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小池克臣「No Meat,No Life.を生きる男の肉だらけの日々 肉バカ日誌」
年間200食もの牛肉を食べるという、名実ともに肉バカ、小池克臣が日々蓄えてきた肉への愛、知識、体験……そのすべてを注ぎ込む究極の肉コラムがここに。肉好きはもちろん、そうでなくても知っておくべき肉のあれこれが満載!

肉バカの誰もが認める牛肉の聖地、それは京都である

前回は和牛にも魚や野菜のように旬というものが存在し、それが12月であること、そしてその旬の真っ只中に東京で食べるべき三田牛の名店を紹介した。

今回は新幹線に乗り込み、肉料理の聖地にご案内したい。

肉料理の聖地を訪ねて

肉好きの誰もが認める肉料理の聖地とは何処なのか!?

それこそが京都である。

肉と言えば、関東が豚肉文化なのに対して、関西は牛肉文化が根付いている。
その中でも京都は古くから牛肉が親しまれ、それが京都の食文化の中で研ぎ澄まされ進化を続けている。
そんな京都だからこそ、一年で最も牛肉が美味しくなる12月に、日本の肉料理の頂点を知るための旅に出ようではないか!

集合は東京駅。
若干の余裕も持ちたいので、遅くても午前9時には集まりたい。早速切符を買うが、購入するのは指定席。
お財布にゆとりがあればグリーン車でもいいが、よぶんなお金があるのであれば、それは肉代に使いたい。ただし、自由席は避けた方がいいだろう。間違いなく座れるはずだが、世の中何があるか分からない。もし座れないなどというアクシデントが起こってしまったら、京都に着く頃にはフラフラになってしまう。

旬の最高の和牛を食べる時に、身体に余計なストレスがかかっているなど、絶対にあってはならない。

京都について、まずランチに向かうのは桂にある「くいしんぼー山中」。

肉バカの肉人生で最も衝撃的な出来事は、くいしんぼー山中との出会いと言っても過言ではない。

見るからに牛肉が好きそうな店主・山中さんが冷蔵庫から取り出したロースのブロックを見ると、それが世間一般で食べられるものと明らかに違うことに気付く。
肉の断面は空気に触れることで鮮やかな色合いに変化するのだが、切りたての断面はそれを考慮したとしても、今まで見たこともないような深い小豆色をしているのだ。

今まで何度も「良い牛肉は小豆色」という言葉を聞いてきたが、こんな小豆色は見たことがない。
山中さんが牛肉にとって大切だという「照り」と「粘り」というものもよくわかる。これは兵庫県の中でも美方地方を中心とした純但馬の血統、雌、平均38ヵ月ほどの月齢、飼料、水や気候といった環境、そして手間暇を惜しまない生産者のこだわりの結晶で、これこそ滋賀県のマルキ牧場の近江牛の特徴である。

マルキ牧場の近江牛は、一般的な牛肉の流通であるセリには一切出ない。

セリに出さないからこそ、見た目重視のためにサシを不自然に入れるための、ビタミンを欠乏させられることもない。生産者であるマルキ牧場の福永さんは山中さんのために、儲けよりも昔ながらの牛肉本来の味にこだわり続け、山中さんはどんな時でも生産者を買い支え続けてきた。

2人が一緒に歩んできた道のりから生まれる信頼関係が、この究極の牛肉を生み出しているのだ。

究極の和牛が繰り広げる美味の世界

肉へのこだわりを語りながら手際よくこの類稀な肉を捌いていく山中さんの顔は、これ以上ないであろう肉好きの顔。

そしてこの特選近江牛は決してサシの蕩けるような食感ではなく、黒毛和牛だからこその繊細な赤身の食感と、どこまでも広がり続ける深い味わいが感じられる。
また「肉は新鮮なほど良い」という山中さん持論により、どれもフレッシュ。

屠畜後すぐに自ら取りに行くという牛肉は、最も鮮度が良い状態で食べられるのが屠畜2日後であり、この新鮮な牛肉は今まで体験したことのないピュアな甘みを放つ。

最初に食べて欲しいのは、くいしんぼー山中の凄みがいきなりわかるコンソメスープ。
一般的な温製と冷製があるが、個人的には冷製の方が好きだ。牛肉の旨みをそのまま水に移したかのような衝撃的なインパクト。一切の不純物を感じないピュアな旨みがとにかく忘れられなくなるだろう。

塩胡椒で味付けされるステーキはロースもヒレも秀逸だが、ロースの方がよりこの特選近江牛が持つポテンシャルの凄さがわかるかもしれない。

巷で見かけるような脂の存在感が強過ぎるロースではなく、前面に出てくるのは赤身の濃厚な旨み。適度な弾力を持った肉片を噛み締めるごとに至福の味わいが口の中を走り回る。

ステーキの後に必ず食べて欲しいのがビフカツ。

その中でも繊細な食感が、衣とベストマリアージュのヒレカツが特にオススメ。じっくりと作られたデミソースとの一体感も素晴らしい。

最後は、肉バカが日本一だと考えるハンバーグも外せない。
とにかく、くいしんぼー山中で非日常の牛肉をとことん味わってみて欲しい。

間違いなく今までの牛肉観が変わるだろう。

11月はお寺をはじめとした観光地などがライトアップがされ、紅葉の季節ということもあり、京都の街は人で溢れているが、12月はそれもある程度落ち着いてくる。

だからといって、ランチ後はディナーまで観光もいいが、胃袋の消化活動に全力を注ぐためにも、動き回らずお茶でも飲みながら、じっと目を閉じているのも選択肢の1つに入れておいて欲しい。

次回はいよいよ京都でのディナーにおける、最高峰の肉料理を教えたい。

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小池克臣

こいけ・かつおみ●1976年、神奈川県横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、さらには和牛そのものの生産過程、加工、熟成まで踏み込んだ研究を続ける肉の求道者。著書に『No Meat,No Life.を実践する男が語る和牛の至福 肉バカ。』がある。
公式ブログ「No Meat, No Life.」→ http://d.hatena.ne.jp/BMS12/

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