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南和行「離婚さんいらっしゃい」
離婚をめぐるたくさんの悩みやさまざまな葛藤。そこには、夫婦、家族の数だけドラマがある。夫婦関係で悩んでいる人たちが、自分の人生を取り戻せるヒントが得られることを願って……大阪で弁護士として働く著者が架空でつづる離婚をめぐるセミノンフィクション。

新春離婚ショー 第1部(後半)

<前半までの話>

お正月の特別編、
「新春離婚ショー」の第1部は、
クス子さん、ユニ子さん、サイ子さんの3人の座談会。

自己紹介が終わったところでどうやら、
ユニ子さんがサイ子さんに何か言いたげです。

<ユニ子 VS サイ子>

(弁護士)
ということで、ユニ子さん、
サイ子さんに何かひとこと言いたい感じですが、

(ユニ子)
いや、でも、今、
こちらのサイ子さんがおっしゃったのって、
私への当てつけですよね。

(サイ子)
は?

(ユニ子)
今、意地で離婚しないのは、
気持ち悪いって言ったじゃない。
あれって、私が自分が離婚しないことを、
「意地です」って言ったことに対して、
ですよね。

(サイ子)
いや、それはそんなつもりは。
でも、率直に言っていいですか?

(ユニ子)
どうぞ。

(サイ子)
私は、ユニ子さんの今の、
「意地で離婚しない」のを、
別にバカにはしてないですし、
今はそういう気持ちだと思います。
でも、

(ユニ子)
でも?

(サイ子)
そのうち、ユニ子さんの旦那さんにとっては、
ユニ子さんとの結婚って、
私と同じように、
ミイラ状態の結婚に、
なっていくんじゃないでしょうか?

(弁護士)
今は、でも、旦那さんは、
娘さんの学費も払っていて、
関係は続いていますよ。

(サイ子)
でも、そのうち娘さんが大学を卒業して、
社会人になって、
親と関わりがなくなっていって、
それでもユニ子さんが、
意地で離婚しないと言い続けたら、
旦那さんにとっては、
ミイラ状態の結婚になると思うんです。

(弁護士)
旦那さんにとってなんですよね。

(サイ子)
そうです。
旦那さんは、
今の女性と一緒に暮らしていて、
そのお子さんが、
小学校にあがるとか、
いろいろまた新しい生活を重ねていくと、
「まぁ書類上だけ夫婦だけどいいや」
って、どうでもよくなるんじゃないですか?

<私の結婚にはちゃんと娘がいます!(ユニ子)>

(ユニ子)
アナタねぇ、
ほんの1年ちょっとしか同居してなくて、
そのまま22年放置していたアナタの結婚と、
20年近く、
ちゃんと同居して、
問題なかった私の結婚と、
一緒にしないでもらえる?
全然、違いますから。

(サイ子)
ええ、違いますよ。
全然違うけど、
このままユニ子さんが、
意地張っていたら、
最後は同じになりますよ。

(ユニ子)
なりません!
第一ね、
私の結婚にはちゃんと娘がいます。
娘が社会人になって独立しても、
娘は私と夫の子です。
娘の結婚式には、
私と夫が新婦の両親として、
二人で並ぶんです。

(サイ子)
アッハッハ……
だから、それがおかしいんですよ。
けっきょく子供がいる、
ってことしか、
ないってことじゃないですか。

(ユニ子)
子供がいるかいないかが、
結婚にとって大事なんじゃないの?

<カサカサしたミイラ状態の結婚なんですよ。(サイ子)>

(サイ子)
子供が大事なのって、
妊娠しているときと、
子供が大人になるまでの話ですよね。
子育てが終わって、
夫婦の間に何も特別なものがなければ、
カサカサした乾燥ミイラの結婚なんですよ。

(ユニ子)
それはアナタがそうだっただけでしょう。
私と夫は、ちゃんと恋愛結婚で、
愛情がありま……

(弁護士)
ありま……?

(ユニ子)
ありま……した。

(サイ子)
ほら。過去形ですよね。

(ユニ子)
アナタのところはでも、
お見合いでしょう。
愛情のない打算結婚で、
けっきょく思っていたのと違ったのがアナタ。
私は、恋愛結婚で、
うまくいっていたけど、
夫の浮気でダメになった。

(サイ子)
もうわかっていると思うんですけど、
けっきょく最後の二人の関係は、
そんな私の結婚と、
ユニ子さんの結婚も同じ。
カサカサしたミイラ状態の結婚なんですよ。

(ユニ子)
私は認めないわ。
私は自分の結婚を、
ミイラ状態の結婚だなんて、
認めないから離婚しないの。

(サイ子)
ますます、私の元夫のこだわりと同じ、
独りよがりのジュクジュクしたゾンビの結婚ですよね。

<今でも旦那さんのことが、好きなんじゃないかしら(クス子)>

(弁護士)
サイ子さんの言いたいことはわかるのですが、
ユニ子さんの気持ちもわかるなぁ。
クス子さんは、どうですか?
クス子さんよりも、少し年下のお二人の話を聞いて。

(クス子)
私は、他人様のことをあれこれ言うのは、
ワイドショーみたいで申し訳ないんですが。

(弁護士)
いいんですよ。
「新春離婚ショー」なんで。

(クス子)
私が思うのは、ユニ子さんは、
意地という風に口を悪くおっしゃるけど、
今でも旦那さんのことが好きなんじゃないかしら。

(ユニ子)
えっ?

(クス子)
私は、自分の夫のことを、
いい人だと思うし、
感謝の気持ちはあるけれど、
やっぱり好きというような気持ちには、
なれないんです。

(弁護士)
生理的に嫌いという感じで、
おっしゃってましたね。

(クス子)
だから私、
もし夫が別の女性とそういう関係になったと聞いたら、
ホッとすると思うんです。

(弁護士)
いわゆる不貞や不倫であっても?

(クス子)
他人様に知られたら恥ずかしいとか、
そういうのはありますが、
私は「あぁ私はもう相手をしなくて良くなった」
とホッとして、
どうぞそちらで引き受けてくれたら、
って思うんじゃないかしら。

(弁護士)
ユニ子さんはそれがないんじゃないかと?

(クス子)
そうです。ユニ子さんは、やっぱり、
旦那さんへの意地なんじゃなくて、
相手の女性への意地なんじゃないかしら。
相手の女性に対して、
「夫の気持ちは盗めても、
 妻の立場は盗めないぞ!」
っていう気持ちがあるから、
旦那さんに怒っているようで、
相手の女性が許せないのよね。

(ユニ子)
……

(クス子)
それは旦那さんへの愛情が、
まだ残っているか、
愛情に気づいたからなのかなって、
私は聞いてて思いました。

<引っ張る姿を見せることが「意地」の見せ所かも(弁護士)>

(サイ子)
ユニ子さん、私、
ズケズケ言いましたけど、
もしそうなんだったら、
恋愛感情って幻想だから、
それこそスッパリ切ったほうが、
幸せになれますよ。

(クス子)
サイ子さん、それはね、
アナタがきっと若い頃に、
うんといろんな恋愛をしてきたから、
なんじゃないのかしら。

(弁護士)
たしかに、サイ子さんは、
バブル時代の青春でしたもんね。

(サイ子)
人を遊びまくっていたように、
言わないでください。

(クス子)
私は、恋愛とか自由にするのは、
あまり恥ずかしくてできない時代だったの。
でも、なんでこんなことを、
思うかっていうと、
母の介護をしながらね、
韓流ドラマを見るようになって、
そうか人を突き動かすのも、
人を強情にさせるのも、
恋愛なんだって思って。

(弁護士)
なんと、さすがワイドショー的ですね。
ユニ子さん、どうですか?

(ユニ子)
保留です。
最後にもとのような生活になることは、
ないのかもしれないけれど、
相手の女性への勝ち負けなのか、
夫への勝ち負けなのか、
愛情なのかも私はわからないけど、
私が納得するまでは、
離婚しないつもりです。

(弁護士)
そうですか。
「離婚さんいらっしゃい」でも、
私が何度も言ってますように、
離婚届の協議離婚なら、
どんな理由でも合意すれば離婚できますが、
片方がひとたび「離婚したくない」
と言ってしまえば、
かなり長く引っ張れますから、
引っ張る姿を見せることが、
「意地」の見せ所かもしれません。

(サイ子)
うーん。そうなのかな。

(クス子)
でも、ユニ子さんは、
キャリアウーマンでお仕事もあって、
娘さんも立派に大学に行かれて、
意地を張ることを第二の人生にすることも、
いいのかもしれませんね。

(ユニ子)
そこまで言われると、
安っぽいドラマのようでバカバカしいですね。
明日にでも判子押すほうが、
楽なのかな。

(弁護士)
私としては、離婚訴訟まで
持って行かれて、弁護士としてお引き受けすると、
仕事としてオイシイのですが……

(ユニ子)
じゃ、そのときはお願いします。

(弁護士)
ということで「離婚さんいらっしゃい」
「新春離婚ショー」の第1部、
クス子さん、ユニ子さん、サイ子さんによる座談会でした。

次回は「新春離婚ショー」の第2部、
連載第3回に登場したミミ子さん、
連載第5回に登場したトト子さん、
連載第6回に登場したカジ子さん、
この3人でのお話です。

お楽しみに!

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南和行

みなみ・かずゆき●1976年大阪府生まれ。京都大学農学部、同大学院修士課程卒業後、大阪市立大学法科大学院にて法律を学ぶ。2009年弁護士登録(大阪弁護士会、現在まで)。2011年に同性パートナーの弁護士・吉田昌史と結婚式を挙げ、13年に同性愛者であることを公言する同性カップルの弁護士による弁護士事務所「なんもり法律事務所」を大阪・南森町に立ち上げる。一般の民事事件のほか、離婚・男女問題や無戸籍問題など家事事件を多く取り扱う。著書に『同性婚―私たち弁護士夫夫です』(祥伝社新書)、『僕たちのカラフルな毎日―弁護士夫夫の波瀾万丈奮闘記』(産業編集センター)がある。
大阪の下町で法律事務所を営む弁護士の男性カップルを追った、本人とパートナー出演のドキュメンタリー映画『愛と法』が話題。
・なんもり法律事務所
http://www.nanmori-law.jp/
・南和行のTwitter
https://twitter.com/minami_kazuyuki
・吉田昌史のTwitter
https://twitter.com/yossy_nan

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