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ザ・ノース・フェイス、パタゴニア…アウトドアスタイルはなぜカッコいいのか。そのルーツは「ヒッピー」にあり

ザ・ノース・フェイス、パタゴニア…アウトドアスタイルはなぜカッコいいのか。そのルーツは「ヒッピー」にあり

ナチュラル志向のヒッピーのスタイル

 ヒッピースタイルにはさまざまな特徴があるが、まず目につくのはその髪型である。男女ともに無造作に伸ばした超ロングヘアを好んだ。これは、髪を切ることは自然の摂理に反すると考えたナチュラル志向の表現である。同じ考えから、男性は必ずといっていいほどヒゲを伸ばしていた。また長い髪をまとめるためのヘアバンドは、男女ともに必須のアイテムだった。
 先行の若者カルチャーであるアイビーやモッズは、おしゃれにさまざまなルールを定め、それに従うことを楽しんだのに対し、ヒッピーは服装でも自由を表現しようとした。つまり、これといったルールはなく、自分が着たいものを自由に着るのがヒッピースタイルである。
 とはいえ、ヒッピーはいくつもの流行を生んでいる。初期はヘンリーネックや丸首のTシャツ、チューリップハットかヘアバンド、素足にサンダル、そしてジーンズが基本だった。

『ストリート・トラッド〜メンズファッションは温故知新』より。©︎矢沢漫画制作所/集英社
『ストリート・トラッド〜メンズファッションは温故知新』より。©︎矢沢漫画制作所/集英社

 Tシャツは、ヒッピーたちが自分のセンスを示すためのキャンバスとして機能し、カラフルなタイダイ染めやペイズリーなどのサイケデリック柄から、政治スローガンを書いたメッセージものまで、幅広いバリエーションのものが着られた。ジーンズは、みずからがビートジェネレーションであり、ギターと歌でプロテストフォークを奏でていたボブ・ディランに代表されるフォークシンガーが好んで着用したことから、ヒッピースタイルには欠かせないアイテムとなっていた。特に裾が大きく広がったベルボトムのジーンズの人気が高かった。
 ナチュラル志向の表現としてパッチワークも流行した。物を大切にし、古くなった服もつぎはぎしながら着るという姿勢を意味するものだった。そして、ナチュラル志向の究極的な表現は裸になることだった。裸の体を彩るためのボディペインティングも、ヒッピーが生み出した文化である。
 1960年代半ばからは、ヒッピーの間でフォークロアやエスニックと呼ばれるスタイルが流行する。インドやアフリカ、東欧、中近東系などの民族衣装の特徴を用いたファッションのことだ。これは、先進国の汚れた物質文明を否定し、東洋的な精神主義を評価しようという意識から結びつけられたものと考えられる。
 戦争につながる暴力性をとことん嫌ったヒッピーは、男性も女性も花柄やカラフルな服、きらびやかなアクセサリーを身にまとうことで、平和をアピールした。華やかなスウィンギングロンドンの流行とも共鳴した彼らは、花で装飾した服や花柄の服を着て、街ゆく人々に花を配って回った。ヒッピーの一形態である彼らはフラワーチルドレンと呼ばれ、やがてその言葉はヒッピー全体を指す代名詞にもなっていく。

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新刊紹介

佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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