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南和行「離婚さんいらっしゃい」
離婚をめぐるたくさんの悩みやさまざまな葛藤。そこには、夫婦、家族の数だけドラマがある。夫婦関係で悩んでいる人たちが、自分の人生を取り戻せるヒントが得られることを願って……大阪で弁護士として働く著者が架空でつづる離婚をめぐるセミノンフィクション。

新春離婚ショー 第2部(後半)

<前半までの話>

お正月の特別編、
「新春離婚ショー」の第2部は、
ミミ子さん、トト子さん、カジ子さんの3人の座談会。

自己紹介でもセックスレスの悩みを、
赤裸々に語るカジ子さん。

トト子さんは、それはある意味、いいことのように、
ミミ子さんは、その気持ちがわかるという感じです。

<暴力だってセックスレスだって同じ我慢(カジ子)>

(弁護士)
ということで、カジ子さんの悩み、
夫婦とセックスレスについてですが、
カジ子さん、ほかのお二人の感想を聞いて、
どうでしたか?

(カジ子)
ミミ子さんが、わかってくれて、
嬉しかったです。
私は夫のことを本当にいい人だと思うし、
照れくさいですけど「愛してる」っていう言葉を、
言いたくなる存在なんです。

(弁護士)
それはずっとおっしゃってましたね。

(カジ子)
だから私は夫といちゃいちゃしたいし、
家族で出かけるときに腕を組みたいし、
風呂上がりに後ろからバスタオルで、
頭をグシャグシャッてしてじゃれたいし、
そういうことを思うんです。

(弁護士)
はいはい。

(カジ子)
で、それは別にセックスの前戯じゃないですよ、
でも、その延長っていうわけじゃないけど、
そういうの、なんていうの、
そうだ身体の触れあい、それができるのが、
私にとって「愛している」っていう気持ちなんです。
だから、身体に触れあうっていう意味で、
セックスしたいと思うのに、
我慢なんです。私は一生。この人と結婚している限り。

(弁護士)
だから、その「我慢」が大げさっていうか、
恩着せがましいって思うのです。
私の感想として。

(カジ子)
じゃあ、トト子さんの旦那さんのような暴言も、
我慢でなんとかなるんじゃないですか?
我慢させられているのは、
暴力だってセックスレスだって、
同じ我慢じゃない。

<セックスは暴力以上に傷つけるものです(ミミ子)>

(ミミ子)
「暴力だってセックスレスだって我慢」
という言い方は、
カジ子さんがつい勢い余って、
言ったのかもしれませんが、
それは違うと思います。

(ミミ子)
私は、今の夫が、
セックスが苦手だって言ったら、
じゃあ私は夫のことが好きだから、
お風呂はたまに一緒に入ってほしいとか、
そういう別のことをお願いすると思います。

(カジ子)
お風呂……それのほうが恥ずかしい。

(ミミ子)
私は、好きな人とお風呂に入るの、
そんなに恥ずかしくなくて、
子供になったように、
お湯をかけたり、
シャンプーの泡がうまく流せてないと、
かわいらしいなって思うので、
それでもいいんです。

(カジ子)
はぁ。

(ミミ子)
カジ子さんは、
それだけ旦那さんのことが好きなんだから、
セックスレスのままでも、
うまくやっていけませんか?

(カジ子)
うまくやっていけないと思うから、
一時は離婚まで考えて、
先生に相談に来たんじゃない。

(ミミ子)
でも、カジ子さんは、
旦那さんに無理にセックスさせることばっかり、
最後は言うじゃないですか。
でも、セックスは暴力以上に相手を傷つけることもあります。

(カジ子)
そんなこと……

(ミミ子)
私は、東京の夫から、
本当にひどくされたから怖くて、
今の夫とも最初の頃は、
セックスの途中で怖くなってできなくなって、
止めてもらったこともありましたよ。
カジ子さんが、
旦那さんに無理にさせようというのは、
旦那さんを傷つけちゃいますよ。

<男の人は怖い存在だとしか今は思えない(トト子)>

(カジ子)
わかりました。
セックスレスが暴力と同じ我慢、
ということを言ったのは、
悪かったと思うのだけど、
じゃあどうすればいいのかなって。
セックスの悩みっていうだけで、
すごく軽く見られて、
なかなかちゃんと聞いてもらえないの。

(トト子)
すみません。私の意見?というか、
本当に感想でごめんなさい。

(弁護士)
どうぞどうぞ。

(トト子)
私は、カジ子さん、
そのままでいいっていうか、
こうやって外で文句を言って、
発散されて、
家に帰って仲良くなれるなら、
それでいいんじゃないかって。

(カジ子)
発散……

(トト子)
私は、あるときから、
夫のことがもうずっと怖かったんです。
外でも文句を言えなくなったし、
もちろん、家でも何も言えなかったし。
ふと家の中で夫のそばで、
夫とすれ違うだけでも、
心臓がドキッとしたり、
「怒鳴られるんじゃないかな」
「怒鳴られないようにするには」
とかしか思えなくて。

(カジ子)
そうなんだ……

(トト子)
男の人は怖い存在だとしか今は思えないから。
ごめんなさい。先生も男の人だし、
優しい男の人もいるのわかっているんですけど、
まだカジ子さんみたいに、
男の人に対して堂々とできなくて。

(カジ子)
たしかに私は男の人にも、
はっきり言いたいことは言うかも。

(トト子)
今、こうやって旦那さんの、
セックスレスの文句を言えるのって、
カジ子さんが、男の人に対して、
怖いっていう気持ちがないからだと思うから、
うらやましくて。
本当に、ごめんなさい。

(カジ子)
いや、全然謝る場面じゃないですよ。

<娘にとっては頼れる大人がもう一人増えたって感じでしたね(カジ子)>

(ミミ子)
トト子さんみたいな優しいお母さん、いいなぁ。

(トト子)
私は、優しくはないですよ。
もうただ自信がなくて。

(ミミ子)
今、トト子さんが、カジ子さんに、
「そのままでいいですよ」っていうのが、
優しいお母さんみたいで。

(トト子)
ごめんなさい。
わかったようなことを言って。

(ミミ子)
私は、小学生のときに、
お母さんが家を出て行って、
中学の途中からお父さんの彼女が、
家に来て一緒に暮らしていたけど、
その人にずっと虐められていたので、
優しいお母さんに自分がなれるか、
少し不安です。

(トト子)
大丈夫よ。ミミ子さん。

(ミミ子)
そういうところが、お母さんぽいです。

(カジ子)
なんか二人の話を聞いてると、
私は娘にとってちゃんとした母親なのか、
少し心配になってきたわ。

(弁護士)
どんなことが心配なんですか?

(カジ子)
今の夫と再婚するときに、
「この人なら娘の父親になってくれる」
というのが大きくて。
それって、でも母親の役割から、
逃げようとしていたのかもとか。

(弁護士)
実際はどうでしたか?

(カジ子)
娘にとっては、私が母親であることや、
私の役割も変わらなくて、
それに前の夫も実の父親としての役割があって、
今の夫は、娘にとっては、
頼れる大人がもう一人増えたって感じでしたね。

(弁護士)
再婚しても親としての役割は変わらずですか。

(カジ子)
娘にとっては変わらないと思うの。
でも、私がサボるようになったかなって。
娘からの小さなSOSとか、
私が面倒くさくて、
見ないフリをしても、
夫がそれを拾ってくれてる。
トト子さんの優しさから、
自分への反省が芽生えました。

(ミミ子)
私はカジ子さんの
自分に正直なところも好きです。

<無理矢理に相手を変えようとしないこと(弁護士)>

(弁護士)
ということで、「新春離婚ショー」の第2部、
カジ子さんのセックスレスの悩みは、
解消できませんでしたが、
話はそれぞれ落ち着いたみたいです。
皆さん、どうでしたか?

(トト子)
私がいろいろ言える話じゃないけれど、
もっと我慢していたら、
って今でもぶり返すように思うんですが、
それを自分に「我慢しなくていいよ」
っていう気持ちです。

(カジ子)
本当にごめんなさい。
暴力もセックスレスも同じ我慢っていうのは、
言い過ぎでした。

(トト子)
いえいえ、大丈夫ですよ。

(カジ子)
私が、ミミ子さんのお話を聞いて思ったのは、
セックスレスも夫婦の悩みの一つであって、
私はこうやって外でそれを、
文句言って発散させているから、
家に帰っても夫にぶつけなくてすんでいるのかも、
って思いました。

(弁護士)
なるほど。

(カジ子)
だって、トト子さんの夫は、
仕事のプレッシャーでそれを外で発散できないから、
トト子さんへの暴力になったって、
言ってたじゃないですか。
外のストレスを家庭に持って帰るのは、
ほんと危険だと、爆発しても
見つけにくいしと、思いました。

(ミミ子)
私は、裁判所の手続きで、
先生をすごく頼りがいがあるなぁと思ったので、
今日の司会の先生も、
頼りがいがあって良かったです。
(弁護士)
そこですか?!

(カジ子)
で、先生、私のセックスレスについて、
解決案を出してください!

(弁護士)
夫以外の人とセックスすることを、
夫があらかじめ認めることを約束してくれたら、
夫以外の人とセックスをしても、
場合によっては離婚原因にもならないし、
夫からの慰謝料請求を退けられるということは、
法律上の理屈として成り立ちますよ。

(カジ子)
そんな約束を真正面から夫と話すくらい、
むしろセックスレスのまま、
悶々とせずに解決する方法を、
夫と話し合います。

(弁護士)
ということで、夫婦円満の秘訣は、
無理矢理に相手を変えようとしないこと、
そして変わらない相手が「ダメだ」となったら、
もうそこは自分で動いて物理的に別れることから、
皆さんはじめましょう。

2019年も「離婚さんいらっしゃい」
を引き続きよろしくお願いします。

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南和行

みなみ・かずゆき●1976年大阪府生まれ。京都大学農学部、同大学院修士課程卒業後、大阪市立大学法科大学院にて法律を学ぶ。2009年弁護士登録(大阪弁護士会、現在まで)。2011年に同性パートナーの弁護士・吉田昌史と結婚式を挙げ、13年に同性愛者であることを公言する同性カップルの弁護士による弁護士事務所「なんもり法律事務所」を大阪・南森町に立ち上げる。一般の民事事件のほか、離婚・男女問題や無戸籍問題など家事事件を多く取り扱う。著書に『同性婚―私たち弁護士夫夫です』(祥伝社新書)、『僕たちのカラフルな毎日―弁護士夫夫の波瀾万丈奮闘記』(産業編集センター)がある。
大阪の下町で法律事務所を営む弁護士の男性カップルを追った、本人とパートナー出演のドキュメンタリー映画『愛と法』が話題。
・なんもり法律事務所
http://www.nanmori-law.jp/
・南和行のTwitter
https://twitter.com/minami_kazuyuki
・吉田昌史のTwitter
https://twitter.com/yossy_nan

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