よみタイ

南和行「離婚さんいらっしゃい」
離婚をめぐるたくさんの悩みやさまざまな葛藤。そこには、夫婦、家族の数だけドラマがある。夫婦関係で悩んでいる人たちが、自分の人生を取り戻せるヒントが得られることを願って……大阪で弁護士として働く著者が架空でつづる離婚をめぐるセミノンフィクション。

新春離婚ショー 第1部(前半)

<ごあいさつ>

あけましておめでとうございます。

いつも「離婚さんいらっしゃい」をご愛読、
ありがとうございます。

離婚弁護士こと弁護士の南です。

平成最後のお正月は、特別編でお届けします。

これまで全6回にわたる物語で登場した、
6人の女性を3人ずつ2組で、
座談会を行いました。

その名も「新春離婚ショー」です。

僕の所属する松竹芸能の大先輩、
宮川左近ショーを思い出す語感ですね。

おめでたい雰囲気がお正月にぴったりです。

ということでまずは新春離婚ショー、
第1部に登場してもらうのは、
この3人です!

「離婚さんいらっしゃい」の
第1回に登場したクス子さん、
第2回に登場したユニ子さん、
第4回に登場したサイ子さん。

それでは、
それぞれのエピソードを私がご紹介するので、
皆さん、ご自身の今をお話しください。

<クス子とその後>

(弁護士)
クス子さん、お久しぶりです。
60歳を超えてもなおセックスを求めてくる夫が、
どうしても生理的に苦手で、
高齢のお母様の介護をきっかけに、
別居に踏み切ってみたというお話でしたね。

(クス子)
はい。
……頬を赤らめながら……
先生は、やっぱりこういう話、
慣れてらっしゃるのでしょうね。
私、そういう言葉を、
やっぱり口に出しづらくて。

(弁護士)
あ、ごめんなさい。
たしかに僕は慣れているほうで、
言ってしまいましたが、
けっきょく今はどのようにお過ごしですか?

(クス子)
そのままです。
母がどんどん弱っているので、
介護はしんどくなっているのですが、
夫とは介護を理由にした別居のままで、
とりあえず、夜は、
寝泊まりは全部、実家になったままです。

(弁護士)
旦那さんとはお話しとかもされない感じですか?

(クス子)
いえ、そんなことはないですよ。
夫の世話というか、
妻だからというのでしょうか、
母の介護の合間には、
家に帰って片付けとか、
あと夕食を多めに作って、
夫に持っていくこともあります。

(弁護士)
いい感じじゃないですか。
そういうときはクス子さんから連絡するのですか?

(クス子)
そうですね。
夫から連絡があるほうが、
私はたぶん自分が緊張してしまったり、
やっぱりその夜のこととか、
不安になると思うので、
夫に先回りする感じで、
自分のできる範囲のことをという気持ちです。

(弁護士)
じゃあ離婚は今のところ?

(クス子)
そうですね。
私は夫と物理的に離れたかったんだなと、
それがわかったので、
離婚は、夫がしたいと言ったら、
子供たちに相談してするかもしれませんが。

(弁護士)
なるほど。
クス子さん、のちほどいろいろ聞かせてください。

<ユニ子とその後>

(弁護士)
それではそのお隣、
第2回目に登場したユニ子さん。
同じ市役所勤め同士のご夫婦で、
ところが旦那さんが職場の若い女性と不倫して、
お子さんまでできてしまって、
離婚を求められたけれど、
そのときは断固拒否でした。
その後はどうですか?

(ユニ子)
今も、離婚はしていません。
娘も大学生になったので、
親としての役割は終わったから、
あとは自分の人生だ、
という思いはありますが、
それは離婚ではないので。

(弁護士)
じゃあ旦那さんとは今も別居ですか?

(ユニ子)
そうです。
夫が転勤したことがきっかけで、
別居になりましたが、
その後も家に戻ってくる気配はないです。

(弁護士)
同じ市役所だから、
旦那さんと顔を合わせることは?

(ユニ子)
今のところは周りも気遣ってくれて、
極力、接点がない感じです。

(弁護士)
ということは、周りにもだいたい、
知られてしまったのですか?

(ユニ子)
夫が職場の女の子とそういう関係になって、
子供もできて、
その女性と子供と暮らしていることは、
狭い職場の公然の秘密のようになっています。

(弁護士)
ユニ子さんとしては、
職場のことも、離婚を拒否する
大きな理由でしたよね。

(ユニ子)
ええ。そうでした。
でも、夫がけっきょく、
大学生になった娘を扶養から外して、
相手の女性と子供を扶養に入れたら、
離婚なんかしてなくても、
あっという間に噂は広まりますよ。

(弁護士)
旦那さんは、平気だったんですかね。

(ユニ子)
相手の女性が働いていなくて、
収入もないんだったら、
夫としては生活の維持のためには、
背に腹は変えられなかったのでしょうね。

(弁護士)
大学生になった娘さんは?

(ユニ子)
私に似て、自立した子なので、
「大人だからいいじゃん」
って言ってます。
娘の大学の学費も、
夫が全部、出してくれているので。

(弁護士)
でも離婚はやっぱり……

(ユニ子)
しません。
正直に言います。
私の最後の意地として、
離婚はしたくないですね。

<サイ子とその後>

(弁護士)
お待たせしました。
3人目、サイ子さんです。
サイ子さんは、
ちょうどバブルの頃に結婚して、
夫の実家で親と同居。
実家を出て夫婦で暮らすことに、
消極的だった夫が嫌で、
家を出て22年間の別居。
そして離婚調停を経て離婚、
ということでしたね。

(サイ子)
はい。
そういうことで、
私は、別居していた22年間、
元夫とは会っていませんでしたし、
50代の今まで、
ずっとシングルだったような感覚です。

(弁護士)
なのに、離婚は、
調停離婚になってしまいましたよね。

(サイ子)
ほんと。ビックリしました。
私は、離婚届を郵便で送ったとき、
住所とか変わっていなくて、
受け取りさえすれば、
サインして送り返してくれると思ったのですが、
まさかサインなしの離婚届が、
送り返されてくるとは、と。

(弁護士)
離婚届の郵便のやりとりのとき、
会って話そうとか、
電話で話そうとか、
それは思わなかったのですか?

(サイ子)
いやー、むしろ、
わざわざサインせずに送り返してきたことに、
怨念めいたものを感じて、
これはちゃんとした形のほうがいいかもと、
裁判所に離婚調停を申し立てたほうが、
いいのではと思いましたね。

(弁護士)
離婚調停はどうでしたか?

(サイ子)
調停は1回だけで離婚が成立したのですが、
元夫が「自分の両親に謝罪しろ」と言ったと、
調停委員の人から聞いて、
「うわぁ」と思いましたね。

(弁護士)
「うわぁ」というのは?

(サイ子)
気持ち悪いというか、
やっぱり怨念があったんだみたいな。
私にとっては「終わったもの」であり、
もう乾燥したミイラ状態の結婚だったのに、
元夫の中ではミイラではなく、
ジュクジュクしたゾンビ状態だったのかなと、
それが「うわぁ」ですね。

(弁護士)
なるほど。

(サイ子)
私に対する怨念はいいんですが、
離婚って、ほんと紙の手続きだけなのに、
意地で引き延ばそうとしたのが、
「あぁこの人の子供産まなくてよかった」
という気持ちでした。

<いよいよ座談会が始まります>

(ユニ子)
それってさぁ、
ちょっと、サイ子さん。

(弁護士)
あー、ユニ子さん、
もうなにか言いたい感じですね。

いちおうここからの座談は、
フリートークですが、
順番に振りますんでよろしくお願いします。

ここから三人それぞれ、
自分の体験を踏まえての、
ほかの二人への話をしてもらいます。

ということで、
「離婚さんいらっしゃい」
夢の座談会「新春離婚ショー」
第1部の後半はまた明日。

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

南和行

みなみ・かずゆき●1976年大阪府生まれ。京都大学農学部、同大学院修士課程卒業後、大阪市立大学法科大学院にて法律を学ぶ。2009年弁護士登録(大阪弁護士会、現在まで)。2011年に同性パートナーの弁護士・吉田昌史と結婚式を挙げ、13年に同性愛者であることを公言する同性カップルの弁護士による弁護士事務所「なんもり法律事務所」を大阪・南森町に立ち上げる。一般の民事事件のほか、離婚・男女問題や無戸籍問題など家事事件を多く取り扱う。著書に『同性婚―私たち弁護士夫夫です』(祥伝社新書)、『僕たちのカラフルな毎日―弁護士夫夫の波瀾万丈奮闘記』(産業編集センター)がある。
大阪の下町で法律事務所を営む弁護士の男性カップルを追った、本人とパートナー出演のドキュメンタリー映画『愛と法』が話題。
・なんもり法律事務所
http://www.nanmori-law.jp/
・南和行のTwitter
https://twitter.com/minami_kazuyuki
・吉田昌史のTwitter
https://twitter.com/yossy_nan

週間ランキング 今読まれているホットな記事