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これが本当の“東京砂漠”⁉ 東京の島のなかにある、黒い砂が広がる「裏砂漠」【山の名&珍プレイス 第5回 前編】

年月で変わっていく “砂漠”の広がり

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 裏砂漠を作り出している砂や小石は、三原山が噴火することで蓄積していった火山噴出物だ。三原山は100~200年に一度は大噴火を起こし、そのたびに地形や植生が変わっている。だから現在の「裏砂漠」は、地球の歴史から考えれば、ごく最近の三原山にたまたま存在する場所といえなくもない。

裏砂漠を形成する主な小石は「スコリア」。噴火の際に玄武岩質のマグマが発泡して多孔質となったものだ。流紋岩質や安山岩質のマグマに由来する軽石と似ているが、一般的に軽石は水に浮くのに対し、スコリアは水に沈む
裏砂漠を形成する主な小石は「スコリア」。噴火の際に玄武岩質のマグマが発泡して多孔質となったものだ。流紋岩質や安山岩質のマグマに由来する軽石と似ているが、一般的に軽石は水に浮くのに対し、スコリアは水に沈む

 裏砂漠と同様に地形図へ記載されている「奥山砂漠」は裏砂漠のさらに北東にあり、現在は草木で覆われていて“砂漠感”はあまりない。この一帯は1986年の噴火による溶岩で焼けただれた場所だが、当時の、草木もない荒涼とした雰囲気はたしかに“砂漠”だったのだろう。だが、時間ともに緑が生い茂り、いまや砂漠の面影は地名に残る程度になっているようだ。

テキサスコース登山口へ向かう道。この先の右側が「奥山砂漠」だ
テキサスコース登山口へ向かう道。この先の右側が「奥山砂漠」だ

 また、地形図には記載されていないものの、三原山の中央火口丘の西側の溶岩原も「表砂漠」と呼ばれている。表砂漠は1950年の噴火までは細かな小石や砂で覆われていて砂漠らしかったようだが、現在はこちらにも草が生えてきて、やはり砂漠っぽくはない。そう考えると、三原山で今も砂漠らしさが残っているのは、裏砂漠だけなのである。

冬の三原山。「表砂漠」はこの写真の右側のほうを指す
冬の三原山。「表砂漠」はこの写真の右側のほうを指す

島内にまだある! 裏砂漠以外の“砂漠”

 ところで、辞書的な意味での「砂漠」は、降水量が非常に少なく、岩石や砂が主体で植物がほとんど生えていない場所のことを指している。より学術的にいえば、年間降雨量が250ml以下などという定義もあるようだ。その定義に当てはめれば、伊豆大島の裏砂漠は雨が多く、辞書的にも学術的にも適合していない。

第二展望台からの下り。このあたりも裏砂漠の一角といってよい
第二展望台からの下り。このあたりも裏砂漠の一角といってよい

 だが、それらの定義に合わなくても、人間の目で見て「ここは砂漠っぽいな」と思えば、“砂漠”といってもよいのではないだろうかと僕は考える。とくに自国に本当の意味での砂漠を持たない日本では、憧れを含め、荒涼としたユニークな地形に“砂漠”という愛称をつけたくなる気持ちはよくわかる。

 そのうえで、さらに考える。裏砂漠が、辞書的・学術的な意味での砂漠という定義にマッチしないのであれば、国土地理院の地形図に記載されているからといって「ここが日本で唯一の砂漠」というのも、どこか無理がある。なにしろ「地形図に記載されていない砂漠」であれば、じつは他にも日本には存在しているのだ。

登山道を歩いているだけで噴煙が上がる様子が確認できる
登山道を歩いているだけで噴煙が上がる様子が確認できる
伊豆大島の名物であるツバキ。3-4月が見ごろだ
伊豆大島の名物であるツバキ。3-4月が見ごろだ

 しかし、どこに?
 では、伊豆大島から船に乗って、もっと南に向かってみよう。

(4月12日(日)9:00公開の後編に続く)

赤い線が主要登山道だが、三原山の周囲にはほかにもルートや踏み跡が延びている。霧にまかれると非常に道迷いしやすいので、ご注意を(地図の参照元:YAMAP <a href="https://yamap.com/mountains/461/" rel="noopener" target="_blank">YAMAPの当該箇所はこちら</a>)
赤い線が主要登山道だが、三原山の周囲にはほかにもルートや踏み跡が延びている。霧にまかれると非常に道迷いしやすいので、ご注意を(地図の参照元:YAMAP YAMAPの当該箇所はこちら

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次回、連載第5回<後編>は4/12(日)9:00公開予定です

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高橋庄太郎

たかはし・しょうたろう
山岳/アウトドアライター。1970年宮城県仙台市生まれ。高校の山岳部で山歩きを始め、出版社勤務後の2年間の無職時代には国内外のアウトドア旅へ。その後フリーランスのライターとなり、ウェブメディアや雑誌を中心に執筆活動を続けている。近年はイベントやテレビへの出演も多く、アウトドアギアのプロデュースも手掛けている。著書に『テント泊登山の基本テクニック』(山と渓谷社)、『トレッキング実践学』(ADDIX)、共著に『“無人地帯”の遊び方』(グラフィック社)など多数。

Instagram: @shotarotakahashi
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