よみタイ

鎌倉は、冬もおいしい。鎌倉育ちの作家・甘糟りり子が愛する冬の名店3選

書籍『鎌倉だから、おいしい。』は、鎌倉で育ち、今なお住み続ける作家・甘糟りり子さんがこよなく愛する当地の美味たちを、春夏秋冬に分けて語るエッセイ集。
鎌倉育ちだから、鎌倉で今も暮らすからこそ知り得た、四季折々の味の魅力やおいしさがが詰まった1冊です。

今回はこちらのエッセイ集に収録された数々の名店の中から、【冬の美食】を厳選してご紹介。
阿部伸二さんによる繊細で美しいイラストや、甘糟さんによる書籍未掲載の撮り下ろし写真とともに、鎌倉の美味、その背景にある文化までたっぷりとご堪能ください。

(写真/甘糟りり子、イラスト/阿部伸二、構成・文/よみタイ編集部)

魚介類は女性料理人が自ら漁に出て調達

まずは、小町通り沿いにある「ファム デ バトー アオキ」。店名はフランス語で「青木の船」という意味。
店主の青木園子さんが、自ら漁に出て手に入れた食材で料理したメニューを提供する居酒屋です。

メニューは和洋中、そして韓、おいしければなんでもあり。

甘糟さんの一年を通しての定番は、生姜がたっぷり入った「シラスと生姜の餃子」。
冬は「海老と白子の揚げ春巻」もオススメだそう。

手書きのメニューにも味わい深い趣が。
手書きのメニューにも味わい深い趣が。

味わい深いのは料理だけでなく、メニューにもぜひご注目を。
メニューは手書き。日付の下には、魚が取れた船の名前が書かれています。

メニューの右下に見える「たつ丸」「大竹丸」の文字。これが船の名前。
メニューの右下に見える「たつ丸」「大竹丸」の文字。これが船の名前。
本書では阿部伸二さんの繊細なイラストで登場。「かず丸」が青木さんの船。
本書では阿部伸二さんの繊細なイラストで登場。「かず丸」が青木さんの船。

「女性の料理人を応援したい」という気持ちがあるという甘糟さんは、バトー アオキの魅力をこう綴ります。

肉料理だってあるし、野菜のメニューも豊富。酒はビールや日本酒から焼酎、ウイスキー、ワインと揃っている。何人かの友人たちと食事をするとして、食べたいものや飲みたい酒が合わない日でもバトーアオキなら誰かが譲歩する必要もない。
ここに来ると、女性の料理人のお店だから云々、というのは野暮かもしれないと思うのだけれど、それでもやっぱり応援し続けたい。

そして、このバトーアオキですが、最近、店内を全面改装して再スタートされているとのこと。ぐっとオシャレに、さらに素敵な空間となったようなので、ここはぜひともチェックです。

鎌倉で一番ドレッシーな空間

次にご紹介するのは、フランス料理店「ミッシェル ナカジマ」。

白を基調とした店内と、気品溢れる料理。
このレストランを甘糟さんは「鎌倉で一番ドレッシーな空間」と表現します。

ダイニングに入って正面の奥には大きなガラス窓がある。暗闇にこちら側が映っているのだけれど、時折通る車のライトで瞬間的にライトアップされる。広がる森とゆるやかな坂がちらりと映し出され、モノクロのヨーロッパ映画を思い出した。ヒッチコックとかルイ・マルとか。近隣住民の反対でライトは設置できないそうだが、暗闇も悪くない。
ランチに来た時は窓が額縁となって、緑と坂の景色が絵画のようだった。昼と夜でまったく違う表情が楽しめる。

「フォアグラと酒粕、安南芋」、「帆立貝、下仁田ネギ、紫白菜」、「甘鯛のソテー」など、旬を丸ごと閉じ込めたような料理の数々は、まさに料理人たちの「作品」と呼ぶにふさわしいもの。

気軽なイタリア料理やビストロも人気の鎌倉において、貴重な正統派のフレンチ・レストランです。

「料理人の技術、そして経験とセンスを堪能することもレストランの醍醐味だ」(本書より)
「料理人の技術、そして経験とセンスを堪能することもレストランの醍醐味だ」(本書より)
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甘糟りり子

あまかす・りりこ●作家。1964年横浜生まれ。3歳から鎌倉在住。都市に生きる男女と彼らを取り巻く文化をリアルに写した小説やコラムに定評がある。近著の『産む、産まない、産めない』(講談社)は5刷に。そのほか『産まなくても、産めなくても』(講談社)など現代の女性が直面する岐路についての本や、鎌倉暮らしや家族のことを綴ったエッセイ『鎌倉の家』(河出書房新社)など好評発売中。

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