よみタイ

せきしろさん新刊発売記念インタビュー。「余裕と心の声のボリュームのつまみをどこかに落としてきたのかもしません」

『去年ルノアールで』『たとえる技術』などで知られる奇才・せきしろさんの最新刊『その落とし物は誰かの形見かもしれない』が4月5日に発売されました。

「よみタイ」で好評を博した連載「東京落物百景」(2018年10月〜2020年10月)を再編集した1冊。東京を中心に街の片隅で本当に見つけたさまざまな落とし物について、その落とした人や落とした理由など、あれやこれやと思いを巡らせる、おかしくも、本のタイトルのように、どこかせつない妄想エッセイ集です。

今回はそんな新刊の発売を記念して、著者のせきしろさん自身の「落とし物」にまつわるエピソードをたっぷりと語っていただきました。

(取材・撮影・構成/よみタイ編集部)

“いくえみ男子”は落とし物なんてしない

目指していたのは、まさかの“いくえみ男子”というせきしろ氏。(撮影/「よみタイ」編集部)
目指していたのは、まさかの“いくえみ男子”というせきしろ氏。(撮影/「よみタイ」編集部)

――今回「落とし物」にまつわる新刊を発表されましたが、ご自身がこれまでに落としてしまった物で何か印象に残っている物はありますか?

僕、あんまり落とさないんですよね。
でも20歳くらいの時に財布を落としたことがあります。
パチンコをしていた時だったので記憶が曖昧なんですけど、早くATMでお金をおろして台に戻らないと……とか思っているうちにいつの間にかなくしてしまったようで。
それ以来、財布を落とすのが怖いですね。絶対落とさないように財布が入っているズボンのポケットを絶えず触っています。今だとスマホを落とすのも怖い。だから5分おきくらいにスマホを入れた前ポケットも触っています。そういうことが異常に気になるんですよ。

だから、かつてウォレットチェーンが流行った時はすごく助かりました。あまりウォレットチェーンを使っている人を見なくなってからは、自分のチェーンをすっごく短くしてポケットの中に隠すようにして使っていたこともあります。でもそうすると財布が取り出しにくいんですよね。

年を取ってからは「落とす」というより「こぼす」ですね。倒してこぼしたり、手からこぼして落としたり。そこにビールの中ジョッキがあるとわかってるのに「ああぁっ!」と倒してこぼしたり。45歳くらいからですかね。注意力がなくなったのかな。

年取るとこうなるんだな、と思いました。スマートさはずっと気にしていたので、そういうことはしないように気をつけていたんですけど、ダメでしたね。

――せきしろさんにとってのカッコいい男性の理想像は?

僕、いくえみ綾さんの漫画が大好きなんですけど、特に初期のいくえみ作品に出てくるような男子が理想ですね。ぶっきらぼうで、ちょっと怖そうなんだけど、ギャップのある感じ。
あの人たち、うっかり落とし物なんてしなさそうじゃないですか? ヒロインは落としそうだけど。
ずっと、“いくえみ男子”を目指していたのに、今や、居酒屋でしょっちゅうおしぼりとか落としたりしちゃうという……(笑)。

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せきしろ

せきしろ●1970年北海道生まれ。主な著書に、映像化された『去年ルノアールで』や、映画化された『海辺の週刊大衆』、『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』(共に双葉社)など。また、又吉直樹氏との共著『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』(幻冬舎)、西加奈子氏との共著『ダイオウイカは知らないでしょう』(マガジンハウス)も。
ツイッターhttps://twitter.com/sekishiro

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