2021.3.21
センバツ開催中! 智弁学園(奈良)、大切な人の遺骨を身につけホームランを打った昨年のリードオフマン
遺骨の入ったネックレスをつけて
2020年7月中旬から、奈良県の独自大会が行われた。初戦で橿原と対戦した智弁学園の一番ショート・三田は、1点を追う1回裏に左中間スタンドにホームラン、8回にはコールド勝ちを決める犠牲フライを放った。続く3回戦でもレフトにホームランを打っている。
最後の夏、三田が身につけていたのは、颯太くんの遺骨が入ったネックレスだった。試合前、必ず、胸に手を当てる――それを『僕らの夏』の山本が見ていた。
「独自大会を取材したとき、三田くんがネックレスを触っていることに気がつきました。『いとこと一緒に戦っているんだな』ということがよくわかりました。インタビュー中に颯太くんの話になると、目がまっすぐになるんです。その姿がすごく印象的で、映像に残したいと思いました」
コロナ禍で独自大会を行うことに対して、さまざまな意見があった。活動自粛期間が明けても、「野球をしていていいのか」と思った野球部員も多い。
多くの高校野球関係者も、野球をする意味を考え直さざるを得なかった。だが、三田の答えは明確だった。
「いとこと一緒にプレーするつもりで、いとこの分まで自分が暴れてくる気持ちで、甲子園でプレーしたい。颯太の分まで頑張るよ、見守っていてねという気持ち」
2020年6月10日に開催が決定した甲子園交流試合は、三田にとって最高の舞台になるはずだった。山本は言う。
「取材を通じて、三田くんのご両親、颯太くんのご両親にもお話を聞き、甲子園はこの子たちの夢を叶える場所なんだということを表現したいと思いました。甲子園交流試合があってよかったな、三田くん、頑張れという気持ちになって。
颯太くんは発症から5年で亡くなりましたが、その病気ではなかなかないことだそうです。18歳まで生きられたのは、三田くんの存在があったから。彼が甲子園を目指して頑張ってきたからだと思います」