2019.4.10
「狂犬病予防注射」を人ではなく、犬に接種するのはなぜ? 日本に潜伏する狂犬病流行の危険性。
副作用は18頭。接種したくない気持ちもわかるが…
犬に狂犬病予防注射を接種していない飼い主はいるのではなぜでしょうか?畜犬登録をしている犬の飼い主には、毎年保健所から狂犬病予防注射の案内が届きます。畜犬登録を知らなかったり面倒で手続きをしていなかったりすると、案内が届かず、接種しないまま時が経っているのかもしれませんね。
また、予防注射によるアナフィラキシーや副作用のリスクを心配して接種を控える飼い主もいます。でも2017年度に報告された副作用の犬は接種した約452万頭中18頭。リスクを考えると、特に高齢や病気の犬には控えたい飼い主の気持ちもわかります。
筆者の愛犬も11歳の時に接種して体調を崩してしまったことがあり、その後は動物病院に相談して接種を控え、代わりに「狂犬病予防注射猶予証明書」というものを発行してもらいました。
ただし、この猶予証明書は法律に則ったものではありません。接種で体調を崩すことが明らかな犬に対して、動物愛護や福祉の観点から猶予する証明書。免除を認めている自治体もあるので、違法とまでは言えないグレーゾーンかもしれません。
実は予防注射不要?3年に1回という考えもある
ですが、2017年に発表された東京大学の研究チームの論文によると、現在の検疫システムであれば日本に狂犬病が侵入するリスクは4万9444年に1回だとか!法律で義務付けられている狂犬病予防注射が必要ないと言うのです。
また「接種は2〜3年に1回でいいのでは」という考え方もあります。狂犬病ウイルスへの抗体が維持できていれば毎年接種する必要はない、というわけですね。世界小動物獣医師会による「犬と猫のワクチネーションガイドライン」では「ワクチンは不必要に接種すべきではない」としています。有効期間が長い種類のワクチンであれば、3年未満の追加接種を控えたほうがいいのです。逆に有効期間が短いワクチンもあるため、接種の期間を飼い主の判断で延ばすのは、ペットを危険にさらすことになるのでやめましょう。
法律を守ることが人やペットも守ることになる
いろいろな考え方がありますが、もし現在狂犬病が発生した場合、どうなるのでしょうか?法律ではその地域の犬をつなぐ命令が出され、一斉に検診や予防注射が行われることになっています。どのような形で行われるかは頭数や地域によって変わりますが、犬にとってストレスになることは間違いありません。さらに社会への脅威になり、多くの人が不安を感じるでしょう。
これから研究や検討が進み、狂犬病予防法が改正される可能性があります。でも今できることは、毎年1回の狂犬病予防注射の接種。法律を守ることが人、ペット、野生動物を守ることにつながるのです。