2021.10.30
「リサイクル優秀国」は幻想だった!? 「食品ロス削減の日」に知っておきたい日本のSDGsの真実
持続可能な社会に向けた取り組みの重要性が世界的に高まってきている中で、「SDGs」「食品ロス」というワードをよく耳にするようになりました。
しかし、関心がないわけではないし、大切なことだとはわかっているけれど、実はどんな問題なのかよくわかっていない、具体的に何か行動に移せているわけではない、という人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「よみタイ」で「捨てない食卓」を連載中の食品ロス専門家・井出留美さんに、今さら聞きづらい食品ロス問題の基礎知識を教えていただきました。さらに、井出さんが今、食品ロス問題を正しく理解する上で欠かせないと考える「3つのキーワード」についても解説していただきます。
(構成/よみタイ編集部)
今さら聞けない食品ロスの基本Q&A
Q.そもそも「食品ロス」とは?
A. 「本来食べられるのに捨てられてしまう食品」のことを食品ロスといいます。世界の食料廃棄量は年間約13億トンで、人の消費のために生産された食料のおおよそ3分の1を廃棄しています。世界の人口は増えており、それに伴い、食品ロスの量も増える傾向があります。
日本では1年間に約600万トンもの食品ロスがあり、そのうちの半数近くにあたる276万トンは、一般家庭から捨てられています(2018年、農林水産省・環境省調べ)。国民1人当たりに換算すると、毎日ご飯茶碗1杯分(約132g)を捨てている計算です。
Q.食品ロスの原因は?
A.家庭廃棄物由来の食品ロスは、主に食べ残し、手つかずの食品(直接廃棄)、皮の剥きすぎなど(過剰除去)が発生要因といわれています。事業系廃棄物由来の場合は、商慣習や規格外品、返品、売れ残り、食べ残しによって発生しています。
Q.SDGsとは? 食品ロスとの関連は?
A.「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」を略して「SDGs(エスディージーズ)」と呼んでいます。2015年の国際サミットで国連加盟の193カ国の首脳たちが2030年までに達成しましょうと定めた国際社会共通の目標です。
SDGsは、「誰一人取り残さない」を理念に、より良い未来社会を築くための17の目標と169のターゲットを定め、さらにその下に232の指標が設けられています。
例えば17の目標の1つには「貧困をなくそう」があり、ターゲットには「2030年までに、現在1日1.25ドル未満(※)で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」といったものがあります。
食品ロス問題は、SDGsを達成するために欠かせない重要なトピックの一つです。SDGsのターゲットに、「世界全体の一人当たりの食料廃棄を半減させる」ことが明記されています。
最新のSDGsの達成・進捗状況を報告した『Sustainable Development Report 2021』(2021年6月14日発表)によると、SDGsの達成率がもっとも高い国はフィンランド。日本は18位でした。
(※ なお、世界銀行が定期的に定めている「絶対的貧困」のラインは、物価の上昇などの理由で数字が見直され、現在、1日あたり1.90ドル未満となっています)
Q.食品ロスの何が問題?
A.食べ物を食べたいのに食べられない食料難の人がいる一方で、食べられる食品が大量に捨てられている。この事実も、食品ロスの大きな課題です。
しかし、食品ロスの「もったいない」問題はこれだけではありません。
食料自給率37%の日本は、食料を大量に生産、輸入しているのに、その多くを捨てているという現実。これは、食べものだけでなく、人の労働力や電気などのエネルギーを捨てていることになります。
捨てられるものを作るために多くのエネルギーが使われ、さらに捨てたものを処理するためにも大量のエネルギーが使われている。これによって、地球資源が枯渇している。まさに、自分で自分の首を絞めている現実こそ、今、私たちが向き合わなければならない問題なのです。
*次のページでは食品ロスをより正しく理解するために押さえておきたい3つのキーワードについて解説します。