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【沼田晶弘先生・新刊発売記念】子どもへのイラッにはどう対応? 反抗期ママの本音がわかる座談会

マインドセットができている人、いない人

Eさん:マインドセットができている親とそうでない親では、どんな風に対応が変わるものなんでしょうか?

Cさん:先日、下の子が、ソファに紫の油性ペンでぐちゃぐちゃに描いてしまったんです。お姉ちゃんがラップの芯で作ってくれた剣に色塗りをしたかったのに、うまくいかなくて、むしゃくしゃしちゃったらしくて。
10年は使っているソファだったから、私は「もういいや」と割り切れたんですけど、パパはすごく怒って……。

Bさん:パパ、かなりびっくりしたんでしょうね。

Cさん:描かれた時点で「このソファはもう終わりだ」と思ってしまったんだと思います。ただ、自由に使っていいよと子どもたちにペンを与えたのは、私たち親なんです。描かれたのは10年モノのソファだし、私は割り切れました。

Aさん:ペンを渡した時点で、家具に描かれるかもしれない、という覚悟はちょっとするよね。

Cさん:そうなの。それに、もしかしたら消せる方法があるかもしれないと、上の子と一緒に調べてみたら、除光液で消せるという情報をお姉ちゃんが見つけてくれたんです。みんなでトントンやってみたら、だいぶきれいになったんですよ。

Bさん:素晴らしい!

Cさん:マインドセットができていると、子どもを責めなくても、何か解決できる方法があるはず、と頭を切り替えることができます。今回は、私だけで考えるのはもったいないと思ったから、お姉ちゃんも一緒に巻き込んでみました。

ぬまっち:「私だけでやるのはもったいない」というのは、すでに達人の域。自然と子どもと同じ方向を向けているのが、すごいね。

Aさん:目線を子どもと同じ方向に合わせると、イライラせずに楽しむ方法が見つけられる気がします。
知り合いに、もともとマインドセットができている感じのお母さんがいるんです。
息子さんがやんちゃ坊主で、月一本ペースで傘を折って帰ってくるという強者つわもの。そこでお母さんは、ダイソーで傘を何本か買ってきてストックを作っておき、息子さんが傘を折ったら、一本お小遣いから買わせることにしたんですって。

Eさん:そもそも、なんで男の子って、あんなに傘を折っちゃうんでしょう?

ぬまっち:違うんですよ。ボク、よくわかる。折ってるわけじゃなくて、折れるんです。折っちゃいけないのはわかっているけど、もってると折れるの(笑)。

Bさん:「何をしてたら折れたの?」って聞けばいいのかな。

ぬまっち:そう。ボールがあったから、傘で打ってみたら折れた、とでも言うと思うよ。決して折ろうとしているわけじゃない。

Aさん:もう折れてるから、「なんで折ったの!」なんて怒っても仕方ないんですよね。解決するためにどうすればいいか一歩引いて考えてみたら、「販売しよう」と思いついた。子どもはお小遣いが少なくなるのはイヤだから考えるし、親はちょっぴりお金をもらうことで溜飲を下げるんです。

ぬまっち:ボクは子どものころ傘を壊しすぎて、傘禁止令が出ました。いつもカッパ。

Cさん:それも、いい解決法ですね(笑)。

子どものソファへの落書きをきっかけに、マインドセットの力を実感したCさん
子どものソファへの落書きをきっかけに、マインドセットの力を実感したCさん

「うざい」と子どもに言われたら

Bさん:別に、親のマインドが変わったからといって、子どもたちがいきなり天使になるわけじゃないんですよね。すぐに「傘を折らない子」になるわけじゃない。うちだって、今でも娘が「チッ!」てやってくることもありますよ。「うるさい」だってよく言われてる。

Eさん:そんなときは、どうするんですか?

Bさん:「わあ、すごいイライラしてるね」と受け止めるかな? そっとしときます。私のマインドはもう変わっているから、平気なんです。以前だったらきっと「今、なんて言った⁉」「その態度は何⁉」みたいな反応をしちゃったけど、マインドを変えられた今の私は「ホルモンの影響でイライラしてるのかな?」と放っておくんです。会話ができる機会は他にもあるわけだし、今じゃなくてもいいや、って。

ぬまっち:「うざいだろうな」って納得できちゃう?

Bさん:そう。言わなきゃいけないから言ったんだけど、確かに私も言われたらうざいかな、という自覚もある。それに、「うざい」と娘に言われたときって、私が調子に乗って言いすぎちゃってることも多いんです。今ダメだったね、うざかったねって、わかってしまうので。

Eさん:「あなたのために言ってるのよ」っていう押し付けがましさがないからうまくいくんでしょうか?

ぬまっち:「子どものために」という思いは共通のはず。それは、やっぱり親だから。わざわざ言うからには、相手のためを思って言ってる。でも、「このタイミングはうざかったよね」「言い方がよくなかったよね」と、自分の失敗もちゃんと振り返れるんだね。
これができない人だと、「なんでこの子はわからないんだ」となってしまうことが多い。

Bさん:親というだけで、子どもは無条件に言うことを聞くべきという考えが、捨てきれない人もいるような気がします。

Aさん:人が人を動かすって、本当は簡単なことじゃないですよね。上司が部下を動かすにはとか、人間関係をよくするにはといったテーマの本って、たくさん出てるじゃないですか。それくらい人に何かを促したり、働きかけたりするのは簡単ではないのに、自分が親というだけで、子どもを思い通りに動かせると思っていること自体が、ちょっと違うなと思います。

ぬまっち:それがわかっている人は、あの手この手以上のありとあらゆる手を使って、子どもと向き合っていく。親子のバトルだって、もちろん泥仕合は避けてほしいけど、対話しているからこそ、バトルも生まれるわけだから。バトルがすべて悪いわけじゃない。

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沼田晶弘

ぬまた・あきひろ
国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。
1975年東京都生まれ。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士を修了後、同大学職員などを経て、2006年から現職。児童の自主性、自立性を引き出す斬新でユニークな授業が数多くのテレビや新聞、雑誌などに取り上げられている。
学校図書「生活科」教科書著者。
主な著書に『「変」なクラスが世界を変える! ぬまっち先生と6年1組の挑戦』(中央公論新社)、『家でできる「自信が持てる子」の育て方』(あさ出版)、『one and only 自分史上最高になる』(東洋館出版社)、『世界標準のアクティブ・ラーニングでわかった ぬまっち流 自分で伸びる小学生の育て方』(KADOKAWA)などがある。

Twitter @88834

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