から、木造建築の柱や梁、土台などに使う木材の需給がひっ迫して木材の不足により価格が高騰し、大きな混乱が生じている状況のことです。
日本でも、深刻な木材不足が続いています。
その主な原因は、新型コロナウイルスの影響で、木材に限らず、世界中で物流が滞り、日本へ木材が運べない状況になったこと。
木材製品の輸入には、日本から欧米に工業製品を輸出した際のコンテナが使われます。しかし、コロナの影響で輸出自体が滞ったことから、木材を積んで帰ってくるコンテナが不足し、コンテナ使用料が値上がりしているという状況も起きています。
また、アメリカや中国では、莫大な財政出動と住宅ローンの低金利政策が取られた結果、多くの人がリモートワーク用に新しい住宅を求め、建築ラッシュが起きています。これにより、世界的に需給バランスが崩れ、日本に十分な量の輸入木材が入ってこなくなりました。
こうした状況を受け、国産木材の需要が一気に増加。
しかし、一朝一夕で木は育ちません。急な需要に国産材の供給が間に合うはずもなく、多くの住宅メーカーや建築関係者は、これまで輸入材に頼り切っていた現実と向き合い、あらためて日本の林業に目を向けることとなったのです。
このように日本の林業や木材製造業が大きな混乱と転機を迎えた2021年、和歌山県田辺市に本社を置く「株式会社山長商店」が、11月23日に開かれた農林水産祭で天皇杯を受賞しました。
農林水産祭は、農産、林産、水産、園芸など7つの部門に分けて審査され、天皇杯は農林水産関係者の最高の栄誉とされる賞です。
国土の約70%近くが森林といわれる日本列島において、なかでも紀州・和歌山県は県全土の約80%を森林が占める、まさに山の県。
その「木の国」において、山長商店は、300年以上にわたって林業を営む老舗企業です。社員は90名ほどで、所有する山林は6000ヘクタールを誇ります。
今、林業界でもっとも注目を集める企業のトップである榎本長治会長に、ウッドショックの影響や、国産木材への思いを聞きました。