2021.5.13
スマホの情報よりも自分で見る世界のほうが面白いことに気づいてほしい。 『その落とし物は誰かの形見かもしれない』
東京を中心に街の片隅で本当に見つけたさまざまな落とし物について、あれやこれと思いを巡らせる、おかしくも、どこかせつない妄想エッセイ集。
著者・せきしろさんの意外な素顔や制作秘話を担当編集が明かします!
せきしろさんは時間厳守の少女漫画好き
せきしろさんとの出会い私が入社1年目の冬。大好きだった『バカはサイレンで泣く』のバカサイ忘年会に参加してからなので、20年以上のおつきあいになるのですが、モヒカンのスタイルふくめ、その佇まいはまったく変わりません。もちろん、その特別な視点や面白さも。
ハードコアパンク好き、そしてこの見た目。もしかして一見、時間などは気にしないマイペースなイメージがあるかもしれませんが、本人もよくインタビューで語るように、取材など待ち合わせ時間の必ず30分前には来てくれています。もちろん締め切りもきっちりです。
そしてこちらもイメージと異なるかもしれませんが少女漫画好き。世代が近いこともありますが、ともに、いくえみ綾先生の『POPS』が好きなこともあり、よくそんな話もしています。
2年にわたる人気連載からエピソードを厳選
この本は「よみタイ」の連載「東京落物百景」(2018年10月〜2020年10月)を再編集したもの。2年にわたる連載から書籍にどの回を掲載するかというセレクトや、書き下ろしを加えた計50篇の掲載順をどうするかは、著者ともよく考えました。たとえば、春夏秋冬の章に分けて、季節ごとの並び順にしようとも考えたのですが、最終的に、どこから読んでもらっても面白いので、作為的にせず、ある程度は連載の順番を踏襲しました。
本のタイトルの発案は、せきしろさん。
最初は連載名の「東京落物百景」を仮タイトルとしていましたが、せきしろさんの地元の北海道など東京以外で見つけた落とし物もいくつかあったので。せきしろさんがいろいろ考えてくれた中にあった、『その落とし物は誰かの形見かもしれない』を見た瞬間、決まりました。
「形見」という言葉のもつ強さ。「落とし物」と「形見」はふつう結びつかないからこそ、これが本当だった時のせつなさ。そして自由律俳句的な語感のよさ、も含めて一瞬で「これしかない!」と。
装丁は多くのせきしろ作品も手がけ、私もめちゃくちゃ影響を受けた雑誌「relax」でもADをされていた、デザイナーの小野英作さん。すべてお任せしました。カバーのピンク色のゾウのジョウロも小野さんの提案です。タイトルの「形見」とは一見まったく結びつかない違和感や面白味もありますし、どうしても暗く汚くなりがちな落とし物なのですが、なんともいえないポップさもありますよね。