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先代犬を亡くした時の後悔と誓いを胸に、数年後迎えた仔犬は…【サーフィン犬 コーダが教えてくれたこと 第1回】

世界大会の記録をもち、「めざましテレビ」「坂上どうぶつ王国」などメディアでも話題の人気サーフィン犬、コーダ。そのパートナーである浅野里実さんが、かつては「殺処分」とまで言われた咬みグセ犬、コーダと出会い、自らもドッグトレーナーとなり共に成長していく14年間の物語を綴ります。

犬と暮らす楽しさ。スポーツを通じて犬とわかり合う楽しさ――。
ドッグトレーナーになってからは、動物たち本来の性質に則ったQOL(生活の質)に配慮する「動物福祉」の考え方をもとに、飼い主と犬がより良い関係を築くためのサポートをする浅野さん。この、人間の都合だけによらない「動物福祉」の考え方が世界中で広まりつつある今、長く続いて来た“人と犬とのパートナーシップ”についてもまた、改めて考えてみたい。

第1回は、サーフィン犬 コーダと浅野さんとの出会いについて。

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待ちに待った仔犬がうちにやって来た!

 2011年の晩秋のこと。私は駐車場に車を停め、同行の妹とドキドキしながら犬舎施設に向かっていました。仔犬販売仲介業者に予約していた仔犬が、ついにブリーダーのもとで生まれたという連絡を受け、ひと目でも早く会いたかったのと、どんな親犬から生まれ、どんな場所で育つのかを確認したくて、私が住む千葉から栃木まで車を走らせて来たのです。その日、私が待ちに待ったイングリッシュコッカースパニエルの仔犬は、ガラス張りの建物の外側から見学できるようケージの中に入れられ、母犬から一時離されてキュンキュンと鳴いていました。その体は片手のひらの上に乗せられるくらい小さく、顔もくしゃくしゃのしわしわで、持っている生命力の精一杯の声を出しケージの中を這いまわっていました。

生まれたばかりのコーダ。手のひらに乗るくらい小さかった。
生まれたばかりのコーダ。手のひらに乗るくらい小さかった。

 親犬を見せて欲しいと頼むと、成犬になった今のコーダにそっくりな顔をした、少し痩せた8歳の雄犬を連れてきてくれました。雄犬は私たちには接触したがらないようで、こちらの顔を見ようともしませんでした。犬舎に戻りたそうにそわそわして、人になついている家庭犬とは違うと感じました。仔犬を育てるのは母犬の役割なのでどんな気質なのか是非母犬にも会っておきたかったのですが、「できない」とのことで結局会えませんでした。
 仔犬が生まれたのは2011年の10月30日。譲渡は2ヶ月後の12月25日と、月齢としては少し早いけれど、年末年始の休みに入るので年内に販売を完了したいと仲介業者に言われたため、仕方ありません。ブリーダーからの「ソリッドカラーで骨格も良いし血統も良いから、この犬ならドッグショーに出せる」という言葉に、私はこの仔犬の未来がとてつもなく輝かしくなることを想像して、期待に胸をふくらませながらお迎えまでの日を待ちました。

先代犬が教えてくれた、犬と暮らすことの楽しさ

 思えば、幼少期は家ではインコ、ウサギ、ハムスター、リスを飼い、近所のメジロやスズメ、鳩、虫やおたまじゃくしにカエルが友達でした。学生の頃もニワトリ、鴨、うずらを飼育していましたが、学生時代の終わり頃、ちょっととんがってしまったのか、「動物に興味ないテイスト」を通していた私。当時、家には茶色いダックスフントがいたのですが、母と妹とで世話をしていたため、私はご飯をあげたり、散歩に行ったりしたことはほとんどありませんでした。名前はココ。さらにその先代犬がアイリッシュセッターのコッパーという名前だったため、「コ」つながりで名付けたようです。
 そんな中、運転免許を取得した私は、何か理由をつけてドライブに行きたくて、犬を連れてドライブに行くのってなんかかっこいいかもと思い立ち、家でヒマそうにしていたココを車の助手席に乗せて、千葉の南の海へ車を走らせました。海を見て植物園を歩いて、ひと息ついてココを見ると、舌を出して目を細めて口の端が上がって、まるで笑っているようでした。尻尾も高くあげてゆったりと振っていて、「楽しいね」と言っているかのようだったのです。

先代犬、ココと。
先代犬、ココと。

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浅野里実

あさの・さとみ
ドッグトレーニングインストラクター/一級愛玩動物飼養管理士/一般社団法人ケーナインスケートボーディング協会代表理事。コーダとの出会いをきっかけに30歳でドッグトレーナーを志し、2019年より千葉県習志野にドッグスクール『Perrito』を主宰。「動物福祉」の考え方に基づき、飼い主の知識向上による動物のQOLをサポートし続けている。
パートナー犬のコーダと共に世界を舞台に活動し、2024年2月、イタリア・ミラノのTV番組内にて「世界最長の人間トンネルをスケートボードで通過する犬」でギネス世界記録を達成。同年8月、アメリカ・サンフランシスコで開催されたドッグサーフィン世界大会で銀メダル獲得。同大会のオンラインコンテストでは金メダル3枚を獲得するなど、入賞歴は累計17回を超える。

Instagram :@coda_satomimomi

Coda

コーダ
2011年10月30日生まれ。生後2か月から浅野さんと暮らす、海が大好きなイングリッシュコッカ―スパニエル(♂)。サーフィン、スケートボード、キックスケーター、スノーボードを乗りこなす。

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