2021.6.29
西洋が舞台の小説をもっと深く楽しみたいなら…『よくわかる一神教 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教から世界史をみる』(佐藤賢一著)
著者・佐藤賢一さんのここがスゴイ
本書のために、長時間にわたる複数回のインタビューを行いましたが、常に詳細なメモをご用意いただき、無教養の私が発するごく基本的な質問にも、とてもわかりやすく答えてくださいました。途切れることのないどころか重なる執筆依頼で多忙を極めていらっしゃるのに(またお子さんのPTA関連、スポーツ大会や受験のサポートなどもこなされて……)、事前の下調べも滞りなく、謙虚に学んでいこうとなさる姿勢には頭が下がるばかりです(デビューから今に至るまで、その姿勢は一貫していらっしゃいます)。
仕事を忘れ、一学生に戻った気分で取材に臨みましたが、それはまさに「世界一受けたい授業」。意外なエピソードを絡めながらお話しくださり、時間の経過を忘れるほどエキサイティングで楽しく、上質の講義を独占したようなものです。佐藤さんは、大学で教鞭をとられても、人気教授でいらしたことでしょう……。
研究者であると同時に一流の小説家としての語りの巧みさも抜群ということに尽きます。
佐藤さんの作家デビュー時からの担当として、『オクシタニア』ではカタリ派関連、『小説ナポレオン』ではナポレオン関連の取材として、ヨーロッパ旅行を複数回ご一緒しました。佐藤さんは英語やフランス語の他、数か国語を理解しますが、教会のラテン語の碑文を解説してくださったり、車移動しているときの車窓からの風景を見ながら「ここの領地は…伯爵の…で、…家から嫁いだ…が」や、パリを訪れた際の、映画「TAXi」(リュック・ベッソン監督)ばりの凄まじい運転のタクシー車中では「17世紀と違っていなければ、次の角を曲がれば、…通りなはずです」と、初めて訪れた土地だというのに、正確に言い当てていました。 地図や文献で各時代の各エリアの背景が頭に入っていらっしゃるのです……!
これまた無教養な私が「あ、古い教会!」などと言おうものならば「これは…世紀に…枢機卿が…した…で」と、こんな具合でした。
本来、取材旅行は担当編集がサポートするべきものですが、佐藤さんにアテンドしていただいたようなものです。
宗教本なんて難しそうと敬遠しないで!
宗教……ハードルが高くて読みにくそうと思われたら、まずは前述の佐藤さんのプライベートに関連したエピソードからお読みいただければ入りやすいのではないでしょうか。
また、各章に散りばめた関連コラムには、ペスト、十字軍、異端、ジャンヌ・ダルク、ガリレオ、『阿呆物語』、『夜と霧』、アンネ・フランクなど、比較的馴染みのある人物やトピックスを取り上げていますのでこちらからお読みいただいてもよいかと思います。
(担当編集/今野)
西洋歴史小説第一人者による、世界一わかりやすい宗教史講義!
『よくわかる一神教 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教から世界史をみる』は、西洋歴史小説第一人者・佐藤賢一氏による世界史講義の書。
イスラエルとパレスチナの衝突。世界各地で勃発するテロ。その背景の根深い宗教問題――。同じエルサレムを聖地とするユダヤ教、キリスト教、イスラム教をめぐる約三千年を追いながら、日本人がわかりにくいと思われるポイントを整理し質問形式で世界史を読み解きます。
十字軍、異端、ジャンヌ・ダルク、ガリレオ、カフカ、アンネ・フランク他、関連コラム、図版多数掲載。
歴史の中に、鍵がある――。
書籍『よくわかる一神教 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教から世界史をみる』の詳細はこちらから。