2020.8.15
堀江ワナビー男〜いいからお前は会議に出ろの話
【堀江ワナビー男】
分類詳細:ホリエモン属猿マネ種
生息環境:スマホの世界が俺の場所
特徴:今を輝くあの人の言葉多用
@鈴木涼美
キャッチーで偉そうな態度に憧れても、それは何のアンチテーゼにもなってない上に、自分の言葉を失ってるとしたら、もはや惨劇……
私はアムラー世代で、元来の夢見がちな性格も相まって、安室ちゃんが結婚会見をした次の月にはバーバリーのチェックを模したプリーツスカートをSUZUTANで3000円くらいで買って、ダイエーの黒タートルと唯一持っていたストレッチブーツを合わせて恥ずかしげもなく街を闊歩し、年が明ける前にはシャギーヘアを真似てひたすら伸ばしていた髪をバッサリ前下がりのショートカットに切って、本人的には安室ちゃん、客観的に見ると山田花子、よく言ってもせいぜい有森裕子みたいな髪型で中学に通っていた。ので、人が自分とポテンシャルの違うものを真似た時に起きるのは、奇跡ではなく惨劇だということを、身を以て知っている。
とはいえ人は何度だって夢を見る生き物なので、個人的アムラーブームが去った後も、森本容子や中根麗子など、私とは強調すべきボディ・パーツから似合う色から顔面偏差値から随分と違うものを真似ては何か違うものに近づき、次はスカーレット・ヨハンソンやジェシカ・アルバなど、もはや人種まで違うものを追いかけては無駄に散財し、本来的に自分にはどういったスタイルが似合うのかを学ぶ機会をことごとく逃し、資生堂マキアージュが4人のモデルカラーとともに発売された暁には篠原涼子カラーを買い揃え、今でも「寝る時はどんな格好してるの?」と聞かれれば「シャネルの5番よ〜」と答えてみたくてしょうがない。
しかし森本容子プロデュースブランドのデニムを穿くと20センチ歩幅でしか歩けなかったし、スカーレット・ヨハンソンのメイクを真似ると何故かすごくタイ人に間違えられたし、篠原涼子カラーは篠原涼子と同じ唇の色には近づくものの篠原涼子的な顔に作り変えられるわけでもなければ、37歳の文筆業の女は寝る時の格好を聞かれるチャンスにはあまり恵まれないので、「いつかは私も」はとっくに「どうせ私なんて」にすり替わっているし、生きててすみませんと思いながら生きてはいる。しかし別に私が篠原涼子的なカラーの口紅をつけて本人ちょっと篠原気分で周囲には篠原より夏川りみに似ているわ、と思われていても、そんなに誰も傷つけていないので可愛いものではある。
先日、私としてはちょっとバッファロー’66の時のクリスティーナ・リッチを意識したワンピースでいそいそと出かけた女子3人、男子3人の飲み会で、私以上の惨劇を起こしている男に出くわし、2週間経った今も同席した女友達一人と共に彼について批判的なレディキュールを続けている。彼はとあるエリートな金融系の会社員で、先日香港の駐在から戻ってきたばかり、来月に30歳になる、というご経歴。同期二人を連れて、結婚のふた文字に目が眩む私たち30代後半の知識と経験だけは無駄にあるけど愛嬌と謙虚さは最初からありません、という女性三人の前に現れた。