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不登校は悪いことではなく、立ち止まる必要があった生徒への特別カリキュラム。小学校6年間の勉強を1年で習得することが可能な理由とは?

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障がいを持つ娘が生まれた時に立てた4つの方針

この「小学校6年間分を1年で学習する方法」は、多面的にできています。それは、学習内容の習得に主眼が置かれる中学生の学習と異なり、小学校6年生までの学習は、勉強に向かうまでの下準備の役割が大きいからです。植物を植えるには、土が大事であるように、種を植えるための土づくりの時間と捉えても良いです。そもそも、勉強とは、自分を幸せにするための一つのツールです。嫌いにならないことが一番大事です。ちょっとでも楽しいと思えたら、大成功です! そして、誰でも習得することができます。

「勉強は誰でも習得することができる」と言うと、生徒からは、「自分にとって勉強こそは不得意の極みだ!」という主張を受けることもあります。まるで、全日本勉強不得意選手権大会のようです。でも、生徒たちは、世界的に難しいと言われる日本語を流暢に話し、ゲームを取り扱い説明書なしで楽しみ、熱中します。断言します。絶対にゲームより勉強の方が簡単だから! でも、ここまで言い切れるのは、娘の存在が大きいのかもしれません。

大好きな娘が生まれた時、「どうしたら、ゆっくり育つ娘がより幸せに、より自由に生きられるのか」よく考えて4つの方針を立てました。

どこへでも自由に行くことができるように「歩けること」、自分の思いを伝えたり幸せな時間を共有できるように「話せること」、それでも絶対に差別は無くならないから、そういうことがあっても告発できるように「字が書けること」、この社会でより自由に生きていくために「計算すること(数の概念を獲得すること)」。これらはどれも、定型成長が見込まれる健常児ならば、日常生活で自然に獲得できるものですが、娘は積極的に獲得していく必要がありました。専門の療育機関や乳幼児能力開発教室など、教えてくれるところがあれば、県をまたいで通いました。

日常の些細なことでも、定型成長が見込まれる健常児用に用意された「普通」は、娘の歩幅にはとても広くて、常に、その間に幾つかのステップを用意し、工夫し、そして待つ必要がありました。でもそうやって環境を整えると、どんなにゆっくりでも、ちゃんと習得し成長しているということを、娘は常に見せてくれました。

時々、娘から見る世界は、まるでガリバーの逆のように、「私だって一生懸命頑張っているのに、なんでみんなすごいスピードでできるようになってしまうのだろう」と、見えているのかもしれないと思うことがあります。

一方で娘は、親の心配をよそに、楽しそうにできたことを喜び、得意になり、次の挑戦をし、成長していきました。これだけハンデがあっても、「やりたい」と思ったことは、自分で何度も練習してできるようになっていく。「できたよ! 嬉しい!」その気持ちを全身で表し、自分を誇りに思う娘の姿を、感嘆を持って見守ってきました。気づけば上記の4つの方針は小学校入学前にクリアし、娘にとってその後は、「より自由に幸せに生きるためのボーナスステージ」。英語、算数、習字、タイピング、お歌、ゲーム、自分のペースで学習に取り組んでは、楽しそうにしています。小6の今では、分数や少数の計算まで習得し、算数が好きだと言います。お店の「Bargain!」のポスターを見て、「ママ、バーガインってなに?」と質問し、「バーゲンだよ」と教えると、「そうなんだね、バーガインって書いてバーゲンって読むんだね。パパにも教えてあげようね」と、一生懸命覚えます。大好きなYouTubeの影響で、「ママ、佐渡島行きたい! どうやって行くの?」と一緒に調べたりします。

「勉強すると必ず褒めてもらえる」ことがわかると、勉強が嫌でなくなる生徒も多い

時々、「どうやって教えているのですか?」「イライラしませんか?」と聞かれるのですが、そういえば、娘にも生徒たちにも、教える時にはあまりイライラすることはありません。

意識して行っている工夫としては、ただでさえこれから他の人と比べて自己評価が低くなることが予測される勉強では、間違った時に「違うよ」ではなく「惜しい」、直せて正解できたら必ず褒めて終わるようにし、「できるかも!」と思ってもらえるようにすることくらいです。何度か説明してもわからない時には、「さっき言ったじゃん!」と言う代わりに、どこに問題があるのか、どこまで戻ればわかるのか分析し、できる限りいくつかの小さなステップに分けて教える工夫をすることに徹することにしています。そして、勉強の最後は、必ず「これができたね! すごい!」と一緒に成長を確認して終わるようにしています。「勉強すると必ず褒めてもらえる」ことがわかると、勉強が嫌でなくなる生徒も多いです。
(ちなみに「褒めるのが難しい。教えるとイライラする」というご相談も多く受けるので、今回の最後に付録的に<勉強を教えるときの、言い換えリスト>を作成してみました)

とはいえ、子どもたちの学習について、イライラせずに見守れる大きな要因は、多くの生徒が志望する一つのゴールである大学入試までのいろんなパターンの道のりを、生徒たちから教えてもらって、「いつまでに最低限何が必要か」「全部は無理でも、これだけ習得していれば大丈夫」「これは捨ててOK!」ということを知っている、ということが大きいのかも知れません。

家庭教師の一つのゴールは大学入試です。私も意外だったのですが、教え子たちのほとんどが大学入試を希望してきました。そこから逆算すると、実は高校入試が一つの鍵であることがわかります。中3の3月までに、中学までの学習範囲を習得すれば、みんなと同じように大学入試のスタートラインに立つことができます。中学校入学までに、その下準備ができていたら、これほど心強いことはありません。

すべては、自分の人生を幸せに創っていく力をつけていくために。
「小学校6年間の勉強を1年で習得する方法」について、次回からは、教科ごとに具体的な内容と手法、工夫の仕方、やりたいことの見つけ方をお伝えします。

いつからでもリカバリーは可能です。
いつも、応援しています。

写真はイメージです。(写真AC)
写真はイメージです。(写真AC)
ワンポイントまとめ
【勉強を教えるときの、言い換えリスト】
間違ってるよ → 惜しかったね
それはダメ  → こうしたらどう?
(途中で止まっている時) → 頑張ってるね。どこで詰まってる?
さっき言ったじゃん!! → なんでそう考えたかな。(考えたことを説明させる)
なんでできないの? → どこまでできた?(わかっていることまでを説明させる)
(やっていなかった時) →  仕切り直し

【やる気をアップさせる言葉や行動】
すごい/さすが/そうなんだ/OK/できてるよ/教えて!/はやい!
頑張ってるね/今これを解いているんだね(実況中継)
笑顔を向ける/スキンシップ(マッサージなど) → 子どもが、「この行動は間違っていないな、認められているな」と思えばOKです。

 この連載は毎月第1月曜配信。次回、連載第2回は2/2(月)公開予定です。お楽しみに!

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植木和実

うえき・かづみ●1976年生まれ。不登校専門オンラインプロ家庭教師イエローシードラビー代表。
東京大学大学農学部卒業後、社会人生活を経て、東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程入学。同大大学院博士課程を経て(株)ライフサイエンス社入社。
ダウン症の子どもを出産後、育児を両立する方法として家庭教師の道へ。大学時代からの通算家庭教師歴は20年以上。認定心理士の資格を取得。

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