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麻雀牌シェア日本一! 紀州の麻雀王に聞く、和歌山県御坊市が「麻雀の聖地」である理由

「麻雀が好きだから入社したい」若者からの問い合わせが急増

――昔から事業を継ぐという意識は強かったのでしょうか。

いえ、特にそういうわけではなかったですね。御坊で育って、18歳の時、大学進学を機に上京しました。当時は父親に「おい、お前、せっかく東京にいるなら営業してこい」なんて言われて、大きなカバンに麻雀牌を詰めて背負って、浅草のおもちゃ問屋に行商に行ったりもしていましたが、アルバイト感覚で手伝っているくらいの気持ちで、明確に継ぐ意思があったわけではありません。大学卒業後は、大阪に行って商社に入り、不動産とかインテリアの仕事をしていました。
商社というのはメーカーからモノを仕入れて売るのがビジネスですが、仕入れの価格交渉や納期において、メーカー側に無理を言わなくてはならない場面に出くわすこともあります。そうした仕事に、私は徐々に違和感を抱くようになっていました。子供の頃から会社(大洋化学)によく出入りしていて、油まみれの従業員の人達が一緒に遊んでくれたり、可愛がってくれていたので、その人達に対する想いが重なったのだと思います。
そんなある時、会社の営業部門で問題が起き、父から「戻ってきて営業部隊の建て直しをしてくれないか」と相談されたんです。それを受け、「なんとかしなければならない」という強い思いに駆られ、御坊に戻ることを決めました。

――会社を継承され、麻雀牌の他に、力を入れている事業はありますか。

樹脂や研磨の技術は当社の要です。それを時代に合わせてどう活かしていけるのか考え、スピーディーに決断していくのが、経営者の務めだと考えています。
最近ではビーズアクセサリーの事業が好調です。100円ショップにも卸しています。
また、廃棄されたペットボトルを原料とした給食トレーや耐熱漆器など環境問題解決の一助となる製品開発にも力を入れています。
でもやはり、当社のことは「麻雀の会社」として認識してくださっている方も多いので、麻雀製品事業は今後も当社のアイデンティティとして大切にしていきたいです。

ペットボトルをリサイクルして作られる食器「LauLau」シリーズ。絶滅危惧種動物をデザインしたものも。
ペットボトルをリサイクルして作られる食器「LauLau」シリーズ。絶滅危惧種動物をデザインしたものも。

私も驚いているのですが、実は、ここ数年、「麻雀が好きだから入社したいのですが履歴書を送ってもいいですか?」と若い人から会社に問い合わせがいくつも来るんです。つい最近も茨城出身の23歳の麻雀好きな若者が入社したばかりで。和歌山に縁もゆかりもないのに、麻雀が好きだからという理由でうちの会社に入って来るんですよ。面接では「地方で生活する覚悟はある?」と聞いています。

――ここ数年で入社希望者が増えていることの背景には何か理由があるのでしょうか。

おそらくMリーグ(競技麻雀のチーム対抗戦のナショナルプロリーグ)が始まるなど、麻雀に健康的なイメージが広がってきていて、抵抗感がなくなっているのだと思います。少し上の世代には、まだダークなイメージを持っている人も多いと思いますが、若い人の間ではスポーツゲーム感覚で麻雀を楽しむ人が増えているようです。
上の世代にも徐々に「(お金を)賭けない、(お酒を)飲まない、(タバコを)吸わない健康麻雀」が広まってきていて、脳トレの意味も込めて、若い頃にやっていた麻雀をまた始めるシルバー層が増えてきていると聞きます。当社にとっては、とても喜ばしい流れです。

――上西社長ご自身も麻雀がお好きなのでしょうか。

いや、正直、私は全然……(笑)。嫌いではないんですけど、下手なんですよ。だからあまりハマれなくて。ちなみに、父は、私以上に麻雀が下手でした(笑)

――ではご趣味は?

趣味というほどのこともないですが、お酒は好きですね。家ではあまり飲みませんが、東京出張の際には銀座のバーに飲みに行ったりします。バーテンダーと話ながら、お酒の種類とか飲み方の知識を教えてもらったり、親しくなったら禁酒法時代の貴重なお酒を出してもらえたり、そういうのが楽しみです。
特にバーボンが好きなのですが、良いバーボンは香りの変化に感動します。開けた時はじゃじゃ馬娘のような荒々しい香りだったのが、少し時間を置いて酸化すると美しい淑女のようになっていく。その変化が楽しいです。

――社長の将来の夢はありますか。

御坊を「麻雀の聖地」にしていきたいです。これまでも御坊で麻雀の全国大会が開かれるなど、イベントは行われているのですが、知名度はまだまだなので、全国麻雀大会の開催、中国との交流戦、そして世界大会へと広げていき、「麻雀といえば御坊」と言われるように、アピールしていきたいと思っています。私は商工会議所の会頭も務めていますので、麻雀を通して、御坊の魅力を発信して、麻雀ファンのみならず、たくさんの方に御坊のことを知っていただきたいです。そのためにも麻雀牌を始めとする当社の製品が、麻雀ファンの方にますます満足していただけるように、企業努力を続けていきたいと考えています。

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