よみタイ

「男性には、超えたらあかん性的『一線』がわかりづらい」南和行さん×三輪記子さん 男女のトラブル法律対談

超えてはいけない「一線」はどこにある?

 僕は男である上に、しかも女性には性的興味も関心も全くないので、三輪先生が今、おっしゃった女性に対する「そこは越えたらあかんでというライン」が、正直よくわからないんですよね。
三輪先生に「一線を越えた」と言われた男性たちの言い分としたら「じゃあグラビア出るなよ」みたいのがあるんだと思うんですよ。「YouTubeの再生回数をビキニ着て稼いでるくせに、『何回抜きました』ってコメントしたら削除かよ」みたいな。そこら辺の「一線」が多分男性に伝わりにくいようにも思うんですよ。

三輪 そうそう。まさしく。

 変な言い方ですけど、やっぱり一線を越えたら(感情として)嫌なんですよね?

三輪 一線を超えた発言をされたら嫌かどうかで言ったら、そんなに嫌じゃないんです。気にしないんで。ただ、自分が気にしないからといって、一線を超えていると自分が判断する言動について放置するかというと、そこがちょっとまた別問題だと思っていて。

性的にアウトな言動していませんか?(©️上田惣子/集英社)
性的にアウトな言動していませんか?(©️上田惣子/集英社)

 男だとそういう性的な目で見られることに慣れていないからそもそも無自覚なのか、僕に関しては、そういうことを言われてもさほど嫌だと思わない場合もあって。僕は、今や蛭子能収さんにそっくりなんですが、ホンマにテレビに出ているときは田中圭さんにそっくりとかも言われてまして(笑)、それで僕がゲイだと公にしていると、おそらくゲイなんだろうなという男性からひたすら性体験を語る電話が事務所にかかってきたり、僕に性的行為を期待するような法律相談予約を装う電話を受けたりすることもあるんですよ。
でも、僕は、それが性的恐怖とか怒りとかにならなくて「ああ、僕ってまだまだそういう価値があるんや、捨てたもんじゃない」くらいの自分に対する安心する気持ちもあって……良くないですよねぇ。
結局僕が男性として危険なく生きれているゆえの無防備なのかなと。

三輪 うん、ほんとそうなんですよ。一線超えた書き込みをしてくる人を許しちゃいけないなと私が思っている理由はまさしくそこで。
物理的な侵襲行為って精神的というか言語的なものの延長線上にあるって私は思っていて、書き込みとかメールとかだけじゃなくて、その延長線上に、もっと具体的な行動をする人って多分いると思うんです。だからどこからがNGかってすごく難しいですよね。
私は、夫が私のことをヤリマンと書こうと全く気にしないんですけど、それを読んだ一般の読者で全く知らない人からヤリマンって言われると「いやいや、頭おかしいんちゃうか」と思うんです。Twitterとか公の場で「あのヤリマン女」みたいなことを書かれているのを目にすると「いや、おまえとはやらへんわ」って思うし。
「ヤリマン=誰とでもやる」って思っているのもすごく勘違いだと思うんですよね。そうじゃなくて「自分で選んでやってんねん」という。女性が主体である一方で、男性に比べて女性は弱い客体という部分があるということを男の人は全く分かってないなって思うし、それを分かってもらいたいという思いがあります。

1 2 3 4

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Facebookアカウント
  • よみタイX公式アカウント

新刊紹介

三輪記子

みわ・ふさこ●弁護士
1976年10月24日生まれ。京都府出身。東京大学法学部卒。
立命館大学法科大学院修了。2009年9月、司法試験合格。2010年12月、弁護士登録。以降、京都を拠点に弁護士業に携わる。
2017年9月に東京に拠点を移し(第一東京弁護士会所属)、2021年3月に「三輪記子の法律事務所」を開設。
各種ハラスメント問題や離婚・男女トラブルなどのエキスパートとして活動。
また、報道・情報番組のコメンテーターとしても多数の番組に出演中。
趣味は「法律相談・筋トレ・読書・映画鑑賞」。好きな言葉は「意識が存在を規定するのではなく、存在が意識を規定する」。
・三輪記子の法律事務所
https://www.miwafusako.com/
・三輪記子のTwitter
https://twitter.com/bi_miwa
・三輪記子のInstagram
https://www.instagram.com/fusakodragon/

南和行

みなみ・かずゆき●1976年大阪府生まれ。京都大学農学部卒業、同大学院修士課程修了後、大阪市立大学法科大学院にて法律を学ぶ。2009年弁護士登録(大阪弁護士会、現在まで)。2011年に同性パートナーの弁護士・吉田昌史と結婚式を挙げ、13年に二人で弁護士事務所「なんもり法律事務所」を大阪・南森町に立ち上げる。一般の民事事件のほか、離婚・男女問題や無戸籍問題など家事事件を多く取り扱う。著書に『同性婚―私たち弁護士夫夫です』(祥伝社新書)、『僕たちのカラフルな毎日―弁護士夫夫の波瀾万丈奮闘記』(産業編集センター)がある。
大阪の下町で法律事務所を営む弁護士の男性カップルを追った、本人とパートナー出演のドキュメンタリー映画『愛と法』(監督:戸田ひかる)は、2017年の第30回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門で作品賞を受賞し、2018年全国上映で好評を博す。タレント弁護士として、テレビ番組へのコメンテーター出演やドラマ・映画の監修なども手掛ける。
・なんもり法律事務所
http://www.nanmori-law.jp/
・南和行のTwitter
https://twitter.com/minami_kazuyuki
・南和行のInstagram
https://www.instagram.com/minami_kazuyuki/

週間ランキング 今読まれているホットな記事

      広告を見ると続きを読むことができます。