2025.12.1
あえて”怪奇現象”を体験したい人はぜひ⁉ 日本百名山へも登りに行ける「空木平避難小屋」【山の名&珍プレイス 第1回前編】
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「鈴の音が……」「骸骨が……」「亡霊が…」
しかし、いったいどんな怪奇現象がこれまでに空木平避難小屋であったのか? 「ガラス窓越しに小屋の外からヘッドランプで照らされ、誰かが来たと思って扉を開くと、そこには誰もいなかった」「風もないのに小屋が大きく揺れ動き、金属的なラップ音が繰り返し響いた」などという話を僕は聞いたことがあり、ウェブ上にもさまざまな逸話が散見される。なにしろ、空木平避難小屋という言葉を検索すると、関連ワードとして「幽霊」「遺体」という言葉が出てくるほどだ。
また、中央アルプスの伝説的な存在で、遭難救助でも活躍された木下寿男さんの本『山の軍曹 カールを駆ける』(2002年 山と渓谷社)には、木下さんが体験した実話がいくつも掲載されている。それらを簡潔にまとめて紹介すると……
「荒天時に小屋に泊まっていたところ、風雨の音が突然止まり、代わりにチリーンという鈴の音と足音が聞こえ始めた。そのビシッという足音は屋根の上を通っていき、そのまま真上で止まった」
「夜にウサギを獲ろうと小屋の外に出ると、駆けていったウサギの前にぼんやりと人の形をした亡霊が立っていた。ウサギがぶつかると、その人影は消えた」
「閉めたはずの入口の扉がなぜか開き、もう一度閉めようと近付いたところ、闇のなかに人間の頭蓋骨がボーッと浮かび上がっていた」
ほかにも、遭難死したと思われる男にのしかかられたり、心臓付近を強く押されたりして、深夜に目を覚ますこともあったらしい。
標高2500m前後の空木平に位置する空木平避難小屋は、標高2864mの空木岳の山頂から麓に向かって下りていく途中にある。「平」というだけあって周辺の地形が緩やかなのは、ここはカールの内側だから。太古には氷河で覆われていたはずの場所なのだ。


また、背の高い木が育つことが可能な“森林限界”を超えている山頂付近にはわずかにハイマツ程度しか生えていないのに対し、標高が400m弱も下がった空木平は周囲が樹林帯になり、ハイマツ以外の高木も繁茂している。じつは“周囲が樹林帯”ということが、空木平避難小屋の怪奇現象を生み出す間接的な一因になっていると思われる。というのも、木というものは薪として使えるからだ。それはどういうことなのか?
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