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4月30日は魔女が集う「ヴァルプルギスの夜」! 研究家が語るその真実と魔女の正体

町中に魔女が! 仮装、ダンス…にぎやかな現代の祭り

そんな魔女にゆかりの深いハルツ地方の町々では、現在も4月30日には「ヴァルプルギスの夜」の祭りが開催されています(残念ながら昨年と今年は新型コロナウイルスの影響で中止や縮小)。
私は、昨年と今年を除いて、これまで約30年間、この時期に渡独し、祭りに参加してきました。

例年この日は、町中が魔女の仮装をした人で溢れます。黒い服を着て三角帽子をかぶったり、大きな付け鼻を装着したり、ほうきを持ったり、いわゆる魔女らしいコスチュームです。
こうした近年の魔女の格好はおそらくイギリスやアメリカ由来のものだと思われます。ハローウィーンの影響かもしれません。
しばらく前までハルツで売られていた魔女人形を見ると、ホウキこそ持ってはいますが、スカーフをした普通の服を着たおばあさんでした。

ハルツ地方・ターレの魔女グッズ店で購入したキーホルダー。いずれも黒い装いではなく、頭にはスカーフが巻かれている。(筆者撮影)
ハルツ地方・ターレの魔女グッズ店で購入したキーホルダー。いずれも黒い装いではなく、頭にはスカーフが巻かれている。(筆者撮影)

祭りのプログラムは町によって様々ですが、仮装パレードや、ダンス、バンド演奏、たいまつを使ったパフォーマンスなどがあり、夜になると火を囲んで魔女(の仮装をした人)たちが歌い踊りクライマックスを迎えるのが一般的です。
祭りの会場にはドイツらしくビールやソーセージの屋台が出てにぎわいます。
現代の「ヴァルプルギスの夜」は、待ちに待った春を迎える前夜祭のようです。
それはそれで楽しく、このエネルギッシュなイベントを私は気に入っています。

ハルツ地方・ヴェアニゲローデの祭りでは子供の魔女コンテストが開催されていた。(筆者撮影)
ハルツ地方・ヴェアニゲローデの祭りでは子供の魔女コンテストが開催されていた。(筆者撮影)

なぜ4月30日なのか?

「ヴァルプルギスの夜」の起源に話を戻しますが、ヴァルプルギスの伝説が生まれる前から、ヨーロッパでは5月1日から春が始まるとされていました。そして、4月30日は冬の魔を退治する日でした。
土着の人々は自分たちの信じる神々に祈って、冬の魔を払い、春を迎える準備をしたのです。
しかし、唯一神のキリスト教がヨーロッパを支配するようになると、古代の神々は「異教の神」として排除されるようになりました。冬の魔退治も春を呼ぶことも唯一神のなせることだからです。
つまり、古代の神々は仕事を奪われ、逆に冬の魔にされてしまったのです。

「ヴァルプルギスの夜」の悪魔や魔女は、キリスト教によって作り変えられてしまった異教の神々の末路なのでしょう。

ヴァルプルギスの夜の時期になると建物にも魔女の飾りが。(ハルツ地方・シールケにて筆者撮影)
ヴァルプルギスの夜の時期になると建物にも魔女の飾りが。(ハルツ地方・シールケにて筆者撮影)
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西村佑子

にしむら・ゆうこ●魔女研究家
早稲田大学大学院修士課程修了。青山学院大学や成蹊大学、東海大学のドイツ語講師を経て、現在はNHK文化センター柏・千葉教室講師。
これまでに「グリム童話の魔女たち」展栃木県石橋町グリムの館)の企画・監修やドイツ魔女街道の同行講師、薬草専門誌に連載記事を掲載するなど、ドイツの魔女と薬草に関わってきた。2015年には「魔女の秘密展」(東映、中日新聞社企画)の監修も務めた。
『魔女学校の教科書』(静山社)、『魔女の薬草箱』、『不思議な薬草箱』『魔女街道の旅』(いずれも山と溪谷社)など、魔女関連の著書多数。

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