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KERAこそ日本初の“バズり男”。80年代ナゴムブームは「買エ! 買ワナイカライケナイゾ!」の一言から始まった!

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バズりからブレイクへ。きっかけはいつどこに転がっているかわからない

 確かに、動画サイトにアップされている『インディーズの襲来』を見返してみると(違法アップロードっぽいので推奨はできないが)、NHKの記者に「あなたがナゴムの社長なの?」と突然聞かれたKERAは、「そうです」と最初の一言だけ、普通に返事をしている。
 ところが二言目から急に謎の外国人キャラが噴出し、「モウスグツブレマス」「買ウ人ガイレバ売レマス」「ナゴムデス。ツブレマス」と、まくし立てる。
 その様子は、今見ても強烈なインパクトだ。

「なんか長くしゃべらなきゃいけないのかなって思って。あれが出てきちゃったんです(笑)。で、NHKとしてもきっと期待していなかったのに、なんだか面白いコメントが撮れたから音楽も紹介してやろうと思ったんじゃないですか。後づけで『ベジタブル』の演奏シーンを撮って流してくれました。あれはもう、ものすごい宣伝効果でしたね」

 それまでは雑誌に手作り広告を出し、レコードの通販を細々とやっていたが、1日1〜2枚売れれば万々歳だった。ところが番組放映以降は、1日1000枚ものオーダーが届く状況になったという。

「本当にすごかったですね、何千万円分かの広告効果はあったんじゃないですか。あの番組は、どこかのバンドやレコード会社が仕掛けたようなものではなく、純粋にNHK側から動いた企画だったようです。そこにどういうわけか、うまく乗っかれたんですよね」

 きっかけというものは、いつどこに落ちているかわからないものだ。KERAは神がかりのタイミングでそのきっかけをつかみ、一気にメジャーへの階段を駆けあがる。
 その年の12月には、「宝島」を発行するJICC出版局が立ち上げたインディーズレーベル、キャプテンレコードからシングル『心の旅』(チューリップの曲のカバーバージョン)をリリース。インディーズのレコードとしては初めてオリコンチャートにランクインするほどの好セールスとなり、有頂天は名実ともにブレイク状態になった。

 そしてKERAは、有頂天が絶好調状態になると見るや、音楽とともに昔から入れ込んでいた演劇活動をスタートさせる。それが現在、日本演劇界の旗手と呼ばれるケラリーノ・サンドロヴィッチにつながっていくのだが……。

大槻ケンヂ、石野卓球、ピエール瀧……「ナゴムレコード」に関わる豪華ゲストが登壇した還暦ライブの集合写真。(撮影/江隈麗志)
大槻ケンヂ、石野卓球、ピエール瀧……「ナゴムレコード」に関わる豪華ゲストが登壇した還暦ライブの集合写真。(撮影/江隈麗志)

以下、第2回へ続く。5月25日配信予定です。お楽しみに!

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【プロフィール】
ケラリーノ・サンドロヴィッチ/1963年1月3日生まれ。東京都出身。
ナイロン100℃主宰。劇作家・演出家・音楽家・映画監督など多方面で活躍。
1982年、ニューウェイヴバンド「有頂天」を結成。インディーズ・レーベル「ナゴムレコード」を立ち上げ、70を超えるレコード・CDをプロデュースする。
1985年に「劇団健康」を旗揚げ、演劇活動を開始。1992年解散、1993年に「ナイロン100℃」を始動。1999年『フローズン・ビーチ』で第43回岸田國士戯曲賞を受賞。

音楽活動ではソロ活動のほか、2013年に鈴木慶一とのユニット「No Lie-Sense」を結成、ナゴムレコード設立30周年を機に鈴木氏と共同で新生ナゴムレコードをスタート。2014年に再結成されたバンド「有頂天」や、「KERA & Broken Flowers」、「No Lie-Sense」などでボーカルを務める。2018年(平成30年)秋に紫綬褒章を受章。

公式ツイッター:@kerasand
有頂天オフィシャルHP

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新刊紹介

佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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