2026.2.26
コンサルに寄生された小さな町の珍事業。「地方創生」という看板の裏で蠢く脱法ビジネスを暴く
「寄付金還流スキーム」の手口とは?
その手口は、極めて巧妙だ。この章のなかで記すかぎかっこ内のコメントは、すべて本書で明らかにされている島田の言葉である。
ターゲットは、「無視されるちっちゃい自治体」。狙いをつけると、観光地域プロデューサー、地域力創造アドバイザーという肩書きを使い、地方創生の専門家としてコンサル契約を結ぶ。これが「仕込み」の期間。
例えば国見町の場合、その後の流れは次のようになる。官民連携という耳触りのいい錦の御旗を掲げ、ワンテーブルに出資している企業などと組んでコンソーシアムを結成。その事務局を担うのが、ワンテーブルだ。
島田は町長など決定権を握る人物に接近し、コンソーシアムとして先に挙げたような事業を企画する。この事業は議会を通す必要があるが、「(地方議員は)雑魚だから」問題なし。
その後、その事業を実際に運用する受託先として手を挙げるのも、ワンテーブル。形式としては公募案件ながら、「無視されるちっちゃい自治体」だから、ほかに立候補する企業はいない。仮にいたとしても、金額と提案内容が評価される公募型プロポーザルでの募集に誘導し、裏から手を回して行政側の条件自体を操作しているから、ワンテーブルが選に漏れる可能性は限りなく低い。
こうしてコンソーシアム事務局、地方創生事業の受託先として自治体から収入を得ながら、仲間内の企業がメリットを得られる寄付金還流スキームを発動する。これは入札が求められる公共事業だが、仲間が指名を受けられるよう募集の仕様書にも口を出して自治体をコントロールする。
グレーながら違法でもなく、島田自身が「超絶いいマネーロンダリング」と言い表すその詳細については、ぜひ本書を手にとってほしい。驚くべきは、ワンテーブルの主導で、国見町のような珍事業が宮城県の亘理町でもほとんど同じ形で進行していたことだ。さらに、ワンテーブルは北海道のむかわ町、厚真町、仁木町、余市町でも事業の内容こそ違えと身内に利益誘導する同様の手口を使っている。
これらはすべて、横山記者による怒涛の取材によって明らかになった事実。河北新報による報道の影響は大きく、国会質問にまで発展し、国見町が揺れる。最終的に国は企業版ふるさと納税の制度運用の見直しを迫られた。
記事が続きます
福岡でも発覚した類似スキーム
ひとつ気になるのは、この手法を島田自身が編み出したのか、指南役がいるのか。というのも、本書の後半、福岡県吉富町でも企業版ふるさと納税を使う非常によく似た寄付金還流スキームが発覚したと記されているのだ。
東北をベースにする河北新報の横山記者は取材に出向くわけにもいかず、週刊東洋経済の記者に取材を託している。地方創生コンサル界隈で寄付金還流スキームが蔓延しているのでは? と思わざるを得ない展開だ。
――ハリガネムシは、水中で交尾をして産卵する。川のなかで孵化した幼生は、カゲロウやユスリカなどの水生昆虫に食べられてしまう。しかし、それは織り込み済み。幼生は腹のなかで栄養を取り込んで成長した後、自ら殻を作って休眠状態に入る。
成虫になったカゲロウやユスリカは羽を持ち、飛び立つ。その多くは、カマキリやコオロギなど陸上の昆虫に捕食される。その時、ハリガネムシは目を覚まし、腹のなかで最大1メートルにまで成長する。その後、宿主の脳を操って入水させ、肛門から外に出る。自分たちが水中で交尾、産卵するために――。
本書の帯には、「コンサル栄えて国滅ぶ」と書かれている。本書に登場する専門家が国見町のような事例は「氷山の一角」と評しているように、今も地方の小さな自治体に寄生して税金を吸い尽くすハリガネムシのようなコンサルがのさばっているとしたら、それを明るみに引っ張り出すのもメディアの仕事だ。
前回の連載で紹介した『ブラック郵便局』の著者で西日本新聞の宮崎拓朗記者や、本書の著者である横山記者のような地方紙のジャーナリストのさらなる奮闘を期待したい。
次回は東北、そして新聞記者つながりで、『アニータの夫』(柏書房)を紹介する。
次回は3/26(木)公開予定です。
記事が続きます
![[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント](https://yomitai.jp/wp-content/themes/yomitai/common/images/content-social-title.png?v2)
















