2021.2.27
じいちゃんのアーミースプーンから、戦争と人の生き方について考える
何気なく使っている一本のスプーンにも、深い想いが詰まっていたりする。くどくど説明せずとも、行間から察してほしいなと思った回。
我が家には、「U.S.」の刻印が入った1本のスプーンがある。ステンレス製のアメリカ軍用食器である。
検索してみるとまったく同じ仕様のものが、米軍払い下げ品として販売されている。新品もあればヴィンテージとされているものもあるが、何十年もまったくデザインが変わっていないので、両者は見分けがつきにくい。
サープラスのヴィンテージグッズはよく偽物が出回る。ベトナム戦争で“米軍兵士が使っていた実物”として販売されているジッポーなんか、ほとんどが怪しいと聞く。
でも我が家のアーミースプーンは、正真正銘のヴィンテージ。第二次世界大戦当時に使われていたものだ。
なぜならこれは、フィリピンに出征し終戦とともに捕虜となった祖父が、二年間の抑留生活で使用していたものだからだ。
祖父はもうとっくに天国に行ったが、家でもずっとこのスプーンを使っていた。
そして数年前、妻が僕の実家の引き出しから見つけ、「これ、かっこいいね。もらっていい?」と持ち帰ってきたのだ。
何も知らなかった妻にスプーンのバックグラウンドを話したら驚いていたけど、今は普通にサラダの取り分け用にしている。
あまりにも普通に使っているのでほとんど忘れているが、8月に入ると、「あ、そうだった」と思い出すのだ。