2021.8.26
ドクターマーチンはなぜカッコいいのか。作業靴をファッションアイテムに変えた「スキンヘッズ」の文化史
ドクターマーチンのメジャー化〜書き下ろし著者コメント
スキンヘッズカルチャーはマイナーで、その着こなしも普通の流行とは乖離した独特のものでした。
しかし彼らが見出したファッションアイテムの中で唯一、一般に広く浸透したのがドクターマーチンのブーツ。
下層階級出身の労働者集団・スキンヘッズは、みずからのアイデンティティを堂々と誇示するため、ワークブーツであるドクターマーチンをファッションに取り入れました。
1964年に典型的なモッズバンドとしてデビューしたザ・フーのギタリスト、ピート・タウンゼントもドクターマーチンブーツの愛用者でした。
瞬く間にビッグバンドに成長したザ・フーのメンバーのうち、ボーカリストのロジャー・ダルトリーはロンドンを中心に巻き起こったピーコック革命に応じ、服装がどんどん派手化していきます。
対照的にピート・タウンゼントは、当時のメジャーミュージシャンとしてはありえなかったジーンズやつなぎなどのワークウェアをステージで愛用するようになり、スキンヘッズのワードローブであったドクターマーチンも履くようになります。
そのピート・タウンゼントの影響もあり、ドクターマーチンブーツは1970年代以降、スキンヘッズと近縁関係にあるパンクやハードコアのみならず、メジャーロックシーンに大きく広がっていきます。
そして今日ではガチのロック好きだけではなく、一般的なファッションピープルの間にも深く根付いているのです。
『ストリート・トラッド〜メンズファッションは温故知新』の著者である僕にとっても、ドクターマーチン8ホールブーツは特別な思い入れがあるアイテムです。
初めて買った大学一年生のとき以来30年以上にわたり、我が家の靴箱の中には常にドクターマーチンのブーツがあります。
(2021年8月 佐藤誠二朗)
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