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次々と暴かれる郵便局の闇! 地方紙の記者がウルトラブラックな実態に迫る

国内外のさまざまな人、モノ、場所を取材してきたライターの川内イオ氏。
氏の趣味でもあるノンフィクション乱読から、読む者を異世界へといざなってくれる本をセレクトして紹介する書評連載です。
第2回は、宮崎拓朗著『ブラック郵便局』を取り上げます。

郵便局という「異世界」

「懲罰自転車」。読者の皆さんは、この言葉をご存知だろうか? 僕は、2025年10月に報じられたニュースで初めて知った。簡単に説明すると、郵便物をバイクで配達中、軽微なものを含めてなにかしらの物損事故を起こした郵便局員に、「再発防止の研修の一環」として徒歩や自転車で配達するよう上司から指示が出されていたという話だ。

 驚いたのは、「総重量約30キロもある郵便物を載せて往復35キロ」(AERA 2025年11月17日号)、「毎日の走行距離が約50キロ」(西日本新聞/2025年12月9日電子版)、など、想像を絶する「研修」だということ。

 しかも、上司の一存で期間が決まるため、対象の郵便局員はいつ終わるとも知れない重労働に耐えなければいけない。AERAが取材した人は自殺未遂を起こし、西日本新聞が取り上げた人は日本郵便を訴えている。全国の郵便局で横行しているというこの陰湿な研修が、内部で「懲罰自転車」と呼ばれているそうだ。

 この報道を見て、僕が思い浮かべたのが『ブラック郵便局』(新潮社)。西日本新聞の北九州本社デスクを務める宮崎拓朗が著したこの書籍には、町の郵便局の知られざるブラックな勤務事情が記されている……いや、単にブラックと表現するレベルではない。ウルトラブラックと言っていいだろう。郵便局の内部は、「普通に生活をしていたら存在を知ることもなかった異世界」だった。

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詐欺まがいの保険営業

 著者の宮崎が郵便局の闇を暴く取材を始めたのは、西日本新聞の情報提供窓口「あなたの特命取材班」に届いたメールがきっかけだった。郵便局の窓口担当を務める「Aさん」から送信されたそのメールには、窓口担当にも課される生命保険営業の過酷なノルマと、ノルマ達成のために郵便局の利用者を騙している局員の存在について触れられていた。

「騙す」という表現が気になった宮崎は、Aさんとやり取りを重ねる。その流れで、郵便局員の強引な営業や不正行為、それを促すパワハラそのものの現場指導の様子が次々と明らかになっていく。それを宮崎が記事にすることで、全国の郵便局員から助けを求めるような訴えが届き始めた。同時に、被害に遭った人たちから情報を寄せられる。

 本書には、信じられないような事例も紹介されている。例えば、軽度認知症の高齢女性がわずか1年の間に月額保険料が最大20万円を超える契約を結んでいたケース。この女性は月々の年金が13万円しかないため、預金残高が底をついた。すると、すでに契約した保険を担保にかんぽ生命から75万円の貸し付けが行われ、それも保険料の支払いに充てられていた。これらはすべて、近所の郵便局の主導で行われた契約である。

 本書には、ほかにも郵便局員たちによる詐欺まがいの営業手口が記されている。悪辣な行為に手を染められない郵便局員は、心身に不調をきたし、休職、退職も続出。プレッシャーに弱い僕にとって、想像するだけで胸が苦しくなる職場だ。しかし、郵便局の保険営業はウルトラブラックの一端に過ぎない——。

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新刊紹介

川内イオ

かわうち・いお
ライター/稀人ハンター
1979年生まれ。ジャンルを問わず「世界を明るく照らす稀な人」を取材し、多彩な生き方や働き方を世に広く伝えることで「誰もが個性きらめく稀人になれる社会」の実現を目指す。
趣味は読書で、ノンフィクションが大好物。
『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦』『農業フロンティア 越境するネクストファーマーズ』(文春新書)『ウルトラニッチ 小さな発見から始まるモノづくりのヒント』 (freee出版)など著書7冊。2023年3月より「稀人ハンタースクール」を開校し、国内外のスクール生とともに稀人の発掘を加速させる。

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