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センバツ開催中! 智弁学園(奈良)、大切な人の遺骨を身につけホームランを打った昨年のリードオフマン

最速153キロのストレートで三振……

 2020年8月12日。甲子園交流試合の第1試合で智弁学園は中京大中京(愛知)と対戦した。昨秋の東海大会を制し、明治神宮大会でも優勝を飾ったエースの髙橋宏斗が、智弁学園の前に立ちはだかった。世代最強投手と呼ばれる髙橋は150キロを超えるストレートが武器だ。
 
 1回、先頭バッターの三田はセカンドフライに打ち取られた。その裏、先発の西村王雅が打ち込まれて3失点。智弁学園打線は髙橋の球威に押されて、得点が奪えない。 
 4回、3四死球と乱れた髙橋から九番の西村がライト前ヒットを放って同点に。試合は両投手の好投で3対3のままで進んだ。
 迎えた9回。三田が打席に立った。これまでは、セカンドフライ、三振、レフトフライと死球。髙橋が投げたこの日の139球目が外角に決まって、三田は三振に倒れた。最後のボールは、この日最速となる153キロを記録した。
 試合は延長10回、タイブレークにもつれ込み、智弁学園はサヨナラ負けを喫した。山本が言う。

「三田くんの9回の打席で髙橋くんの153キロが出て、三田くんがこれまで頑張ったからこの瞬間に出合ったんだろうと思いました。彼がずっとバットを振り続けたからだと」

 甲子園交流試合の次の日、山本は三田が帰省していた群馬まで取材に行った。

「本人に『髙橋くんのボール、どうやった?』と聞いたら、『全然、手が出ませんでした』と言っていましたが、すっきりした顔をしていましたね。
 番組が放映されたあと、颯太くんのお父さんから『颯太と智也にとって素敵な夏を過ごすことができました』というメッセージが届きました。それを見て、番組にしてよかったなと思いました」

 三田は今後、大学に進んで野球を続けるつもりだ。山本が続ける。

「甲子園で活躍できなかったけど、それはきっと、次のステージで頑張れということ。
 颯太くんの携帯電話はそのまま残っているそうです。お父さんはパスワードがわからないから、開けない。中には、ふたりが送り合ったメールが残っているんですけど、お父さんは、『ふたりだけのものだから』と見るつもりはないそうです」

 甲子園は終わっても、ふたりの野球はまだ続く。

「颯太くんにしか言えないことを、三田くんはLINEで送っているそうです。甲子園がゴールじゃなくて、これからもふたりで戦っていくんでしょうね」

 これから、三田の前にどんな世界が広がるかはわからない。だが、いつも颯太くんが見守っているはずだ。
 甲子園での戦いを終えた三田はこう言った。

「最後、勝てなかったっていうのが悔しいところですけど、(いとこの颯太に)甲子園はすごいところだったっていうのを教えてあげたいし、次の舞台でも絶対にあきらめずに頑張るっていうのを伝えたいです。ありがとうっていう気持ちでした」 

甲子園史に残る2020年。球児たちの想いを追った『消えた甲子園 2020高校野球 僕らの夏』

『消えた甲子園 2020高校野球 僕らの夏』は、今回の智弁学園高校のほかにもたくさんの感動エピソードが満載。

【第1章】ヒロド歩美が見た 2020年の高校野球
【第2章】球児を奮い立たせた家族の力
【第3章】甲子園が消えた夏に求めた 「心の中の甲子園」
【第4章】球児を支えた仲間の絆
【第5章】白血病から復活へ
【第6章】球児を育てた地域の力
【第7章】それぞれの「最後の夏」
【第8章】甲子園交流試合 熱戦譜

以上の全8章で構成されています。

『消えた甲子園 2020高校野球 僕らの夏』の詳細はこちらから

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