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灼熱のサハラ砂漠1000km走破! 日本唯一のプロアドベンチャーランナーが384時間45分に渡る死闘で得たもの

ついにゴールを迎える

結果は384時間45分。16日45分で第6位だった。(写真提供/北田雄夫)
結果は384時間45分。16日45分で第6位だった。(写真提供/北田雄夫)

 走っている時は1000キロ先のことなんて考えていなかった。考える余裕なんてなかった、ただ必死に1日を、1時間を、1分を、1秒を前に前に進んでいたら1000キロに到達していた。そんな感じだった。

 ついにゴールを迎える。
 フィニッシュラインには、大きなフラッグと、僕を迎えてくれているアラン、大和田くん、先行してゴールしている数名の選手たちが待ってくれている。僕は準備していた日本国旗を片手に持ちながら、満面の笑みで走る。
 ゴールだ! 最後は走りながらアランの胸に飛び込む。75歳の大きな体でギュッと抱擁してくれた。

「いけた! 本当に自分の足で1000キロを走ることができたんだ!」

 大きな喜びが込み上げてきた。みんなと完走を讃え合う。同じ苦労をしてきた仲間とこの感動をわかち合えることがものすごく嬉しい。少しして大和田くんに1000キロを走破したことへの思いを聞かれた。

「人間の可能性を改めて知ることができた気がする。途方もない距離だったけど、一歩一歩と前に進み続けていけば大きなことができるんだと実感することができた。だからこそわかった。限界はまだまだ先にありそうだよ」

 そんな言葉が自然とでてきた。
 終わりがないのではと思うほど長く長く長かった道なき道。何度も何度も心が折れそうになった道。これまで6年間、必死に生きてきたアドベンチャーランナーとしての道。そのすべてが少しだけだが報われたような気がした。
 つらいとき、いつも応援してくれるみんなの顔が思い浮かんだ。励ましの言葉をかけていただいた思い出に浸っては元気をもらった。自分ひとりではなく、みんなと一緒にチャレンジすることができたからこそ、完走することができた。こうして人生をかけたチャレンジができ、本当に僕は幸せだ。

 結果は384時間45分。16日45分で第6位だった。

 ブリジッドは翌日にゴールを果たした。マレックは本当に残念だが、足を痛めて途中リタイアとなってしまった。彼と一緒の3日間がなかったら僕のゴールは無理だった。彼には感謝しかない。

 そして優勝はティエリーとドミニク。ふたり同着でのゴールだった。記録はなんと299時間! 僕より3日も早い12日11時間という驚異的なタイムだ。特に10歳以上も先輩である50歳のティエリーの走りを目の当たりにして、自分もまだまだやれると勇気をもらった。彼は2005年から砂漠や山岳などの長距離レースに挑み始め、年々成績を上げてきた。2019年にカナダで開催された寒冷地の約700キロレース「Yukon Arctic Ultra(ユーコン・アークティック・ウルトラ)」では優勝するまでに上りつめた。そして今回も優勝だ。年齢を重ねるたびに強くなっている。トレーニングとレースを積み重ねることで、準備力も判断力も忍耐力も鍛えられ、成長できることを証明してくれている。そんな彼とは2020年に僕が出場を予定しているヒマラヤ山脈850キロ「ヒマル・レース」で再び一緒に走ることもわかった。次はもっと勝負できるようになりたい。

 僕はまだ35歳。もっともっと強くなれる! これからなんだ!

 記録係の大役を務め果たしてくれた大和田くんとも、ようやくゆっくり話をすることができた。彼は彼で、慣れない砂漠で野宿をしたり、撮影や衛星通信に悪戦苦闘したり、僕を撮影するために外国人スタッフたちと交渉したり、とても苦労が多かったようだ。真っ黒に日焼けして、たくましい顔立ちになっていたのだが、何よりも驚いたのは、スタート時は会話もままならなかった英語が格段に上達していたのだ。人間の環境適応能力と可能性はすごいものだ。彼もまた大きなチャレンジを始めているのだ。

 このレースではっきりわかったことがある。

 たったひとりで始めた僕のチャレンジは、いつしか同じような冒険心を持つ多くの仲間をひとり、またひとりと引き寄せていた。レースは孤独だ。だけど、僕のレースはもう孤独じゃない。「それはアドベンチャーとは呼べない」という方もいるかもしれない。ただ、僕の、そう、凡人ランナーとしての僕が目指す前人未走のアドベンチャーの形はこれでいいんだ。この形こそが、いいんだ。そう実感できた、本当に仲間と臨めた1000キロだった。 

RESULT
「ラ・ワンサウザンド」
日時:2019年11月5日〜11月22日
場所:モーリタニア サハラ砂漠
距離:1000キロ
順位:6位(参加選手全18名)
合計タイム:384時間45分

サハラ砂漠1000kmマラソンのダイジェスト動画もチェック!

過酷すぎる挑戦と挫折、そして成長の記録!

「賞金なし!」「すべて自己責任!」「舞台は、砂漠、荒野、山岳、氷雪、ジャングル!」……そんな世界でもっとも過酷なレース「アドベンチャーマラソン」。日本唯一のプロアドベンチャーランナーとして『情熱大陸』などでも特集され、ここに人生のすべてをかける北田雄夫さんの挑戦と挫折と成長の日々をつづるノンフィクション。

2014~19年までで参加したレースの合計は、なんと、総走行距離5332㎞! 総時間1420時間! 総費用1280万円! 気温差75℃!
貧⾎持ちで小心者、暑さ寒さに弱く⻑距離⾛も苦⼿――そう自認する北田さんは、なぜ「日本人初の7大陸レース走破」を達成することができたのか。そして、なぜその後も更なる極限に挑み続けるのか……!?

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北田雄夫

きただ・たかお
1984年生まれ、大阪府堺市出身。中学から陸上を始め、近畿大学3年時に4×400メートルリレーで日本選手権3位。
就職後は一度、競技から離れるも「自分の可能性に挑戦したい!」と再び競技を始める。
2014年、30歳からアドベンチャーマラソンに参戦。
17年、日本人として初めて「世界7大陸アドベンチャーマラソン走破」を達成。
現在は「世界4大極地の最高峰レース走破」にチャレンジ中。

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