2022.10.9
四十二歳にして迎えたDV親父への反抗期
ドラマ化もされた『死にたい夜にかぎって』で鮮烈デビュー。『クラスメイトの女子、全員好きでした』をふくむ3か月連続エッセイ刊行など、作家としての夢をかなえた著者が、いま思うのは「いい感じのおじさん」になりたいということ。これまでまったくその分野には興味がなかったのに、ひょんなことから健康と美容に目覚め……。
前回は、「いいおじさん化計画」のダイエット中で出会った、新たな恋人「ルイボスティー」と濃厚なエピソードでした。
今回は、洗顔のち化粧水のパターンからの脱却。フェイスパックに手を出してみたら……。
(イラスト/山田参助)
第6回 復讐のフェイスパック
「お前はほんまにブサイクやなあ。そんな顔じゃ女の子にモテへんぞ。まあ、顔がダメなら、せめて強い心を持った男の中の男になるしかないわな」
小学四年生のときに親父から言われた言葉が、洗顔ネットで顔を洗うときも、化粧水を肌に馴染ませるときも、私の頭の中を何度もリフレインしている。
〝心を鍛える〟という大義名分を得た親父は、己の息子に度を越したスパルタ教育を課した。
昼となく夜となく襲い来る罵声と暴力。
悪魔の棲む家には帰りたくないと、寂れた公園や人気のない墓地に逃げ込んでは、日が暮れるまで時間を潰す毎日。そこまで仲が良くないクラスメイトの家に無理やり遊びに行くなんて迷惑なこともよくやっていた。
どうやら親父の教育は、今の言葉に置き換えて〝DV〟と呼んで何の遜色もないものだったみたいだ。てっきり、よその家でも同じようなことが行われているんだとばかり思っていたら、大人になってから、自分の家だけが異常だったと気付くのはよくある話だ。
母親がいない私にとって、唯一の頼りだった親父。あいつの言葉を妄信することで心に染みついてしまった「自分は醜い人間なんだ」という思い込み、いや、呪いといってもいい。
四十二歳からスタートした私の〝のほほん美容生活〟は、その呪いとの戦いとも言えるだろう。
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