2020.10.18
枯れない人妻女〜既婚者のバイタリティが溢れまくってる話
なんつーか、女の子はいつまでも恋する乙女だというのもわかるし、好きな人が別の女と映った写真を毎日見るのは(例え自分にも旦那がいても?)嫌なんだろうし、三人の女子会で一人だけ不幸になったらトラブルが起きるのもわかるが、驚くのは、彼女は独身時代、どちらかというと、こういうジェットコースターロマンスで東京ラブストーリーでダイナマイトなバディではなかったのだ。
むしろどちらかというと俺ら寄りというか、普段は何もなく干物のように乾いているし、彼氏がいたとしても浮気の心配や不安を口にするようなタイプでもなかったし、友人の恋話を聞いても基本は大変クールなスタンス、男ってクソだしね的なことは言うけど、彼氏が彼氏がと愚痴や惚気に時間を使っているところはそんなに見たことがない。
結婚を境に違う自分がご開帳している
彼氏の存在を知らない人が見たら、今でも彼女は、旦那元気で留守がいい、と旦那の浮気の心配などしている様子もないし、大変クールで現実的なままなのだけど、家庭外恋愛の話を聞けば完全にうちらが知らない新しい彼女がご開帳している。
別にどっちが本物でどっちがかりそめという感じもしないけど、古い友人である私たちからすると、食に興味がなかった女がレバ刺し提供禁止になって急にレバ刺し愛に目覚めて、それまでどんな食べ物にも向けられなかったような愛情をレバ刺しに向けて、保健所の目を盗んで貪り食ってる、みたいな、ちょっと不思議な感じではある。
恋愛にかかっていた生活とか人生設計とか結婚とか子作りとかステイタスとかのバイアスが一気に外れたがために、恋自体の純度が急に上がって、もう混ぜもんのブツじゃハイにはなれねーな的な感じなのかもしれない。
あるいは現実的であるが故にサクッと合コンで出会った同い年の男とサクッと結婚してサクッと子供を産んで、夏休みの宿題全部やっちゃった的な、あるいは大学受験がようやく終わった的な子供の感覚で、遊ぶぞーーと言うアドレナリンが出まくっているのかもしれない。
仕事や恋愛市場の第一線から退いた、なんて思われるのが嫌で、私はここにいるよー!というサインを全国に発信しているのかもしれない。
とにかく彼女は今、ジンギスカン屋の店員がちょっと聞き耳立てるほど大きな声でまくし立てるほど、そして「いやアンタも結婚してるんだから嫁に嫉妬しないでいいじゃん」と言うツッコミを無視するほど、昼顔とか失楽園の妖艶さよりドタバタ学園ラブコメを想起させるほど、熱く恋しくて恋しくて震えている。
人妻のバイタリティと溢れんばかりの承認欲求話で夜は更けゆく
恋愛の話で場を盛り上げられない不甲斐ない独身の二人は完全に助かっちゃった感じなのだけど、一応気遣いもできる彼女が、自分の話をまくし立て終わってスッキリした顔で、「みんなは仕事はどーお、順調?」なんて聞いてくれて、子育てどころか子作りに相当する行為だって最近してない私は、仕事の話題くらいは先頭に立ってしなくちゃ、と思ってみたものの「連載が一個終わって一個始まった」という以外に特に最近の変化はなく、またもや15秒で話し終えてしまった。
そこでマイクを持ったのはさっきのとはまた違う方の人妻で、結婚や妊娠を機に会社勤めを辞めて、子供育てをしながら数年前にアクセサリーの通販ショップをオープンした女だった。
なんでも彼女は買い付けたアクセサリーを写真に撮るうちに、写真にも目覚めて勉強し、写真教室にも通い、コンテストにも応募し、ついにスタジオでカメラマンとして不定期に働き出した。
アクセサリーショップの方はと言うと、インスタグラムから徐々に人気を得て、期間限定で実売店を出すことに決めたらしい。
「本当に、アクセサリーが大好きだし、アーティストの作った作品に触れると、どうしてもその作品が出すオーラを風景の中で写真におさめたいって思っちゃって、いつかはやっぱり写真集とか出したいな。あ、あとnoteで文章も書き始めたの」
人妻のバイタリティと溢れんばかりの承認欲求を前に、もう一人の不甲斐ない独身と私は羊の肉の陰に隠れて、
「うちらって何のために生きてるんだっけ」
「徳を積むためにニュージーランドで木とか植える?」
「そんな田舎行ったらさらに話題なくなるよ」
とささやき合った夜でした。
完
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