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手塚治虫文化賞受賞記念! 『妻が口をきいてくれません』作者・野原広子さんインタビュー

妻が⼝をきかない理由は作者もわからなかった!

――妻の美咲と夫の誠、主⼈公⼆⼈のキャラクター作りで意識したことを教えてください。誠の無神経さには⼥性のみならず男性読者からもダメ出しの声が続出しましたが……。

知⼈がきっかけになっているということもありますが、楽しく明るくそして⾯⽩く描きたいというのがありました。しかし、連載が進むうちに世の中の奥様たちが想像以上に旦那様に怒っている、というのが伝わってきまして……。妻の章は予想外にシビアな展開になってしまいました。
第1話のカレーに対する発⾔も、誠からしたら「怒っている妻」との間に流れる重い空気を和ませようと口にした冗談なんですけど、場は和むどころか読者の⽅からも怒られる⽻⽬になって……。誠はなんとなく憎めないヤツという感じのキャラクターにしたつもりですが、けっこう怒られてしまってますね(笑)
美咲は、実は⼄⼥な⼼を持つ不器⽤でかわいいキャラクターなんですが……。それに気がついていただけると嬉しいです。

多くの読者の怒りを買った、誠の「カレー発言」。
多くの読者の怒りを買った、誠の「カレー発言」。

――主⼈公の妻・美咲と野原さんご⾃⾝の共通点や美咲に共感できるところ、あるいは共感できないところはありますか。

私も⼝下⼿で喧嘩するとダンマリになる⽅なので、美咲の気持ちはわかります。⼝で押さえ込まれたら勝てないので無⾔の攻撃ですね。
美咲に共感できないところは、無視をしているのに夫にまだ気持ちがあるところでしょうか。この辺がわからないから話を書き始めたわけですが。
なぜ夫に気持ちがあるかといえば、誠がバッサリと別れるほどの夫ではないところなのかな?? と分析しましたが……。
ぜひ、素直になって仲良くしてもらいたいです。

――キーパーソンとして、夫の会社の先輩である伊東(旧姓・丸⼭)さんが登場しますが、彼⼥を描こうと思った理由、描く際に気をつけたことなどについて教えてください。

話の構成にも現れていますが、妻と夫、美咲と誠が同じ時空にいるのにまったく別の場所にいるような感じなんですよね。それを客観的に⾒る⽴場の⼈として丸⼭さんが必要でした。
ただ、丸⼭さんも⾒ているだけで理解はしていないんですけどね。私も常々思うのですが、本当に夫婦ってわからない。
仲良さそうに⾒えても全然違う場合もあるし、仲悪そうに⾒えてもそうでない夫婦もいるし、夫婦のことを分析した本の通りともいかないし。なので明確な答えは出さないように描きました。

――本作前半は、妻が⼝をきかない理由が、夫も、読者もわからないという、ミステリー要素も感じられる作りになっています。このような構成にした理由を教えてください。また、意識されたり、影響を受けた作品などはありますか。

妻が⼝をきかない理由は作者もわからなかった! というのが本当です。
⼀番初めに話を⼤筋で組み⽴てた時も、妻の⼼情の部分は空⽩。それを知るために取材を進め、描き進めるうちに妻の気持ちをつかんでいったという流れでした。
わからないものを探っていくという意味では、ユージュアル・サスペクツのようなものができたらいいなと思いました。⾜元にも及びませんが(笑)。

(※インタビューは後編に続きます)

第25回 手塚治虫文化賞・短編賞受賞!

第25回手塚治虫文化賞・短編賞受賞作!
FRIDAYデジタル婦人公論.jp文春オンラインダ・ヴィンチニュースレタスクラブニュースなど、各メディアでも反響続々。

コミックス『妻が口をきいてくれません』の詳細はこちらから
第1話はこちら

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野原広子

のはら・ひろこ●イラストレーター。作品に『離婚してもいいですか?』『離婚してもいいですか? 翔子の場合』『ママ友がこわい 子どもが同学年という小さな絶望』『娘が学校に行きません 親子で迷った198日間』『ママ、今日からパートに出ます! 15年ぶりの再就職コミックエッセイ』『消えたママ友』『赤い隣人』(以上すべてKADOKAWA)『お仕事はじめました!』(主婦と生活社)『人生最大の失敗』(オーバーラップ)『今朝もあの子の夢を見た』などがある。
2021年『妻が口をきいてくれません』『消えたママ友』2作により、第25回手塚治虫文化賞「短編賞」受賞。

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