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春のセンバツが帰ってきた!初戦直前、天理(奈良)の前キャプテンを支えた妹との絆

球春到来を告げる<春のセンバツ>が甲子園に帰ってきた――

3月19日、「第93回選抜高等学校野球大会」が開幕しました。
昨年の甲子園大会は、新型コロナウイルスの影響で、史上初の春夏連続中止に。
代わりにセンバツに出場予定だった32校が1試合限定で行う「2020年甲子園高校野球交流試合」が開催されました。

昨年、朝日放送テレビは「2020高校野球 僕らの夏」と題して、異例づくしの夏を過ごす球児たちを取材。
大会や試合どころか、部活動自体も自粛せざるを得ない緊急事態が続く中、
野球ひと筋に走り続けてきた球児たちは何を思い、いかにしてその苦しい日々を乗り越えたのか……?
『僕らの夏』制作スタッフが番組の取材を通して見えてきた各校のドキュメントを『消えた甲子園 2020高校野球 僕らの夏』という一冊にまとめました。


今回はその書籍の中から、春のセンバツ2日目、3月20日に初戦を迎える天理高校(奈良)のエピソードをお届けします。
昨年のキャプテンとマネジャーを務める妹さんんとの絆、です。先輩たちの想いを、このタイミングで改めて知ってほしいと思います。

※書籍から一部抜粋・再編集しています。学年や役職は2020年の取材当時のものです。
(構成/よみタイ編集部)

天理のキャプテンの守備にほれた妹

『僕らの夏』制作スタッフの山本真也は、天理(奈良)のキャプテンをつとめる下林源太に注目していた。

「天理を1年間見てきましたが、秋の奈良大会、近畿大会のインタビューを聞いて下林くんの受け答えがうまくなっているのに驚きました。『自分の芯というか、核みたいなものができあがったんやろな』と思いました」

昨年のキャプテン下林源太(左)とマネジャーをつとめる妹の真実(右)。©️朝日放送テレビ
昨年のキャプテン下林源太(左)とマネジャーをつとめる妹の真実(右)。©️朝日放送テレビ

 2019年秋の奈良大会準決勝で智弁学園にコールド負けしたものの、近畿大会で履正社や大阪桐蔭を破って優勝した天理は、2020年の春のセンバツ出場が確実視されていた。しかし、大会直前にセンバツの中止が決定したうえに、練習も満足にできない日々が続いた。

「新型コロナウイルスの関係で下林くんに会うことはできず、中村良二監督にお電話で話を聞いたんですが、監督が彼に『ちょっと練習を休むか?』と聞いたら、すぐに『高校野球をやり切って終わりたい。休まずに練習をやります』という言葉が返ってきたそうです」

 せっかくセンバツの出場権を手にしながら夢の舞台に立つことができず、夏の甲子園の中止も決まった。そんななかでキャプテンはどんな役割を果たしたのか?

「僕は、こんなときだからこそ、キャプテンの姿をどうにかして描けないかと思っていました。切り口を探しているときに三年生のマネジャーに教えてもらったのが、下林くんの妹の存在でした」

 20年春、天理に入学した妹に、山本は一度会っている。正確には、練習場に応援に来ていた中学三年生の真実まみをスタンドで見かけていたのだ。

「お母さんが一生懸命に応援している脇で、退屈そうに座っていました。僕は『妹さんは野球に興味ないんやろうな』って思っていたんです。それなのに、天理の野球部のマネジャーになったと聞いて驚きました。『何があったんだろう』と興味が湧きました」

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